「……で? どうだったのよ、昨日?」

 そうだった。僕と先輩はその話をしていたのだ。先輩が急に変なことを言い出したから話が脱線したのだった。

「昨日は世界一のタワーに行きました。そのあとクリスマスイブの話題になったんですけど」

「うんうん。それで?」

「昨夜、絢乃さんからお電話があって。『イブの夕方六時からウチでクリスマスパーティーをやるんだけど、あなたも来ない?』ってお誘いを受けました。……何でも、源一会長が俺も招待したいっておっしゃったそうで」

「…………へぇ。いいじゃん! で、あなたは当然参加するんでしょ?」

 僕の話を聞いて、先輩は大はしゃぎだった。が、最初の溜めは多分、自分にお誘いがかからなかったことを残念がっていたのだろう。

「ええ、最終的には。でも、最初は渋ってたんですよ。『俺が言ったら場違いなんじゃないか』って思って、お断りしようとしたんです。最初は会長からのご招待だとは知らなかったんで」

「えっ、そうなの? もったいない」

「なんか、絢乃さんと個人的に親しくさせて頂いてることを後ろめたいっていうか……。付き合っているかどうかは別としても、俺が彼女に好意を抱いてることは事実ですし。相手がまだ高校生だから、とか年の差とかやっぱり気にしちゃって。…………ただでさえ体調がすぐれない会長のご気分まで害してしまったら、とか思うと」

 一般的には、父親というものは自分の娘と親しくしている男の存在が気に入らないらしい。ウチの父親には二人の息子しかいないので何とも言えないが。

「桐島くんってばそんなこと気にしてるの? あたしが思うに、会長はあなたのこと気に入ってるはずよ? あたしの知ってる限りじゃ、あの人は世間一般の父親とは違うから。だからクリスマスにもあなたを招待したんじゃないかな」

「ああ……、そっか。そうですよね。気に入らない相手を招待なんかしませんよね」

「そうそう。まぁ、あなたに下心があることまでご存じかどうかは分かんないけどねー」

「したっ……!? だからそんなんじゃないって言ってるじゃないですか!」

 僕は顔を真っ赤にして猛抗議した。絢乃さんへの恋心は事実だし、それは百歩譲って認めるとしよう。だが。決して恋心=下心ではないのだ。別に僕は、絢乃さんをどうこうしようなんて思ったことはなかった。ただ僕が勝手に想う分にはいいじゃないか、と思っていただけで……。