急いで昼飯を食べ終えた俺は、友人二人に「お腹が痛いからトイレに篭る」と嘘をついて教室を出た。
落ち合う場所はその日によってまちまちだ。今日は図書室内にある資料準備室。高嶺曰く、ここを使えるのが図書委員の特権らしい。
先に準備室にいた高嶺は、パイプ椅子に座って分厚い本を読んでいた。
日本ではあまり見ない、ペーパーバックというタイプの本だ。タイトルも英語で書かれている。
(こんなの反則だろ)
イケメンで運動ができて、更に昼休みに英語の本を読むような知的ぶり。
設定モリモリすぎて、少女漫画のヒーローも真っ青だ。
「英語の本? すごいね」
「ティーン向けの難しくない本だけどね。向こうにいた時にシリーズ途中まで読んでて、先が気になって図書室で買ってもらった」
「ふぅん。俺でも読めるかな」
「のの、真面目に授業受けてるし読めると思う。一巻からあるよ」
これまで英語の本に興味なんてなかったのに、俺は図書室を案内され、勧められるがまま一巻を借りることにする。
高嶺のお勧めの本が少し気になった。英語の勉強をするのにも丁度いい。ただそれだけだ。
「コラボカフェって何の?」
貸し出し対応をしてくれている高嶺に尋ねると、彼は「ちょっと待って」と言ってスマホを操作し、検索画面を見せてくれる。
「ほら、これ。かぶりネコのコラボカフェ。ののは興味ないだろうけど、奢るから付き合ってほしい」
この前、高嶺がゲーセンでとっていたぬいぐるみのキャラだ。かぶりネコという名前は初めて知った。
どうやら、そのキャラクターをイメージしたフードやドリンクを提供する、コラボカフェが期間限定で開催されるらしい。
男二人で行くには些か可愛すぎるコラボカフェな気もしたが、他に誘える人がいないのだろうと思って頷く。
「いいよ。奢りとかなくていいし、池袋ならついでにリーンの公式ショップ寄りたい」
「奇遇だな。俺も公式ショップに寄りたいと思ってた」
二人は顔を見合わせて、ふふっと微笑んだ。
「そういや天丼さん、前から行きたいって言ってたね」
「そうそう。いつもオンライン購入だったから。ののが行ったっての聞いて、行ってみたくて。再来週が楽しみだな」
そう言われて、俺は「そうだね」と珍しく素直な感情を口にした。
「今日、ののから誘ってもらえて嬉しかった」
「迷惑じゃなかった?」
「そんなわけあるはずないだろ。ののたちが教室で楽しそうに喋ってるのを見て、本当はずっと混ざりたいと思ってた」
高嶺はじっと俺を見つめている。
その視線がやけに熱っぽくて、恥ずかしいのに目を逸らせなくて、沸騰したかのように全身の体温が上がっていくのを感じる。
突然、図書室の扉がガラリと開いた。
「あー! 柊、教室いないと思ったらここにいたんだ!」
俺はカウンターから奪うようにして本をとり、クラスのギャルっぽい女子の横をダッシュですり抜ける。
大丈夫。本を借りに来た生徒と、その対応をする図書委員にしか見えなかったはずだ。
ちなみに、教室に戻った俺は、友人二人に「熱があるんじゃないか? 帰った方がいい」と心配されたのだった。
落ち合う場所はその日によってまちまちだ。今日は図書室内にある資料準備室。高嶺曰く、ここを使えるのが図書委員の特権らしい。
先に準備室にいた高嶺は、パイプ椅子に座って分厚い本を読んでいた。
日本ではあまり見ない、ペーパーバックというタイプの本だ。タイトルも英語で書かれている。
(こんなの反則だろ)
イケメンで運動ができて、更に昼休みに英語の本を読むような知的ぶり。
設定モリモリすぎて、少女漫画のヒーローも真っ青だ。
「英語の本? すごいね」
「ティーン向けの難しくない本だけどね。向こうにいた時にシリーズ途中まで読んでて、先が気になって図書室で買ってもらった」
「ふぅん。俺でも読めるかな」
「のの、真面目に授業受けてるし読めると思う。一巻からあるよ」
これまで英語の本に興味なんてなかったのに、俺は図書室を案内され、勧められるがまま一巻を借りることにする。
高嶺のお勧めの本が少し気になった。英語の勉強をするのにも丁度いい。ただそれだけだ。
「コラボカフェって何の?」
貸し出し対応をしてくれている高嶺に尋ねると、彼は「ちょっと待って」と言ってスマホを操作し、検索画面を見せてくれる。
「ほら、これ。かぶりネコのコラボカフェ。ののは興味ないだろうけど、奢るから付き合ってほしい」
この前、高嶺がゲーセンでとっていたぬいぐるみのキャラだ。かぶりネコという名前は初めて知った。
どうやら、そのキャラクターをイメージしたフードやドリンクを提供する、コラボカフェが期間限定で開催されるらしい。
男二人で行くには些か可愛すぎるコラボカフェな気もしたが、他に誘える人がいないのだろうと思って頷く。
「いいよ。奢りとかなくていいし、池袋ならついでにリーンの公式ショップ寄りたい」
「奇遇だな。俺も公式ショップに寄りたいと思ってた」
二人は顔を見合わせて、ふふっと微笑んだ。
「そういや天丼さん、前から行きたいって言ってたね」
「そうそう。いつもオンライン購入だったから。ののが行ったっての聞いて、行ってみたくて。再来週が楽しみだな」
そう言われて、俺は「そうだね」と珍しく素直な感情を口にした。
「今日、ののから誘ってもらえて嬉しかった」
「迷惑じゃなかった?」
「そんなわけあるはずないだろ。ののたちが教室で楽しそうに喋ってるのを見て、本当はずっと混ざりたいと思ってた」
高嶺はじっと俺を見つめている。
その視線がやけに熱っぽくて、恥ずかしいのに目を逸らせなくて、沸騰したかのように全身の体温が上がっていくのを感じる。
突然、図書室の扉がガラリと開いた。
「あー! 柊、教室いないと思ったらここにいたんだ!」
俺はカウンターから奪うようにして本をとり、クラスのギャルっぽい女子の横をダッシュですり抜ける。
大丈夫。本を借りに来た生徒と、その対応をする図書委員にしか見えなかったはずだ。
ちなみに、教室に戻った俺は、友人二人に「熱があるんじゃないか? 帰った方がいい」と心配されたのだった。