ジュリクが想像の十倍くらいは学園に馴染めたので、今夜はここへ泊っていくと話した際は彼女だけでなく周りの学生たちも大喜びしていた。
 とりあえず、学園の食堂で夕食をいただくことになったのだが、ここでも噂を聞きつけた学生たちが集まってちょっとした騒ぎになった。

 いくらなんでも注目を浴びすぎではという気もしていたが、ある男子生徒からの話を耳にして納得する。

「ジュリクって子が戦っていたアイザック先輩は間違いなく学園最強の剣士でしたからね。互角以上の戦いを繰り広げたと聞いて信じられないという生徒も多いみたいです」

 なんと、あのアイザックという男子生徒は学園でもトップクラスの有望株であり、まだ卒業まで一年以上あるのだが、すでに騎士団への入団が内定しているという。そんな逸材を相手に終始圧倒していたわけだからな。そりゃあ注目もされるか。

 ただ、そうなるとやはり職員たちから「ぜひうちへ入学してみないか?」という誘いがあった――が、ジュリクはこれを丁重に断っている。

 彼女の自身、学園へ通うことに関心がまったくないというわけじゃなさそうだが……やはり父親のような冒険者になりたいという夢も捨てきれずにいるみたいだ。

 そんな彼女に俺がしてやれることといえば……

「ジュリク」
「なんでしょうか、ハリスさん」
「学園には今後仕事で何度か通うし、その時に実戦形式の演習に参加させてもらうって形もとれるはずだ」
「い、いいのですか?」
「もちろん、学園長に相談して許可が下りたらという前提がつくけど」
「でしたら私の方から話をしておきますよ」

 ジュリクをスカウトした男性教諭がそう言ってくれた。実現するとなるとかなり特殊な立場となりそうだが、その辺は柔軟に対応してくれるだろうという。優秀な人材を確保しておきたい学園側の意向かな。
 ともかく、ジュリクは学園の臨時生徒という形で在籍する方向となるみたいだ。

「よかったな、ジュリク」
「これもすべてはハリスさんのおかげです。感謝してもしきれません」
「いいよ。今後もしっかり護衛をしてくれるならね」
「お任せください」

 未来の騎士団エース候補生を相手に渡り合ったジュリクがいてくれたら、俺としても心強いものな。
 
 その後も学生たちから質問攻めとなったジュリク。
 俺とロアムが間に入ってフォローしていると、今度はアルラウネのリーシャを見つけた数人の女子生徒が「可愛い!」とそちらへ殺到。もう何が何やらよく分からないカオス状態となっていった。

 今回の学園遠征……かなり疲れたけど、使い魔ゲット以外にたくさん得る物があってよかったよ。