白くきめ細やかなで毛先は少々薄花色に染まっていた髪、青白磁の澄んだ切れ長の瞳。透き通って見えるほど美しい肌、すらりと細身の体躯。誰が見ても涼しげな印象の、そんな乙女がいた。窓辺に座り月光に照らされれば、月の精とでも間違えてしまいそうだ。
乙女は本日、月下美人の女王になった。しかし、番が戴冠式までに間に合わずまだ会えていない。
こんな夜更けに、ドアを叩く音がした。
「陛下。」
「どうぞ。どうしたの、?」
冬の、よく澄んだ風のような綺麗な声だった。
「今しがた、番が到着しましたがどうなさいますか?」
「……そう。一目、会っておきたいわ。」
「かしこまりました。入れ。」
入ってきたのは小柄な男だった。
「……」
「無礼者!陛下に挨拶しろ!」
「あっ!ごめんなさい……!こんなに綺麗な人初めて会ったからつい、見とれちゃって……」
番は乙女に近づくと跪いた。
「お初にお目にかかります、女王陛下。番の蛍(ほたる)と申します。」
蛍は顔を上げ乙女を見つめるなり、彼女の手を取り笑った。
「これからよろしくね……!」
兵士は怒り狂い乙女から蛍を引き剥がしたが、乙女はそれどころではなかった。蛍は怒られていることを気にも留めていなかった。
(あんな人……初めて会った……)
乙女はベッドに入っても寝付けなかった。蛍のことが頭から離れないのだ。月下美人の国の人々は元々冷静で物静かな人が多く、特に乙女は無口だった。ただでさえ会う人皆が冷静なのに、乙女は人と関わることをしないため、蛍のような無邪気で明るい人と関わったことがなかったのだ。
次の日の朝、乙女が目を覚ますと、なんだか廊下が騒がしかった。
「朝から何事?」
「陛下……!申し訳ありません。この番が何もできなくてですね……本当に使いものにならないのです。」
メイドが目線を促すと、そこには床に這いつくばっている蛍がいた。瞳を潤ませながら雑巾で床を磨いているようだ。
「やめなさい。彼は私の番だ。私同様に丁重に接しなさい。番は女王の旦那であることを忘れないでください。」
メイドらは乙女の牽制に気圧されると一礼してそそくさと去っていった。
「大丈夫……?」
蛍は乙女の顔を見るなり泣き出した。
「遅いよぉぉ……!!怖かったよぉぉ……!!ありがとぉぉ……!!」
「お、落ち着きなさい……!」
乙女は自室に蛍を招き入れるとメイドに朝食を頼んだ。
「メイドがごめんなさい。」
「ううん……!気にしないで……じゃなくて、お気になさらないでください。」
乙女は目を見開いた。昨晩のような親しい口調ではなかったからだ。
「どうして……」
「メイドの方々に教えてもらいました。どうですか、上手でしょう?」
乙女は少しがっかりした。しかし、それを言い出す勇気もなかった。蛍は乙女の手を取って優しく顔を覗き込んだ。
「嫌だ……?」
察しのいい蛍は乙女の感情を汲み取っていた。乙女は少し頬を赤らめて頷いた。
「分かった。もうしないよ。ごめんね。」
乙女の心はますます溶けていく。
「お名前聞いてもいい?」
「わ、私達に名前はないから……」
「そっか!じゃあ……凛月(りつ)ちゃん!」
「りつ?そう……」
凛月は名前を噛み締めていた。
「嫌かな?」
「ううん……嬉しい、気がする……」
凛月は自分の気持ちにとても鈍感だ。しかし、蛍はそれを責める事はしなかった。
「良かった……!俺のことは蛍でいいからね!」
蛍はまるで凛月とは反対だった。
乙女は本日、月下美人の女王になった。しかし、番が戴冠式までに間に合わずまだ会えていない。
こんな夜更けに、ドアを叩く音がした。
「陛下。」
「どうぞ。どうしたの、?」
冬の、よく澄んだ風のような綺麗な声だった。
「今しがた、番が到着しましたがどうなさいますか?」
「……そう。一目、会っておきたいわ。」
「かしこまりました。入れ。」
入ってきたのは小柄な男だった。
「……」
「無礼者!陛下に挨拶しろ!」
「あっ!ごめんなさい……!こんなに綺麗な人初めて会ったからつい、見とれちゃって……」
番は乙女に近づくと跪いた。
「お初にお目にかかります、女王陛下。番の蛍(ほたる)と申します。」
蛍は顔を上げ乙女を見つめるなり、彼女の手を取り笑った。
「これからよろしくね……!」
兵士は怒り狂い乙女から蛍を引き剥がしたが、乙女はそれどころではなかった。蛍は怒られていることを気にも留めていなかった。
(あんな人……初めて会った……)
乙女はベッドに入っても寝付けなかった。蛍のことが頭から離れないのだ。月下美人の国の人々は元々冷静で物静かな人が多く、特に乙女は無口だった。ただでさえ会う人皆が冷静なのに、乙女は人と関わることをしないため、蛍のような無邪気で明るい人と関わったことがなかったのだ。
次の日の朝、乙女が目を覚ますと、なんだか廊下が騒がしかった。
「朝から何事?」
「陛下……!申し訳ありません。この番が何もできなくてですね……本当に使いものにならないのです。」
メイドが目線を促すと、そこには床に這いつくばっている蛍がいた。瞳を潤ませながら雑巾で床を磨いているようだ。
「やめなさい。彼は私の番だ。私同様に丁重に接しなさい。番は女王の旦那であることを忘れないでください。」
メイドらは乙女の牽制に気圧されると一礼してそそくさと去っていった。
「大丈夫……?」
蛍は乙女の顔を見るなり泣き出した。
「遅いよぉぉ……!!怖かったよぉぉ……!!ありがとぉぉ……!!」
「お、落ち着きなさい……!」
乙女は自室に蛍を招き入れるとメイドに朝食を頼んだ。
「メイドがごめんなさい。」
「ううん……!気にしないで……じゃなくて、お気になさらないでください。」
乙女は目を見開いた。昨晩のような親しい口調ではなかったからだ。
「どうして……」
「メイドの方々に教えてもらいました。どうですか、上手でしょう?」
乙女は少しがっかりした。しかし、それを言い出す勇気もなかった。蛍は乙女の手を取って優しく顔を覗き込んだ。
「嫌だ……?」
察しのいい蛍は乙女の感情を汲み取っていた。乙女は少し頬を赤らめて頷いた。
「分かった。もうしないよ。ごめんね。」
乙女の心はますます溶けていく。
「お名前聞いてもいい?」
「わ、私達に名前はないから……」
「そっか!じゃあ……凛月(りつ)ちゃん!」
「りつ?そう……」
凛月は名前を噛み締めていた。
「嫌かな?」
「ううん……嬉しい、気がする……」
凛月は自分の気持ちにとても鈍感だ。しかし、蛍はそれを責める事はしなかった。
「良かった……!俺のことは蛍でいいからね!」
蛍はまるで凛月とは反対だった。



