今日一日の出来事がとても楽しかったのか、食事が終わってからもジュリクとロアムは学生たちと楽しそうに談笑していた。
 しかし、残念ながら学園には消灯時間というのがあるため、いつまでもおしゃべりをしているわけにはいかない。おまけに彼らには明日提出しなければいけない課題もあるだろうし、ここから辺が潮時かな。

 ジュリクは聞き分けの良い子だから、みんなとの別れの際も名残惜しそうにはしていたけどすんなり応じてくれた。
 
「ここへはまた来るから、その時を楽しみにしていような」
「はい」

 心なしかいつもより元気がなさそうに見えるが、すぐに切り替えていつもの調子に戻る。

「ノーマン副学園長が俺たちの部屋を用意してくれるそうだから、職員寮の方へ行こう」 
 
 そう声をかけて移動を開始。
 ちなみに、リーシャの方はすでにおねむの時間に入ったらしく、静かに寝息を立てている。
 起こさないように優しくおんぶをして、俺たちは食堂をあとにした。

 職員寮は食堂から近く、歩いて一、二分でたどり着ける。というか、もう外に出たら目の前にあるという位置関係だった。
 すでに俺たちの到着を待っていたと思われる職員数名が玄関に立っており、食堂から出てきた俺たちの姿を見つけると「こっちですよー」と声をかけてくれた。

「遅くなってすいません」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「空いている部屋は二階で、西側の一番奥から三部屋となっています」
「ありがとうございます」

 俺とリーシャが同じ部屋で、ジュリクとロアムはそれぞれ個室。最初はふたりとも同じ部屋でもと思ったが……すっかり忘れていたけど、ロアムは男なんだよな。危うく女の子同士なら問題ないだろうって了承するところだった。
 まあ、向こうの職員もロアムが男だと知らなかった人が多いらしいので、これを機に認知していただきたい。

「じゃあ、明日の朝一でデロス村へ戻ろうか」
「分かりました」
「使い魔の卵を忘れないようにしましょうね」
「もちろんだ」

 ロアムは心配して付け足してくれたのだろうが――それを俺が忘れるなんてことは絶対にあり得ない。待ち望んでいた移動用使い魔がまさかこんな形で手に入るとは思ってみなかったからな。

 マイロス学園長をはじめ、たくさんの人に俺の魔草研究が支持されていると改めて理解をさせられた。これからは今まで以上に気合を入れて取り組んでいかないとな。

「明日も早いから、夜更かしせずに寝るんだぞ」
「む? さてはハリスさん、僕たちを子ども扱いしていますね?」
「心外ですね。早起きくらい問題ありません」

 おっと、多感な年頃のふたりはよろしくない言い方だったかな。
 ただ、俺からするとまだまだ子どもって年齢なんだけどね。

 それから「おやすみ」と言葉を交わし、それぞれの部屋へと入っていく。
 ふたりにああ言った手前、俺が寝坊するわけにもいかないので、今日は大人しく着替えてすぐに寝るとするか。