今こんなに緊張してしまっていたら、会ったらどうなってしまうのだろう。上手く話せる自信がない。
緊張と同時に不安になってきた私を察したのか、愛梨ちゃんに勢いよく後ろから背中を叩かれた。

「った!」

「大丈夫だよ!私もいるし」

「…うん」

「さ!行くよ~」

今日行く花火大会は、高校の最寄り駅で行われる。
なのでうちの生徒がたくさん集まる花火大会なのだが、私は去年まで一度も行ったことがなかった。
家で勉強をしなから、見ようともしなかった。
きっと見ても虚しくなるだけだったからだと思う。
狭い家に籠って、外の世界から逃げて、一人で花火の音だけ聞いていた二年生の夏を思い出す。
そんなことを思い出しながら、電車の隣の席に座る愛梨ちゃんを見つめる。
今は、一緒に花火を見てくれる友達がいる。一年前の自分に伝えたら、何というだろうか。
今年の夏は私の中での大きな変化を日常の中でたくさん感じる。

「見て!あそこだよ、もうすごい人」

「わあ…!」

電車の窓から見えたのは、たくさんの人と大掛かりな屋台達。
新鮮な景色に心が躍るのが分かる。
いつの間にか電車の中も人でいっぱいになっており、いつも学校に行くときに使う最寄り駅のホームは人で溢れていた。

「これ合流できるかなぁ。もう四人ともいるっぽいんだけど」

「…あ」

あまりの人の多さにみんなを見つけられずにいた時、キラキラと光る金髪が目に入った。
私服姿を見るのは初めてだけど、間違いない。あれはきっと山宮くんだ。

「あ、ちょっと奏葉⁈」

「愛梨ちゃん、こっち!」

私は愛梨ちゃんの手を引いて歩き出した。人が多くて歩きずらい。
けれど私はその綺麗な金髪姿を目印に歩き続けた。
少し歩くとやっと少し人が捌けて、山宮くんの顔もはっきり見えるようになってきた。

「山宮くん!」

思わず名前を口にすると、綺麗な髪の毛と共に目が合う。
目が合った瞬間甘酸っぱい気持ちに襲われて、すぐに目を逸らしてしまった。

「あー!やっと見つけた二人とも!」

「蘭ちゃん、凪咲ちゃん、よかった…」

「もう!奏葉いきなり引っ張っていくからびっくりしたじゃん!まぁ会えて良かったけど!」

「ご、ごめんね」

山宮くんを見つけた瞬間、自然と体が動いてしまったことに気が付いて途端に恥ずかしくなった。
まるで会うのが待ち遠しかったと大っぴらに言っているようなものだ。