朝の支度が整い、簡単な畑の手入れを終えてから出発。
王立学園への道のりは長いので、用が済んだら近くの宿屋で一泊し、次の日に帰ってくることになるだろう。
念のため、デロス村で店を開いているストックウェル商会の商人たちにもその件を伝えておく。俺はともかく、ロアムが返って来なかったら心配するだろうからな。
商人たちは快く了承してくれ、おまけにまた馬車を貸してもらえた。
しかし……いい加減、自分で長距離を移動できる使い魔か何かを調達しておかないといけないな。マイロス学園長に相談してみてもいいかもしれない。
そんなことを考えつつ、俺たちは学園へ向けてデロス村を発った。
――数時間後。
「おっ、見えてきたな」
馬車の窓から王立学園の校舎群が見えてくる。
なんとか暗くなる前に到着できてよかったよ。
「あれが学園……」
窓にへばりついて瞳を輝かせているのはジュリクだった。
今日の目的地である王立学園は、生まれた時から冒険者になることが運命づけられていたような家庭環境だったジュリクには無縁の場所。
これまで、「そういった場所が存在している」程度の認識しかなかったようだが、こうして目の当たりにし、関心が強まったみたいだ。馬車の中では学園に通った経験はないが、仕事で何度か足を運んでいる俺やロアムの話を興味深げに聞いていたから、それも大きいかな。
――おっと、そうだ。
冒険者ジュリクにとって、あそこは初めて訪れる場所。これまで彼女が当たり前だと思ってきた常識は通用しない。それをしっかり把握させておかないと大変なことになってしまう。今一度確認しておこう。
「ジュリク、さっき教えた注意事項を覚えているか」
「騒がない。暴れない。むやみやたらに戦わない――ですね」
「その通りだ。この三つの『ない』をしっかり守ってくれよ」
「任せてください」
学園にはフィクトリア様やエマ様のように、貴族の令嬢や子息が大勢通っている。そこで何かトラブルでも起こそうものなら大事になってしまう。それだけはなんとしても避けたいところだ。
まあ、ジュリクはこちらが言えば素直に聞き入れてくれるし、そこまで気にしなくてもいいかもしれないな。
そうだ。
これも付け足しておかないと。
「それと、学園は広いから俺たちのそばを離れないように。どうしても離れなければいけない時は必ず知らせること。いいね?」
「分かりました」
真面目な口調で言うも、視線は学園のシンボルにもなっている大きな時計塔に釘付け状態となっている。
「やれやれ……」
「大丈夫ですよ、ハリスさん。僕がジュリクをフォローしますから」
「任せたぞ、ロアム」
俺はリーシャを見ていなくちゃいけないので、常にジュリクのフォローへは回れない。
こういう時、ロアムのような存在がいてくれて本当に助かるよ。
ひと息ついたところで、馬車はいよいよ学園の敷地内へと入っていった。
王立学園への道のりは長いので、用が済んだら近くの宿屋で一泊し、次の日に帰ってくることになるだろう。
念のため、デロス村で店を開いているストックウェル商会の商人たちにもその件を伝えておく。俺はともかく、ロアムが返って来なかったら心配するだろうからな。
商人たちは快く了承してくれ、おまけにまた馬車を貸してもらえた。
しかし……いい加減、自分で長距離を移動できる使い魔か何かを調達しておかないといけないな。マイロス学園長に相談してみてもいいかもしれない。
そんなことを考えつつ、俺たちは学園へ向けてデロス村を発った。
――数時間後。
「おっ、見えてきたな」
馬車の窓から王立学園の校舎群が見えてくる。
なんとか暗くなる前に到着できてよかったよ。
「あれが学園……」
窓にへばりついて瞳を輝かせているのはジュリクだった。
今日の目的地である王立学園は、生まれた時から冒険者になることが運命づけられていたような家庭環境だったジュリクには無縁の場所。
これまで、「そういった場所が存在している」程度の認識しかなかったようだが、こうして目の当たりにし、関心が強まったみたいだ。馬車の中では学園に通った経験はないが、仕事で何度か足を運んでいる俺やロアムの話を興味深げに聞いていたから、それも大きいかな。
――おっと、そうだ。
冒険者ジュリクにとって、あそこは初めて訪れる場所。これまで彼女が当たり前だと思ってきた常識は通用しない。それをしっかり把握させておかないと大変なことになってしまう。今一度確認しておこう。
「ジュリク、さっき教えた注意事項を覚えているか」
「騒がない。暴れない。むやみやたらに戦わない――ですね」
「その通りだ。この三つの『ない』をしっかり守ってくれよ」
「任せてください」
学園にはフィクトリア様やエマ様のように、貴族の令嬢や子息が大勢通っている。そこで何かトラブルでも起こそうものなら大事になってしまう。それだけはなんとしても避けたいところだ。
まあ、ジュリクはこちらが言えば素直に聞き入れてくれるし、そこまで気にしなくてもいいかもしれないな。
そうだ。
これも付け足しておかないと。
「それと、学園は広いから俺たちのそばを離れないように。どうしても離れなければいけない時は必ず知らせること。いいね?」
「分かりました」
真面目な口調で言うも、視線は学園のシンボルにもなっている大きな時計塔に釘付け状態となっている。
「やれやれ……」
「大丈夫ですよ、ハリスさん。僕がジュリクをフォローしますから」
「任せたぞ、ロアム」
俺はリーシャを見ていなくちゃいけないので、常にジュリクのフォローへは回れない。
こういう時、ロアムのような存在がいてくれて本当に助かるよ。
ひと息ついたところで、馬車はいよいよ学園の敷地内へと入っていった。
