「だから愛梨が話しかけにいった時、私達よっしゃ!って思ったんだよね」
「え、そうなの?初めて聞いたけど」
「けど奏葉ちゃん私達のこと苦手なのかもって思ってたからあんまり愛梨みたいにぐいぐい行くのもどうかなって迷ってたんだ。ごめんね」
「いや、そんな…こちらこそ、上手く話せなくてごめんなさい」
「だから今話せて嬉しい。さ、髪型どうしよっか?私らが思いっきり可愛くしてあげる!」
蘭ちゃんはそう言って私の髪の毛をふわりと触る。
話す前までの緊張は、もうどこかへ飛んでいっていた。
「お…おまかせ、で」
「よし、了解!」
数日前の自分からしたら全くあり得ない状況で、無意識に頬が緩む。
夢のようだけど、これは夢じゃない。
いつも蚊帳の外にいた私を、愛梨ちゃんがこちらの世界に飛び込ませてくれたんだ。
「完成!どう?私達の腕は」
「えっ…可愛い、あ、髪が、めちゃくちゃ可愛い…!」
愛梨ちゃん達に髪の毛やら顔やらをいじられること30分と少し。
鏡に映された私は先ほどの見た目とは驚くほど変わっていた。
顔色の悪かった頬もメイクを施してもらい、ナチュラルなピンクのチークが頬の上で発色している。
いつも愛梨ちゃんがつけているようなキラキラなアイシャドウも少し乗せてもらい、髪の毛はコテで巻き下ろしに。
普段あまり外見に手を施さない私はその変化に驚きと喜びが隠せなかった。
「何言ってんの!顔も当たり前に可愛いし!」
「やっぱり奏葉ちゃんは少しナチュラルめな方が似合うね!めちゃくちゃ可愛いよ」
「へへ…」
三人から口々に誉め言葉を頂いてしまい、照れくささで変なリアクションで誤魔化してしまった。
私のメイクや髪型が完成して、先ほどまで空っぽだった教室もクラスメイトで溢れている。
辺りを見渡すと、同じくみんなわくわくした様子で友達と会話を繰り広げていた。
「あれ?白石ちゃん?」
「みてみて二人とも。奏葉のこと三人で大変身させたの!どう、可愛いでしょ」
その時愛梨ちゃんが突然私を九十度回転させ、先ほど登校してきた山宮くんとその友達に向かって私を差し出す。
まさか山宮くんがいつとは思わなかった私は、目があった勢いで固まってしまった。
目が合ったまま、山宮くんの視線も動かない。