――――地球で言えば、2/14。情人節だ。
情人節とは、地球で言うバレンタインデーではるが、この日は私の誕生日でもある。
皇后の誕生日と言うことで、宴会が開かれたり、新作スイーツを試食させてもらったりと楽しい日々でもあるのだが。――――そんな折。
「飛……?何してるのかしら」
物陰に、飛の姿を見付けたのだ。そして何か……しゃべってる……?
「スイ、誕生日おめでとう『ありがとう、飛!』」
あぁーっ!!これは、ひとりお人形さん……いや、ぬいごっこ!
私ぬい相手にデモンストレーション!?
「今日はスイに取って置きの贈り物があるのだ」
あら、何かしら。これ……聞いちゃっても構わないかしらね?何かサプライズをしようとしてくれているのでは。
「『何かしら~』」
飛の裏声かわいいわね。
「えと……その……目を閉じて『こう?』……」
そして飛は、私ぬいに顔を近付けた。うん……?
「ちゅっ」
「へぁっ!?」
思わず声を出してしまった。飛ったら、私ぬいに口付け……ってか、サプライズってそれ!?そんなロマンチックなこと計画してたの!?
しかし間抜けな声を出してしまったお陰で、飛に気付かれてしまった。
「見……みみみ、見……っ」
「ごめん……見てしまったわ」
今さら嘘などつけまい。あのかわいい飛の裏声ぬいデモンストレーションの前では。なんか、嘘で汚してはならない何かを感じるのよね。
「……そ……そんな……さ、さぷらいず……」
うぅ……しゅーんとしたところがまるでわんこ!しょんぼりわんこみたいだし!!
「その……目を閉じてみよっかな~~」
あからさまに目を閉じてみるアピールに移行する私。だが、素通りされたらどうしようかしら。それはそれでショックである。
「……」
でも、何となく分かるのよね。飛がとたとたと私に近付いて来たことが。まだ……かしらね……?少し薄目で覗いてみれば、目と鼻の先に飛の顔が……あぁぁっ!
そして……。
ちゅ……っ。
唇に落ちてきた、柔らかい感触。
ゆっくりと瞼を開けばら飛の顔が離れていく。
「さぷらいずだ」
「……う、嬉しいわ……!」
いや、知っちゃったのだけど……でも。飛がそう告げるところがやっぱりかわいいのだ。
それに、ぬいには頬だったのに……本番は口とか。
「スイ、私ぬいを……」
「え……えぇ」
もちろん私もポシェットに入れて連れてきている。
飛ぬいを受け取った飛は、私ぬいに……。
ちゅ……っ。
――――と、ぬい同士キスをさせていた。ちょ……っ、何そのかわいいやりとり!しかも……ぬい同士は唇……。
「スイぬいの唇は……私ぬいのものなのだ」
私ぬいを私に見立ててデモンストレーションしても、そこはしっかりと守る……と言うことか。
「スイぬいもきっと、喜んでるわ」
「うむ……!」
満足げな飛。
そして誕生日プレゼントを無事にもらったので……夜は私から、情人節の巧克力を贈ろうかしら。
――――サプライズでね。