今回もまたストックウェル商会のご厚意により、馬車と御者を用意してもらった。
何もかもやってもらっていては申し訳ない気持ちになってしまうが、ロアム的にはまったく問題ないと言い、それどころか、
「こうしてあなたをサポートすることが僕の役目ですから!」
と胸を張って宣言されてしまう。
めちゃくちゃありがたい話はあるんだけど……まあ、ここはお言葉に甘えるとするかな。いずれ魔草の供給が安定したら恩返しをする――言ってみれば出世払いみたいなものだ。
デロス村から目的地であるアントルース家の屋敷まではそれほど時間がかからないため、早い時間での到着となった。屋敷前に馬車をとめると、早速門番たちが慌てた様子で駆け寄ってくる。
――どうもおかしい。
なんだか困っているような表情だ。
まあ、大体察しがつくな。
「ハ、ハリス殿、実は――」
「ベイリー様は留守か」
「そ、そうなんですよ」
アポなしだったから致し方ないといえばそうなるか。
ただ、今回に関してはベイリー様よりもロザーラ様の方に用事があった。
「今日はロザーラ様の容態をチェックしに来たんです」
「それでしたら、すぐにご案内いたします」
「いいんですか?」
主のいない屋敷へ勝手に入れるのはまずいと思うのだが、それにはちゃんとした理由があった。
「ベイリー様から、『もし留守中にハリスが来たら無条件で通せ』と言われておりますので」
「それは助かります」
さすがはベイリー様だ。
ちゃんとそこまで見据えていたとは。
「でも、最近はずっと調子がいいみたいですよ。今朝もメイドたち数人と中庭で楽しそうにお話されていました」
「それは朗報ですね」
ロザーラ様は着実に回復している。
それが知れただけでも大収穫なのだが、念のため直接会って状態を確認しておきたいところだな。
門番のひとりに案内され、俺たち一行は屋敷へと足を踏み入れる。これから会おうとしているロザーラ様だが、現在は自室に戻って休んでいるらしい。
一度メイドに話を通し、会えるかどうかだけ確認をしておいた方がいいな。
部屋の前まで来ると、門番がノックをして俺が来たことを伝える。
すると、すぐに中から「どうぞ」とロザーラ様の声で返ってきた。
どうやら会ってくれるらしい。
「失礼します」
ゆっくりとドアを開けて室内へ入ると、そこには護衛役の騎士ふたりと総勢十人のメイドに囲まれたベッドが視界に飛び込む。そこで寝ている女性こそ、ベイリー様の妻でフィクトリア様の母親であるロザーラ様だ。
「いらっしゃい、ハリス。わざわざ様子を見に来てくれたの?」
「はい。お元気そうで何よりです」
「そうね……今日はいつにも増して活力があるわ。少しずつでも全快に向かっていると捉えていいのかしらね」
「もちろんです」
俺はハッキリと言い切る。
それから、ロザーラ様は同行しているジュリク、ロアム、リーシャに関心を持ち、俺が三人の紹介をしていった。
「ふふふ、可愛くて頼もしい仲間が増えたようね」
「おかげさまで、とても助かっていますよ」
他愛ない会話で盛り上がっていると、
「っ!」
突然、ジュリクの虎耳がピクッと動き、周囲を警戒し始める。
どうしたっていうんだ?
何もかもやってもらっていては申し訳ない気持ちになってしまうが、ロアム的にはまったく問題ないと言い、それどころか、
「こうしてあなたをサポートすることが僕の役目ですから!」
と胸を張って宣言されてしまう。
めちゃくちゃありがたい話はあるんだけど……まあ、ここはお言葉に甘えるとするかな。いずれ魔草の供給が安定したら恩返しをする――言ってみれば出世払いみたいなものだ。
デロス村から目的地であるアントルース家の屋敷まではそれほど時間がかからないため、早い時間での到着となった。屋敷前に馬車をとめると、早速門番たちが慌てた様子で駆け寄ってくる。
――どうもおかしい。
なんだか困っているような表情だ。
まあ、大体察しがつくな。
「ハ、ハリス殿、実は――」
「ベイリー様は留守か」
「そ、そうなんですよ」
アポなしだったから致し方ないといえばそうなるか。
ただ、今回に関してはベイリー様よりもロザーラ様の方に用事があった。
「今日はロザーラ様の容態をチェックしに来たんです」
「それでしたら、すぐにご案内いたします」
「いいんですか?」
主のいない屋敷へ勝手に入れるのはまずいと思うのだが、それにはちゃんとした理由があった。
「ベイリー様から、『もし留守中にハリスが来たら無条件で通せ』と言われておりますので」
「それは助かります」
さすがはベイリー様だ。
ちゃんとそこまで見据えていたとは。
「でも、最近はずっと調子がいいみたいですよ。今朝もメイドたち数人と中庭で楽しそうにお話されていました」
「それは朗報ですね」
ロザーラ様は着実に回復している。
それが知れただけでも大収穫なのだが、念のため直接会って状態を確認しておきたいところだな。
門番のひとりに案内され、俺たち一行は屋敷へと足を踏み入れる。これから会おうとしているロザーラ様だが、現在は自室に戻って休んでいるらしい。
一度メイドに話を通し、会えるかどうかだけ確認をしておいた方がいいな。
部屋の前まで来ると、門番がノックをして俺が来たことを伝える。
すると、すぐに中から「どうぞ」とロザーラ様の声で返ってきた。
どうやら会ってくれるらしい。
「失礼します」
ゆっくりとドアを開けて室内へ入ると、そこには護衛役の騎士ふたりと総勢十人のメイドに囲まれたベッドが視界に飛び込む。そこで寝ている女性こそ、ベイリー様の妻でフィクトリア様の母親であるロザーラ様だ。
「いらっしゃい、ハリス。わざわざ様子を見に来てくれたの?」
「はい。お元気そうで何よりです」
「そうね……今日はいつにも増して活力があるわ。少しずつでも全快に向かっていると捉えていいのかしらね」
「もちろんです」
俺はハッキリと言い切る。
それから、ロザーラ様は同行しているジュリク、ロアム、リーシャに関心を持ち、俺が三人の紹介をしていった。
「ふふふ、可愛くて頼もしい仲間が増えたようね」
「おかげさまで、とても助かっていますよ」
他愛ない会話で盛り上がっていると、
「っ!」
突然、ジュリクの虎耳がピクッと動き、周囲を警戒し始める。
どうしたっていうんだ?