今後の仕事の話もあるというので、ロアムを俺の農場兼診察所へと案内する。
デロス村近くにある深い森へと足を踏み入れると、やがて小川のせせらぎが聞こえてきた。
「この音……診察所はもう近いんですか?」
「ああ、そうだ。もうすぐだよ」
あまり大人数では立ち入れない場所でもあるので、同行しているのはロアムを除くと彼をサポートするためについてきたベテランの商会関係者が約十名。とはいえ、彼らともよく仕事で会っているので俺の人間性については把握しているだろう。なので、そこまで張り詰めた空気というのは感じなかった。
「それにしてもいいところですね……こんなにのんびりとした気持ちになるのはとても久しぶりです」
木漏れ日を体いっぱいに浴びるよう伸びをするロアム。
そういえば、彼の住んでいる商業都市ディバンは王都に次ぐ人口の大都市だったな。商業都市と名乗っているだけあり、他国から商売をしに来る人も多く、日によっては王都よりも人が多いってこともあるらしい。
毎日混雑していて、どこを見回しても人だらけ。
地方の中小企業で働いていた社畜時代俺からすれば、都心のオフィス街で働くリーマンっていうのはあんな環境だったのかもしれないなって思えるような場所だ。
だから、ロアムには小鳥のさえずりや小川のせせらぎくらいしか聞こえないこの森がとても新鮮に映ったのだろう。
「僕、このデロス村が気に入りました」
晴れ晴れとした表情でそう告げると、
「あいあーい!」
ずっと俺の足にしがみついていたアルラウネのリーシャがロアムの方へと歩いていく。
「あっ、ようやく顔を見せてくれたね」
ロアムは優しい笑顔でそう告げると、リーシャとの目線を合わせるために腰を下ろした。泥でズボンが汚れることなどお構いなし……こうした精神が一流の商人を育んでいくのだろうなと感心させられたよ。
リーシャもロアムのそうした誠実さを読み取ったからこそ、ああやって自分から近づいていったのだろうな。
それから少し歩くと、目的地である俺の家に到着。
「凄いや! もうすでに農場が出来上がっているなんて!」
目を輝かせながらロアムは叫ぶ――が、あの農場はほとんどリーシャのおかげで完成したようなものだ。植物を自在に操れるアルラウネの能力がなければ、今の状態に持っていくのに数ヶ月を要しただろう。
これには一緒についてきた商人たちも驚いていた。
同時に、彼らの目はすぐにロアムの付き人から商人へと変わる。
さすがは生粋の商売人たち。
嗅覚が違うな。
「さて、積もる話もあるだろうし、まずは小屋へ入ろうか」
「はい!」
ちなみに、彼らは長期戦を想定してテントを持ち込んでいた。
こういう用意周到なところも商人っぽいな。
デロス村近くにある深い森へと足を踏み入れると、やがて小川のせせらぎが聞こえてきた。
「この音……診察所はもう近いんですか?」
「ああ、そうだ。もうすぐだよ」
あまり大人数では立ち入れない場所でもあるので、同行しているのはロアムを除くと彼をサポートするためについてきたベテランの商会関係者が約十名。とはいえ、彼らともよく仕事で会っているので俺の人間性については把握しているだろう。なので、そこまで張り詰めた空気というのは感じなかった。
「それにしてもいいところですね……こんなにのんびりとした気持ちになるのはとても久しぶりです」
木漏れ日を体いっぱいに浴びるよう伸びをするロアム。
そういえば、彼の住んでいる商業都市ディバンは王都に次ぐ人口の大都市だったな。商業都市と名乗っているだけあり、他国から商売をしに来る人も多く、日によっては王都よりも人が多いってこともあるらしい。
毎日混雑していて、どこを見回しても人だらけ。
地方の中小企業で働いていた社畜時代俺からすれば、都心のオフィス街で働くリーマンっていうのはあんな環境だったのかもしれないなって思えるような場所だ。
だから、ロアムには小鳥のさえずりや小川のせせらぎくらいしか聞こえないこの森がとても新鮮に映ったのだろう。
「僕、このデロス村が気に入りました」
晴れ晴れとした表情でそう告げると、
「あいあーい!」
ずっと俺の足にしがみついていたアルラウネのリーシャがロアムの方へと歩いていく。
「あっ、ようやく顔を見せてくれたね」
ロアムは優しい笑顔でそう告げると、リーシャとの目線を合わせるために腰を下ろした。泥でズボンが汚れることなどお構いなし……こうした精神が一流の商人を育んでいくのだろうなと感心させられたよ。
リーシャもロアムのそうした誠実さを読み取ったからこそ、ああやって自分から近づいていったのだろうな。
それから少し歩くと、目的地である俺の家に到着。
「凄いや! もうすでに農場が出来上がっているなんて!」
目を輝かせながらロアムは叫ぶ――が、あの農場はほとんどリーシャのおかげで完成したようなものだ。植物を自在に操れるアルラウネの能力がなければ、今の状態に持っていくのに数ヶ月を要しただろう。
これには一緒についてきた商人たちも驚いていた。
同時に、彼らの目はすぐにロアムの付き人から商人へと変わる。
さすがは生粋の商売人たち。
嗅覚が違うな。
「さて、積もる話もあるだろうし、まずは小屋へ入ろうか」
「はい!」
ちなみに、彼らは長期戦を想定してテントを持ち込んでいた。
こういう用意周到なところも商人っぽいな。