『本日は明日の体育祭の予行練習となりますので、各自参加種目の集合場所に――』

朝のHRを終え、私は愛梨ちゃん達と一緒に校庭に出た。
暑く降り注ぐ日差しに、少しわくわくしている自分に驚く。
そもそも行事の時に誰かと一緒に行動することが初めてだった私は、新鮮な気持ちに包まれていた。

「奏葉ー!玉入れこっちだって!」

少し遠くにいる愛梨ちゃんに呼ばれ、慌てて走る。
蘭ちゃんと凪咲ちゃんは障害物競走、山宮くんと柏木くんは団対抗リレーに参加するとさっき聞いた。
とは言っても学校の校庭にも限界があるので、一部と二部に分かれて予行練習を実施する。
私達の参加する玉入れは一部で、障害物競走と団対抗リレーは二部となっている。
なので一部は二部の人達に、二部は一部の人たちに見られながら競技をするのだ。
運動の苦手な私にとってすごく嫌だったのだが、今年は愛梨ちゃんがいてかなり心強い。
二部に出る四人もすぐそこで応援してくれているらしい。

「神谷!白石ちゃん!ファイトー!」

「玉入れそんなに応援されてもさぁ」

「玉入れも立派な競技だろ!」

「奏葉、そんな緊張しなくていいんだからね。てかこれ、予行練習だし」

「うん。ありがとう蘭ちゃん」

競技が行われる直前、やはり少し緊張してしまっていた私に蘭ちゃんが声をかけてくれた。
他の二人に比べてあまり口数が多そうではない蘭ちゃんだが、朝から物凄く私のことを気にかけてくれている。
反対に凪咲ちゃんはずっと笑顔の絶えない子で、見ていてとても癒される子だなと思った。
そんな正反対な二人と愛梨ちゃんが友達なのは最初は少し不思議だったけれど、話していくうちに何となく分かったような気がする。
蘭ちゃんに声をかけられたことで緊張がほぐれて、練習も問題なく終えることができた。






「まじで悔しすぎるんだけど!」

「いいだろ練習なんだから」

「いーや、俺は練習でも一位取りたい派なんだよ」

「何だそれ」

最後の団対抗リレーの予行練習が終わり二人が帰って来たけれど、惜しくも結果は二位だったそうで柏木くんは悔しがっていた。
うちの学校は赤白青黄の四団に分かれていて、私達は青団。
しかし今年は赤団がかなりリレーに強いらしく、最後に抜かされてしまった。
明日に向けて怒涛の作戦を一人で呟いている柏木くんをよそに、山宮くんは持参した水を口にしている。
普段私や他の女の子と話すときはかなり柔らかい喋り方をする山宮くんだけど、男友達の柏木くんと話す時には少し口調が雑になるのがとても好きだ。
その山宮くんが好きでいつも教室の後ろから見つめていたのに、それが今目の前で行われている。
そんな些細なことなのに、いつもよりも少しだけ近くにいれることが嬉しかった。