ダンジョンに出現したという超大型モンスター。
移動しながらラッセル村長に話を聞き、大体の全容が読めてきた。
出現したダンジョンというのはこれまでに強い大型のモンスターが一度も確認されていないため、初心者向けとしてギルドが紹介していた。そのため、初期の対処でミスが連発し、それが被害を拡大させた一番の要因らしい。
ラッセルさんは元冒険者なので、初心者のするありがちな失敗が重なっておきた不運だと言っていたが……そもそもなんだって急に強い大型モンスターが現れたのだろうか。
まあ、他の弱いモンスターが突然変異を起こしたって可能性も十分あるので、一概にまったく起きることが予想できない事態かと言われたらそうじゃないが、それにしてもなんだか腑に落ちない。
――って、今はそんなことを考えている場合じゃない。
現場には治癒魔法使いがおらず、回復薬だけでなんとかしているようだが……それだけではまかないきれないほどの重傷を負っている者もいるという。
本来であれば、聖院に行って治療を受けるべきなのだろうが、初心者向けダンジョンということで訪れているのは駆けだしの若者が大半を占めている。彼らに聖院が新たに定めた法外と言っていい治療費を支払うのは無理だ。
「恐れていた事態が起きてしまったな……」
俺は静かにそう呟いた。
これはまだ始まりに過ぎない。
今後、同じような出来事が起きた際に聖院を頼れず、治せるはずの怪我で命を落とす者が増えてしまうだろう。
俺はそんな状況を変えたかった。
治癒魔法師が現場に俺だけしかいないとなったら、全員の治療を任されることになるが、正直言って、全員を治療する前に俺の魔力量が尽きてしまうだろう。
それをカバーするのが魔草だ。
回復効果のある魔草を使うことで、負傷した冒険者たちを癒せるはず。これこそがグスタフ先生が目指していた新しい治療の形――なのだが、まだ万全と呼べる体制には至っていない。
今持っていける最大限の量を手にしているが、これで足りるかも分からないからな。
そんな話をしていたら、隣で聞きながらついてきていたロアムが、
「ハリスさん、うちの商会で扱っている回復薬を提供します」
そう申し出てくれた。
「ロ、ロアム? しかし――」
「大丈夫です。こちらのことは気にせず、ハリスさんがやりたいようにやってください。僕はそれを支援しますから」
「っ! あ、ありがとう!」
心強い味方となってくれるロアムは、さらに移動手段として自分たちが乗ってきた馬車も貸しだしてくれた。
この気前の良さ……さすがはストックウェル商会代表の血を引くだけはあるな。
顔は全然似てないけど。
準備を整えると、俺とロアム、さらにアルラウネのリーシャ、さらに一部商会の面々を乗せた馬車はダンジョンを目指してデロス村をあとにした。
移動しながらラッセル村長に話を聞き、大体の全容が読めてきた。
出現したダンジョンというのはこれまでに強い大型のモンスターが一度も確認されていないため、初心者向けとしてギルドが紹介していた。そのため、初期の対処でミスが連発し、それが被害を拡大させた一番の要因らしい。
ラッセルさんは元冒険者なので、初心者のするありがちな失敗が重なっておきた不運だと言っていたが……そもそもなんだって急に強い大型モンスターが現れたのだろうか。
まあ、他の弱いモンスターが突然変異を起こしたって可能性も十分あるので、一概にまったく起きることが予想できない事態かと言われたらそうじゃないが、それにしてもなんだか腑に落ちない。
――って、今はそんなことを考えている場合じゃない。
現場には治癒魔法使いがおらず、回復薬だけでなんとかしているようだが……それだけではまかないきれないほどの重傷を負っている者もいるという。
本来であれば、聖院に行って治療を受けるべきなのだろうが、初心者向けダンジョンということで訪れているのは駆けだしの若者が大半を占めている。彼らに聖院が新たに定めた法外と言っていい治療費を支払うのは無理だ。
「恐れていた事態が起きてしまったな……」
俺は静かにそう呟いた。
これはまだ始まりに過ぎない。
今後、同じような出来事が起きた際に聖院を頼れず、治せるはずの怪我で命を落とす者が増えてしまうだろう。
俺はそんな状況を変えたかった。
治癒魔法師が現場に俺だけしかいないとなったら、全員の治療を任されることになるが、正直言って、全員を治療する前に俺の魔力量が尽きてしまうだろう。
それをカバーするのが魔草だ。
回復効果のある魔草を使うことで、負傷した冒険者たちを癒せるはず。これこそがグスタフ先生が目指していた新しい治療の形――なのだが、まだ万全と呼べる体制には至っていない。
今持っていける最大限の量を手にしているが、これで足りるかも分からないからな。
そんな話をしていたら、隣で聞きながらついてきていたロアムが、
「ハリスさん、うちの商会で扱っている回復薬を提供します」
そう申し出てくれた。
「ロ、ロアム? しかし――」
「大丈夫です。こちらのことは気にせず、ハリスさんがやりたいようにやってください。僕はそれを支援しますから」
「っ! あ、ありがとう!」
心強い味方となってくれるロアムは、さらに移動手段として自分たちが乗ってきた馬車も貸しだしてくれた。
この気前の良さ……さすがはストックウェル商会代表の血を引くだけはあるな。
顔は全然似てないけど。
準備を整えると、俺とロアム、さらにアルラウネのリーシャ、さらに一部商会の面々を乗せた馬車はダンジョンを目指してデロス村をあとにした。