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朝7時半でも太陽が強く照っている。
六月の半ばで本来ならば梅雨と言われる時期なのだろうけれど、今年は地球全体の異常気象で梅雨がかなり短いらしい。
そのせいか六月に入ってからも数回しか雨が降っていないように感じる。
だから今日も嫌になるくらい晴天。
体育祭の事前準備日となる今日は授業は行わず、一日外での予行練習となる。
やはり行事が得意ではない私は前日まで雨が降ることを願っていたが、神様はそう簡単に動いてくれない。
けれど今年は、今までよりほんの少しだけ楽しみな気持ちがある。
「奏葉ー!みてみて、予行練習だけどヘアアレンジしちゃった!」
教室に入るともう既に学校に来ていた愛梨ちゃんが私のもとへ飛んできた。
そう言った愛梨ちゃんの髪はポニーテールにされており、跳ねるたびふわふわと後ろの髪が動いて可愛い。
「うん。すっごく可愛い」
「へへ。朝早くからみんなでやったんだ~」
愛梨ちゃんの席の周りには数人の友達と、机にはコスメが雑多に置いてある。
愛梨ちゃんの友達であろう一人の女の子と目が合ってしまい、迷った挙句軽く会釈をした。
「ねぇ、奏葉もやってあげようか」
「えっ?いや…」
「絶対可愛くする。あ…あの子達にも手伝ってもらってもいい?」
あの子達、というのはきっと愛梨ちゃんの席の周りにいる子達のことだろう。
少し悩んだけれどこれ以上だんまりなままでもいられないと思い、お願いすることにした。
「えっと、この子が…」
「蘭。奏葉、だっけ。よろしくね」
「私、凪咲!ずっと奏葉ちゃんと話してみたかったの!ね!」
「いや…まぁ、うん」
「蘭ちゃん、凪咲ちゃん…よろしくね」
左側のミディアムで茶髪なのが、蘭ちゃん。そして右側の黒髪ボブの子が凪咲ちゃん、と頭の中で繰り返した。
二人とも、何だか想像していたよりも柔らかい雰囲気だ。
「この二人とは一年の頃から仲いいんだ。結局この三人でいることも多いし」
「だから愛梨が奏葉に話しかけた時びっくりしたよ。だって奏葉ってほら、なんかみんな話そうとするけど勇気でなくて話せなかったじゃん、このクラスになった時」
「えっ…そうなの」
「そうそう!奏葉ちゃん学校の中でも頭いいって有名だし、なのにいつも一人でいたからみんな気になってたんだよね」
二人から聞く話は私が初めて耳にすることばかりだった。
自分が周りからどう思われているのか気にしてばかりだった人生だけど。何も分かっていなかったみたいだ。
自分のことをそんな風に気にしてくれていたクラスメイトもいたなんて全く知らなかった。