瑠宇は久しぶりに泰宏の部屋に入れることにウキウキしていた。
中学までは互いの部屋で勉強会や、ゲームやらしていたが、高校を目処に泰宏が部屋に来るな宣言をした為だ。
瑠宇も瑠宇とて女の子との遊びに興じてたためそれほど気にならなかったが、今日は違う。
泰宏からのお許しが出たのだ、何年ぶりだろうか。
「おばさん、お邪魔しまーす!」
「あら、誰かと思ったら瑠宇ちゃん?大人びたわねー」
「え、それホント!?」
瑠宇はお気に入りのスカートのレースをひらりと舞わせて、上はちょっとダボついた黄色のパーカ。
いわゆる甘辛コーデの元気っ子より、みたいなコーデをしていた。
靴はスポーティなスニーカーである。
これで瑠宇だと見抜けた泰宏の母親は実は凄いのではないかと常々瑠宇は鋭さに舌を巻いているのだ。
「泰宏から聞いてるわよ、まだ部活してるからあの子帰ってくるまで寛いでててね」
「はあーい!」
部屋がどこにあるかは分かるかしら?と言う泰宏の母親に、二階の右側ですよねと返事すると懐かしいわねえと追随して声が聞こえた。
瑠宇は靴を揃えて脱ぐと廊下を進み、設置された階段を上がっていく。昔は姉二人が同じ部屋を分けて使っていたようだが、今では一人で使っているらしい。可愛いウエルカムドアプレートがかかってない、右側部屋が泰宏の部屋だった。
久しぶりの泰宏の部屋に、少し緊張する。
浅く息を吐き、気持ちを整えてからドアノブに手をかけ一気に引いた。
瞬く間に広がったのは………水色の色の洪水だった。
壁には水色ツインテの女の子のドアップ、棚に飾られたフィギュアもツインテ、ツインテだらけの本流に部屋を間違えたかと思って一度ドアを閉めた。
「は?え??誰の部屋?…ヒロの、だよなあ……」
何度も頭を振って、他のドアを見比べる。
姉の部屋は可愛いらしくファンシーだ。
変わって簡素な目の前のドアが泰宏の部屋。
意を決して開けても光景は変わらず、瑠宇はしげしげと眺めながら入っていく。
本当にここは泰宏の部屋なのか……ツインテばかりの二次元の女の子の姿に、自分の髪もツインテの高さに持ち上げた。降りる長さが圧倒的に足りない。
まるでオタクの部屋だ。
泰宏はオタクなっていたのか。
瑠宇は比較的ツインテ女子がいないベット周りに近づき腰を下ろす。
泰宏はここに普段寝てるのか、そう考えると枕を腕に抱え、瑠宇はごろんと寝転がった。
抱えた枕から泰宏の匂いがして、胸いっぱいに吸い込むとまるで抱きしめられているみたいな錯覚に陥る。
「うあ…………」
そのことに思い至り瑠宇は一人で顔を赤くするも、枕は離さずにジタバタと足をばたつかせ、部屋を見渡してみてもあのデートがデートでなかったものを裏付けるものは何も無く。
居心地悪そうに目を閉じた。
スマホで時間を確認すれば午後16時。
服をあーでもないこーでもないと何時間もバタバタしてたのもあり、瑠宇はゆっくり眠りに落ちていく。
泰宏が帰ってきた時に見かけたのは、瑠宇が自分のベットに寝転がりすやすや寝息を立てている姿だった。
「疲れてるのか……?…おい、瑠宇?」
肩を揺さぶり、嫌そうに体が身動ぎする度にスカートが捲れる。生脚がちらりと見えて目の毒だろうと自分が着ていたジャージを羽織らせ、傍らに座る。
「待たせて悪かったな……」
よしよしと瑠宇の髪を撫で、さらりと掬う。
夕方の日差しがベットに降り注ぎ瑠宇を美しく照らす。話さなければ美少女なのだ、瑠宇は。
起きるまで待つか、起こすか……。
確か瑠宇は寝起きが最悪だったはず。
これは怒られるの覚悟で起こすしかないだろう。
泰宏は心を鬼にして瑠宇を起こしにかかった。
「瑠宇、瑠宇ー!起きろー!」
耳元で騒ぐと、しばらくしてやっと瑠宇が身を起こした。
「…………うっさぃ……」
