「山宮達は?進学するの?」

「俺は…どこでもいいから大学行くかな。親もそうしてほしいっぽいし」

「山宮受験できんのー?」

「おい神谷それどういう意味だよ」

山宮くん…大学行くんだ。
けど大学生になったらこうして毎日山宮くんを後ろから見つめることもできなくなっちゃうのだと思うと、少し寂しい。
半年後の自分を想像して、少し怖くなった。
山宮くんにも、愛梨ちゃん達にも会えなくなって、私は何をしているんだろう。
ずっと親の通りに生きてきた私に何が残るんだろう。
好きで勉強をしていたならまだしも、親に言われて半強制的にやった勉強なんて残す意味があるのだろうか。

「そもそも高校生の時点で将来の選択迫られるのしんどいって」

「ね~、やりたいことなんてないもん~」

「俺あるよ!」

「え、何。まさかサッカー選手になるとか言うんじゃないよね」

「はぁ⁈それの何がだめなんだよ」

「いやだめじゃないけどさ。柏木のお母さんは反対してるんでしょ?」

「まぁ…でも絶対実現して説得するし」

柏木くんは今のままサッカーを極めて将来はサッカー選手になりたいと、普段からよく話している。
けれど親御さんはなれるわけないと反対しているらしく進学を望んでおり、最近はよく揉めてしまうという。

「そりゃ、難しいって俺にも分かってるよ。でもサッカー好きなんだよ。できるギリギリまでは続けたいんだよ。けどなぁ」

「まぁ裕也の満足いくまで続けたらいいんじゃない?なれない可能性の方が高いと思うからその時のために進学なり何なり考えた方がいいと思うけど」

「一言多いだろ…」

世間から見たら柏木くんの言うことは馬鹿にされることもあるのかもしれないけれど、私はすごく尊敬する。
好きなものがあって、それを夢にしたいとずっと思えるのは簡単なことじゃないと思うから。
実際私は、勉強以外何もない。その勉強もずば抜けているわけでも、そもそも自分の意志でやっているものでもない。
そんな人間が良いとされて、柏木くんのような人が悪いとされるのは、納得できない。

「私は…すごいと思う。応援してる」

「…白石ちゃん、まじで?」

「え、っ?」

「いや…白石ちゃん、めっちゃ頭いいし俺みたいなやつのこと嫌いそうっていうか」

「そんなことない。好きなものがあって、夢があるってすごいよ。私はないもん」