ノエイル王立魔剣学園の中央校舎。
 ここは職員室や魔法の研究棟があり、俺たちの目指す学園長室も最上階に存在している。

「いつ来てもここの規模のデカさには驚かされる」
「あいぃ?」
「ははは、意味が分からないって顔だな。俺たちが暮らしている診療所よりずっと広いなぁってことさ」
「あい!」

 砕いて説明をすると、リーシャは俺の言葉を理解したようだ。
 それにしても、いつ頃になった会話ができるくらい話せるようになるかな。アルラウネの成長スピードは人間よりもずっと早いらしいから、もうそろそろ何かが変わってきてもよさそうなんだが――

「あれ? リーシャ?」
「あい?」
「ちょっと大きくなったんじゃないか?」

 本人に自覚はないようだが、確実に前より大きくなっている。初めて来る場所だから迷子にならないようにと手をつないで歩いているのだが、その手も前より大きくなっているようだ。

 しばらく階段を上がり続け、たどり着いた学園長室。
 すでに守衛のジョニーさんから俺が来たことを魔法で伝えられているらしく、近づいていくと部屋のドアが自動的に開いた。

「ここへ来ると……なんだか緊張しちゃうんだよな」

 王立学園に通った経験はない――が、前世の記憶として学校という教育機関のお世話になっている。あっちの世界で言うなら、ここは校長室。生徒が入るにはだいぶハードルの高い場所なのだ。

 中へと入ると、すぐにマイロス学園長とノーマン副学園長が出迎えてくれた。

「お久しぶりですね――っと、言っても、前に会ってからそれほど経ってはいませんが」

 大きな執務机の前に立つマイロス学園長は、相変わらず優しそうな笑みを浮かべてそう語りかける。

「すでにアントルース家の当主から聞いているとは思いますが、あなたを学園に呼んだのは贈り物を渡すためです」
「ベイリー様の話ですと、学園に置いておくより俺に渡した方が有効活用ができるとのことでしたが……やはり魔草に関するものでしょうか」
「まあ、そんなところですね。――ノーマン副学園長」
「はい」

 名前を呼ばれたノーマン副学園長が部屋の奥から持ってきたのは――それはあまりも意外な物であった。

「それは……卵?」
「えぇ。きっと、これがあなたの抱える悩みを解消してくれますよ」
「俺の悩みを……」

 どういう意味なんだ?
 俺の悩みって……あっ! もしかして!

「移動用の使い魔」
「正解です」

ということは……これって使い魔の卵なのか?