さぁ、妖魔帝国にも実りの秋が来た!秋と言えば食欲もさることながら、忘れちゃならないのが……ぬいの、秋コスよ!!

そして今私の目の前では……!

「うふふ。マオピーぬいの秋の装い、とっても素敵。私ぬいの秋の装いとお揃いなのよ?」
胡艶が自作のふわもこマオピーぬい秋帽子とマントバージョンを抱き締めながらふんわりと微笑めば……。
胡艶作、胡艶の狐耳おしっぽぬいを嬉しそうに抱いているマオピー。
胡艶ぬいは肌寒くなってくるこの時期にぴったり!ファー付き旗袍を身に纏っている。そしてお帽子はマオピーぬいとお揃いである!

2人も2人のぬいもまとめてかっわい~い!
私は私でこの秋コスを飛雲に……衣装を持ち上げたとき、その傍らに置いてあったぬいパーツを見る。私ぬい用ではないのだけど……うーん。作ってみたものの、その下の飛雲の素顔は……分からないから。だから未だにそれは、お面だけなのだが。

少し考え込んでいれば、蔡宰相と飛雲がやって来て、慌ててパーツを隠し、衣装だけを手に取った。

「スイ……それは」
「ぬい用の秋コスよ。着せてあげてね」
そう告げれば、相変わらず可愛らしく衣装を受け取る飛雲。一方で……。

「何かあったの?蔡宰相まで来るなんて」

「えぇ、その件なのですが」
蔡宰相が口を開く。

「この秋に合わせて、月亮の料理の知識と、妖魔帝国の食材を組み合わせたグルメを売り出す予定なのです」

「わぁ……素敵ね!私も食べてみたいわ!」
「えぇ、食べてください」

「……はい?」

「スイ皇后の食リポ公務の出番です!」
「えぇ――――っ!?」
ほんとにやるの、その公務!いや、美味しいものを食べられるのは嬉しいけども……!?

「明後日、帝都の広間でお披露目をしますので、準備しておいてくださいね」
「そ……それはもちろん……!」
急ではあるものの、それも月亮と帝国の友好の架け橋になるのなら、私も月亮から嫁いだ役目を果たさねば!

「……ところで……スイ」
うん……?飛雲が私の衣の袂をちょんちょんと引っ張ってくる。
何かしら、そのかわいい仕草。オトメ度上がってないかしら……?

「その……ぬいのお着替えだが……お着替えをさせると……私はスイの裸を……み、見ることに……っ」
いや、正確には私のぬいよ!?
だけどそれは、世のオタクたちが必ず通る道と言ってもいい。ぬいを着せ替えさせると……推しぬいの……素肌をまじまじと見ることになることを……っ!その葛藤に今、飛雲はいるのだ……!
それにその……。

「だ……ダメ、かしら。私たち、夫婦なのよ……?」
「夫婦……うむ……そう、なのだが……やはりスイの裸を見るのはその……き……緊張して……っ」
いつも夜、ベッドの中で抱き締めてくるのに、そこはうぶなの……?

「大丈夫よ。何なら今私が手伝うわ」
自分ぬいだもの。何てことない。

「お待ちを……!そう言うのは我々が退出してからにしてくださいます!?」
何故か蔡宰相に怒られてしまった。マオピーもさすがにそれは見られないと退出。最後の頼みの綱の胡艶は『後は若いおふたりで……っ、きゃ……っ』と言って退出していった。

いやその、私が着替えるんじゃなくて、ぬいのお着替えですけど!?

「す……スイ、私も目を瞑っていたほうが……いいだろうか……っ」
そわそわしつつもやはり気になるのか、私ぬいをちらちらと見る飛雲。

「そんなに緊張しなくていいのよ」
もちろん私はぬいのお着替えはこなれているので。
ぱっぱっぱっと着替えさせていく。

「ほら、できた」
「す……スイの裸を……裸をまじまじと……っ」
恥ずかしそうにしながらも、まじまじと見たらしいのは、それも雄の本能か何かゆえだろうか。

「とにかく……ほら。かわいくお着替えできたでしょ?」
秋コスを身に付けた私ぬいを、そっと受け取った飛雲は……優しく胸元に抱き締めた。本当に大切にしてくれて、作成者冥利に尽きるわね。

「スイ……大好きだ」
ひぁっ!?いきなりそんな……っ、急に!?そんなまっすぐに言われたら、顔が赤くなっちゃう……いやいや、そもそもその言葉は私ぬいに言ったのよね?そうよ……秋コスがかわいかったから……きっとそうよね……!?

「スイ」
しかし次の瞬間、飛雲の手が私の頬に伸びてくる。

「私もスイに、衣を贈ろうか」
「あー、えと、秋服ってこと……?」

「うむ……!」
私がぬいに秋コスを贈ったことで、飛雲も閃いたらしい。

「楽しみにしていてくれ……!」
「それなら……楽しみにしているわ」
何だかぬいがキューピットになってくれたみたいで微笑ましいわね。