愛梨ちゃんに駅まで着いたという連絡をすると改札前にいるとメッセージがきた。
そのメッセージを見て、人混みの中から愛梨ちゃんを探して改札まで早歩きで向かう。
改札前まで歩くと、一際目立つスタイルの女の子が駅の柱に体を預けながら立っていた。
「愛梨ちゃん!」
彼女の名前を呼ぶと、途端に明るい笑顔に変わってこちらに走ってくる。
「久しぶりー!会いたかった!」
「私も…!今日はありがとう」
「いやこっちのセリフだよ。さ、さ。早く準備しちゃお!十六時半にはみんなと向こうで合流したいし」
連れて行ってもらった愛梨ちゃんの家は本当に駅から近くの場所にあった。
初めてお邪魔させてもらった愛梨ちゃんの部屋は予想通り女の子の理想の部屋と言った感じで、甘い香りがした。
両親もお姉さんも不在だというので、もってきた手土産は愛梨ちゃんに預け、すぐに準備に取り掛かった。
愛梨ちゃんはまず私の顔にメイクを始めてくれた。
今日のメイクは浴衣に合うようにピンクベースだよ~と楽しそうに言う愛梨ちゃんが可愛い。
鏡でメイクをされていく過程をみていると、まるで魔法がかけられていっているみたいだ。
いつもの自分とは全く違う自分に変われるのがすごく嬉しくて、ずっとその過程を見ていた。
そんな風景を見ていたら、体育祭の時も愛梨ちゃんに手伝ってもらったことを思い出し、勉強だけじゃなくメイクの練習もしなくてはいけないなと思った。
メイクの流れで髪の毛のアレンジもやってもらうことになってしまい、ここまでやってくれると申し訳なくなってきてしまったが、愛梨ちゃんの固い意思もありありがたく手伝ってもらうことにした。
私は二つ、愛梨ちゃんは後ろに一つのお団子にしてもらって、浴衣も着たらちょうどいい時間に。
「愛梨ちゃん、可愛い…!」
「何言ってんの奏葉もめちゃくちゃ可愛いよ?やっぱり似合ってる!」
愛梨ちゃんは白、私は薄いピンクの浴衣に袖を通した。
透明感のある柔らかい肌に真っ白な浴衣がよく似合う愛梨ちゃんは、正直ずっと見ていられそうだった。
「これは山宮も固まるね」
「山宮くん関係ないよっ」
「またまた照れちゃって~」
鏡に写る自分は、まるで別人。
こんな姿で山宮くんと久しぶりに会うのかと思うと、忘れていた緊張が戻ってきてしまった。