寝ぼけ眼な瑠宇にギッと睨まれ、泰宏はさらに体を揺する。
すると舌打ちして、瑠宇は瞬きを何度か繰り返し………。
「……ヒロ!遅かったね!」見事な変わり身の早さで目覚めた。
「ああ、待たせて悪かったな」
「ごめんね、寝てたみたいだねー、なんだか安心しちゃって」
ぱさりと落ちたジャージを拾い、泰宏がハンガーにかける。
「ねえ、その壁の女の子……なに?」
「ああ、これはな……今をときめくVTuber『漣カレン』ちゃんだ!!」
ばっと泰宏が何かのポーズを取るが瑠宇にはそれは分からなかった。
「VTuber……?このこが?」
「瑠宇もYouTuberは何人かお気に入りいるだろ?」
「まあ、うん」
「それが俺には漣カレンちゃんなんだ。推しだ、大好きだ!!中学から推してはいたが本格的にVTuberアイドル活動を始めだしたんだ!」
豹変した泰宏の様子に目を白黒させながらも瑠宇は話についていこうとした、だがそっからは知らない単語やネットスラングのオンパレードで、正直ついていけなかった。軽く引きさえした。
「えーと…………漣カレンについてはわかった。でも、あのデートは?あの子は誰?」
ようやく本題に切り出せた。
泰宏はノーパソを開き、とあるファンサイトを瑠宇に見せた、それは漣カレンのファンクラブサイトだった。
「この、一番目のシロクマさん。それがあの彼女だ。カレンちゃんのファン第一号。二番目が俺だ」
あれはデートではなく、俺のライブチケの当選確認と、あそこのカフェコラボの下見の為だ。
と泰宏は語った。
曰く、カレンちゃん親衛隊であり恋愛感情はないんだと。
それを聞いて瑠宇は体から力が抜けた。
「なあんだー………そうだったんだあ………」
「引いただろ、さすがに」
泰宏はノーパソを勉強机に置き、それにまだあるんだと言葉を付け加えた。
「何が?」
「………俺は、お前を下卑た目で見ていたやつらの顔を覚えたから。仕返ししてやろうと思っていたんだ。お前が嫌がろうとも」
瑠宇の目を見れずに泰宏は傍らに、距離を空けて座る。
瑠宇はなんで?と枕を抱えたまま首を傾げた。
「………お前が大事だから。守りたいと思ったから」
ぼそりと呟く泰宏の言葉に、瑠宇はぷっつりときた。
脳細胞血管が一本切れた気がした。
「……オレ、守られるほど弱くねえよ?」
「でもだな……っ」
「女の子でもない……っ!!」
瑠宇は泰宏の足を払い、浮いた所をベットに力強く押し倒す。
勢いのままにベットが跳ねて軋み、グッズがいくつか転がり落ちた。
思わずグッズの行方を見る泰宏の両襟を掴み、むりやりこちらに向かせると瑠宇は思い切り口付ける。
「んっ!?」
泰宏の目が見開き、瑠宇をどかそうと試みるが、瑠宇は上からどかなかった。
「ずっと、ずっとこうしたかった、ヒロ……ねえ、オレのものになってよ」
瑠宇が恭宏の動きを制するように頬に触れ、耳、首筋へと指を滑らしていく。
恭宏はその動きに肩を震わせる。
「る、」
「あは、びっくりしちゃって可愛い……ね、ヒロの良さは、オレが1番よく知ってるし、今更誰にも渡さない。……だからさ、これから覚悟してね?全力でヒロを落とすから」
にっこりと微笑む瑠宇は、女の子よりも可愛く、そしてどの男よりも漢らしかった。
それこそ恭宏の醜いエゴなど必要ないぐらいに、守る必要などどこにもない程に美しくもかっこいい。
―――ああ、俺はこいつのどこを見ていたんだろうか……。
恭宏は瑠宇に2回目のキスを奪われつつ、自分からも瑠宇の肩に手を回した。
瑠宇の熱意に絆された形にはなったが、泰宏は嫌がることはなかった。
2回目のキスは、とうに親愛を越えた恋情に焦がれ焦らされ続けたキスだった。
恭宏は見開いたままの瞼をゆっくり閉じ甘く熱い唇を受け入れた。
