私は百目鬼樽吉。百目鬼財閥の元当主だ。
当主から早い段階で身を引き隠居生活をしていたが妻を亡くしてから暇つぶしにと百目鬼関連会社とは違う一般会社に「吉田」と偽名を使い勤めはじめた。
百目鬼ノ苗字はなかなか珍しいのでバレないように財閥の力で偽名で通るようにした。

百目鬼関連会社とは違いなかなか面白かった。
働き始めて数年後に「伊澄澪」という女子社員が就職してきた。

とても真面目で仕事も出来て気づかいもできる社員だったが妙に質素すぎた。
お弁当内容もだが昼食を食べず水やお茶だけの日や副業したいと呟くのだ。
会社全体の雰囲気は良いが、副業禁止で給料は良くないが生活上不便はないくらいは出ているはずなのに何かやりたいことがあるんだろうか？

何かあるのではと気になっていたが滅多に人が階段で泣いていた。
思わず声を掛け事情を聞くと家族から虐げられ、給料のほとんどが妹さんに取られてしまうんだとか。

怒りを感じたがあくまで他人、ただの社員同士にすぎない自分に出来るのは話を聞いたり、お菓子など内緒で渡したりするくらい。


「私、吉田さんと結婚したいです…」そんな発言をした澪にふと考えた。

彼女には愛情が必要なのでは？と。

百目鬼家は一度愛した相手には執着心が強く一生愛を注ぐ血筋を持っている。特に男はそれが出やすい。

孫は「聖臣」「和彦」の2人。
聖臣は変装してまで徹底に避けるほどだったため絶望的だが、和彦は愛を求めヤンチャをしているから愛を求める同士、澪ちゃんと合うかもしれないとお見合いを勧めた。

恋愛や結婚が幸せとは限らないがいい刺激になってくれればと。
しかし澪ちゃんの報告だと和彦が馬鹿をやらかし上手く行かないようだった。


その後、彼女は休職してしまったが、息子の和臣から女性嫌いの聖臣が結婚したと知り驚いたが、相手が澪ちゃんだと知り更に驚いた。
家族が澪ちゃんを身売りし聖臣も子供を産ませる道具として利用していることに頭をかかえた。

部下に探らせると聖臣はもちろん和彦共に上手くやっていて安堵した。


和臣から聖臣が結婚したと言ったのは口うるさい連中から口止めの方便だったが正式に婚姻届けをだし澪ちゃんと夫婦になった。

聖臣のピリピリした雰囲気が温和され、和彦のヤンチャを完全に止めた澪ちゃんは本当に凄い。


妻を亡くしても生前と変わらず愛し続けている私も大概だが、百目鬼家の血筋は良くも悪くもどうしょうもないか。


「私たちの家族になってくれてありがとうね」
澪ちゃんに感謝すると共に澪ちゃんと家族の一員になってくれた事が嬉しくて心からの言葉だ。

ウェディングドレスを着て聖臣と一緒に歩く姿は幸せそのものだった。
聖臣は百目鬼の血筋が濃いようだから愛が重く苦労することもあるだろうが…




和彦は失恋してしまったが表面上は何事もなかったかのようにしているが内心では失恋の傷が深い。

同じ部署の皆川さんを紹介してみようかね。