「おー!白石ちゃんも神谷も浴衣可愛いじゃん!」
「えっ…そ、そう?」
「うん!」
奥に座っていたらしい柏木くんも私達の存在に気が付き、こちらへやってきた。
浴衣を褒められた愛梨ちゃんは嬉しそうに柏木くんと話している。
二人がいい感じの雰囲気になっていることに安心すると同時に、山宮くんの存在を思い出した。
もう一度山宮くんの方を見ると、さっきと同じ顔のまま固まっている。
流石に先ほどの私の勢いに引いてしまったのだろうかと不安になっていると、山宮くんに突然目を逸らされた。
「えっ?」
「いや…ごめん何でもない」
「な、何それ。気になるじゃん」
「ほんと、何もない。…行こうか」
目を逸らされたことに若干のショックを受けながらも、私達は屋台のある方へ向かうことにした。
「奏葉可愛いね。それ借りたんでしょ?」
「うん。愛梨ちゃんに色々手伝ってもらって」
「浴衣って着るの大変だよね。私達もお互い手伝いながらだったよ~」
二人は最寄り駅が同じで家も近いらしく、一緒に準備をしてきたらしい。
蘭ちゃんは三つ編み、凪咲ちゃんは耳横に髪飾りがついていて、二人ともよく似合っていた。
「うわ焼きそばだ!神谷、買いに行こうぜ」
「はぁ?そんながっつり食べるの?…あ、ごめん花火までには戻る!」
「はいよー」
焼きそばに引き付けられてしまったらしい柏木くんは愛梨ちゃんを連れて屋台の方へ行ってしまった。
花火までには戻るって…別行動ってことかな?
二人には上手くいってほしいし、蘭ちゃん達もこうなることを予想していたような返事だったので、知っていたのかもしれない。
「じゃあ、私達花火まで屋台フラフラしてるわ!」
「えっ?」
「二人とも仲良しだし一緒に楽しみな!」
「いや凪咲ちゃん…⁈」
「花火の時になったら連絡するから集まれたら集まろう~」
しまった。完全に策略に乗ってしまった。
よく考えれば分かることだ。きっと愛梨ちゃんが私達を二人きりにするよう頼んだのだろう。
二人はあっさり別行動を始めてしまい、残されたのはもちろん私と山宮くんの二人。
山宮くんがどう思っているのか全く読めなくて怖い。
面倒くさいと思っているだろうか。好きで私と回ることになったわけではないのだからそう思っていてもおかしくない。
そんなことばかり考えてしまって頭をあげられなかった。