泰宏のファーストキスは、瑠宇という幼なじみだった。
中学までは互いの部屋で勉強会や、ゲームやらしていたが、高校を目処に泰宏が部屋に来るな宣言をした為だ。
瑠宇も瑠宇とて女の子との遊びに興じてたためそれほど気にならなかったが、今日は違う。
泰宏からのお許しが出たのだ、何年ぶりだろうか。
「おばさん、お邪魔しまーす!」
「あら、誰かと思ったら瑠宇ちゃん?大人びたわねー」
「え、それホント!?」
瑠宇はお気に入りのスカートのレースをひらりと舞わせて、上はちょっとダボついた黄色のパーカ。
いわゆる甘辛コーデの元気っ子より、みたいなコーデをしていた。
靴はスポーティなスニーカーである。
これで瑠宇だと見抜けた泰宏の母親は実は凄いのではないかと常々瑠宇は鋭さに舌を巻いているのだ。
「泰宏から聞いてるわよ、まだ部活してるからあの子帰ってくるまで寛いでててね」
「はあーい!」
部屋がどこにあるかは分かるかしら?と言う泰宏の母親に、二階の右側ですよねと返事すると懐かしいわねえと追随して声が聞こえた。
瑠宇は靴を揃えて脱ぐと廊下を進み、設置された階段を上がっていく。昔は姉二人が同じ部屋を分けて使っていたようだが、今では一人で使っているらしい。可愛いウエルカムドアプレートがかかってない、右側部屋が泰宏の部屋だった。
久しぶりの泰宏の部屋に、少し緊張する。
浅く息を吐き、気持ちを整えてからドアノブに手をかけ一気に引いた。
瞬く間に広がったのは………水色の色の洪水だった。
壁には水色ツインテの女の子のドアップ、棚に飾られたフィギュアもツインテ、ツインテだらけの本流に部屋を間違えたかと思って一度ドアを閉めた。
「は?え??誰の部屋?…ヒロの、だよなあ……」
何度も頭を振って、他のドアを見比べる。
姉の部屋は可愛いらしくファンシーだ。
変わって簡素な目の前のドアが泰宏の部屋。
意を決して開けても光景は変わらず、瑠宇はしげしげと眺めながら入っていく。
本当にここは泰宏の部屋なのか……ツインテばかりの二次元の女の子の姿に、自分の髪もツインテの高さに持ち上げた。降りる長さが圧倒的に足りない。
まるでオタクの部屋だ。
泰宏はオタクなっていたのか。
瑠宇は比較的ツインテ女子がいないベット周りに近づき腰を下ろす。
泰宏はここに普段寝てるのか、そう考えると枕を腕に抱え、瑠宇はごろんと寝転がった。
抱えた枕から泰宏の匂いがして、胸いっぱいに吸い込むとまるで抱きしめられているみたいな錯覚に陥る。
「うあ…………」
そのことに思い至り瑠宇は一人で顔を赤くするも、枕は離さずにジタバタと足をばたつかせ、部屋を見渡してみてもあのデートがデートでなかったものを裏付けるものは何も無く。
居心地悪そうに目を閉じた。
スマホで時間を確認すれば午後16時。
服をあーでもないこーでもないと何時間もバタバタしてたのもあり、瑠宇はゆっくり眠りに落ちていく。
泰宏が帰ってきた時に見かけたのは、瑠宇が自分のベットに寝転がりすやすや寝息を立てている姿だった。
「疲れてるのか……?…おい、瑠宇?」
肩を揺さぶり、嫌そうに体が身動ぎする度にスカートが捲れる。生脚がちらりと見えて目の毒だろうと自分が着ていたジャージを羽織らせ、傍らに座る。
「待たせて悪かったな……」
よしよしと瑠宇の髪を撫で、さらりと掬う。
夕方の日差しがベットに降り注ぎ瑠宇を美しく照らす。話さなければ美少女なのだ、瑠宇は。
起きるまで待つか、起こすか……。
確か瑠宇は寝起きが最悪だったはず。
これは怒られるの覚悟で起こすしかないだろう。
泰宏は心を鬼にして瑠宇を起こしにかかった。
「瑠宇、瑠宇ー!起きろー!」
耳元で騒ぐと、しばらくしてやっと瑠宇が身を起こした。
「…………うっさぃ……」
寝ぼけ眼な瑠宇にギッと睨まれ、泰宏はさらに体を揺する。
