ジュリクとロアムの大健闘により、人数分の魚を確保することに成功。
 さらに俺とリーシャの採ってきた山菜も合わさり、その日のディナーはとても豪華なものとなった。

 夜になり、周りが薄暗くなってくると明かりとして焚火を用意。このまま魚や山菜も焼けるのでとても便利だ。

「いいですねぇ……こういうのってずっと憧れていたんですよぉ」

 魚を串に刺しながら、ロアムは嬉しそうに語る。そんな彼をジュリクは不思議そうに眺めていた。

「こういうのというのは、魚を釣って食べる行為をさすのですか?」
「うん。仕事であちこち行くことはあっても、こうしたワイルドな食事ってしないからね」

 まあ、それもそうか。
 大商人の息子ともなれば、泊る宿屋も一流どころだろうし、テント張って野宿っていうのは少なくともコービーさんが一緒にいる状況ではあり得ないかな。ゆえに、こうしたアウトドアな食事というのが新鮮に映るのだろう。

「そういうものでしょうか……」

 一方、冒険者稼業をしているジュリクにはむしろこっちの方が多いのでロアムの気持ちを分かりかねているようだ。それでも、彼がとても喜んでいるというのは伝わっているので満更でもない様子。

 年が近く、さらにお互いそういった関係性を築けられなかった似た者同士として意気投合している……あのふたりを見ていると、なんだかほっこりするな。

「さあさあ、ハリス殿! 今日はお疲れでしょう! 飲んでください!」

 こっちはこっちで大人同士の飲み会だ。
 ストックウェル商人たちとおいしい料理を楽しみながら酒盛りをするが、話題は自然と診療所や聖院についてのものへと変わっていく。

「あなたの世話になったという人たちが、アントルース家に集結しつつあります」
「アントルース家に?」
「今後について話し合いの場を設けようとしているみたいです。あなたが聖院から去ったことで、向こうとは付き合いを打ち切る者たちが続出していますから。――我々ストックウェル商会もそのうちのひとつですが」

 マジか。
 ストックウェル商会は聖院との関係を断ったのか。
 聖院からすれば痛手だよなぁ……特にドレンツ院長は大手とのつながりを重要視していたから、大陸でも屈指の大商会であるストックウェルに切られたのはこたえているはずだ。

「こちらの仕入れた情報によれば、すでに鋼の牙のリーダーや旧レオディス鉱山の魔女は屋敷に到着しているようですよ」
「えっ!? あの人たちが!?」

 どちらも他者からの呼びだしに応じるようなタイプではないのだが……これは俺が思っているよりも大事になりつつあるな。

「余計な混乱を招いてしまったようですね……」
「あなたが気に病むことなどありませんよ。我々は敵対しようとしているわけではなく、あなたが考えている魔草の一般流通に向けた支援をしたいと考えているのですから」
「それは……とてもありがたい話ですね」

 コービーさんは先代から続けてきたこの計画をずっと推してくれていた。
 どうやら、他のメンツも同じ意見だとストックウェル商会の商人たちは口を揃えて言う。

 ならば、その期待に応えなくてはいけない。
 プレッシャーはかかるが、同時にやりがいも感じることができた。