すると舌打ちして、瑠宇は瞬きを何度か繰り返し………。
「……ヒロ!遅かったね!」見事な変わり身の早さで目覚めた。
「ああ、待たせて悪かったな」
「ごめんね、寝てたみたいだねー、なんだか安心しちゃって」
ぱさりと落ちたジャージを拾い、泰宏がハンガーにかける。
「ねえ、その壁の女の子……なに?」
「ああ、これはな……今をときめくVTuber『漣カレン』ちゃんだ!!」
ばっと泰宏が何かのポーズを取るが瑠宇にはそれは分からなかった。
「VTuber……?このこが?」
「瑠宇もYouTuberは何人かお気に入りいるだろ?」
「まあ、うん」
「それが俺には漣カレンちゃんなんだ。推しだ、大好きだ!!中学から推してはいたが本格的にVTuberアイドル活動を始めだしたんだ!」
豹変した泰宏の様子に目を白黒させながらも瑠宇は話についていこうとした、だがそっからは知らない単語やネットスラングのオンパレードで、正直ついていけなかった。軽く引きさえした。
「えーと…………漣カレンについてはわかった。でも、あのデートは?あの子は誰?」
ようやく本題に切り出せた。
泰宏はノーパソを開き、とあるファンサイトを瑠宇に見せた、それは漣カレンのファンクラブサイトだった。
「この、一番目のシロクマさん。それがあの彼女だ。カレンちゃんのファン第一号。二番目が俺だ」
あれはデートではなく、俺のライブチケの当選確認と、あそこのカフェコラボの下見の為だ。
と泰宏は語った。
曰く、カレンちゃん親衛隊であり恋愛感情はないんだと。
それを聞いて瑠宇は体から力が抜けた。
「なあんだー………そうだったんだあ………」
「引いただろ、さすがに」
泰宏はノーパソを勉強机に置き、それにまだあるんだと言葉を付け加えた。
「何が?」
「………俺は、お前を下卑た目で見ていたやつらの顔を覚えたから。仕返ししてやろうと思っていたんだ。お前が嫌がろうとも」
瑠宇の目を見れずに泰宏は傍らに、距離を空けて座る。
瑠宇はなんで?と枕を抱えたまま首を傾げた。
「………お前が大事だから。守りたいと思ったから」
ぼそりと呟く泰宏の言葉に、瑠宇はぷっつりときた。
脳細胞血管が一本切れた気がした。
「……オレ、守られるほど弱くねえよ?」
「でもだな……っ」
「女の子でもない……っ!!」
瑠宇は泰宏の足を払い、浮いた所をベットに力強く押し倒す。
勢いのままにベットが跳ねて軋み、グッズがいくつか転がり落ちた。
思わずグッズの行方を見る泰宏の両襟を掴み、むりやりこちらに向かせると瑠宇は思い切り口付ける。
「んっ!?」
泰宏の目が見開き、瑠宇をどかそうと試みるが、瑠宇は上からどかなかった。
「ずっと、ずっとこうしたかった、ヒロ……ねえ、オレのものになってよ」
瑠宇が恭宏の動きを制するように頬に触れ、耳、首筋へと指を滑らしていく。
恭宏はその動きに肩を震わせる。
「る、」
「あは、びっくりしちゃって可愛い……ね、ヒロの良さは、オレが1番よく知ってるし、今更誰にも渡さない。……だからさ、これから覚悟してね?全力でヒロを落とすから」
にっこりと微笑む瑠宇は、女の子よりも可愛く、そしてどの男よりも漢らしかった。
それこそ恭宏の醜いエゴなど必要ないぐらいに、守る必要などどこにもない程に美しくもかっこいい。
―――ああ、俺はこいつのどこを見ていたんだろうか……。
恭宏は瑠宇に2回目のキスを奪われつつ、自分からも瑠宇の肩に手を回した。
瑠宇の熱意に絆された形にはなったが、泰宏は嫌がることはなかった。
2回目のキスは、とうに親愛を越えた恋情に焦がれ焦らされ続けたキスだった。
恭宏は見開いたままの瞼をゆっくり閉じ甘く熱い唇を受け入れた。
泰宏のファーストキスは、瑠宇という幼なじみだった。