入学式翌日に開かれた、入学生のためのオリエンテーションと交流会で、僕は半年間抱き続けていた夢を諦めざるを得ない状況になったのです。それは、入部しようと決めていたサッカー部が、人数不足により活動休止に追い込まれていたことです。先が思いやられたと思っていた矢先、今度は希望を持てる状況になったのです。それは、神楽くんがBL・GL同好会というものを立ち上げたことにあります。

僕は早々に入部を決め、入部届的なものも提出し、翌日から部員として神楽くんと一緒に活動していました。数日の間は、BLやGLにちょっとだけ興味のある数人の生徒が見学に来たのですが、誰も入部するには至らず、結局、僕と神楽くんだけの同好会として活動することになったのです。目立った活動はしておらず、漫画を読んだり、作品について語り合ったりするだけの、ただただ楽しい時間でした。

同好会を立ち上げた背景には、「サッカー部が無くなることで、受験に影響がでる」ということもあったそうですが、立ち上げ1番の理由は、「サッカー部が無いと、那月が入部先に困ると思ったから」というもので、すべて僕のためだったのです。その話を訊いたときには、男気溢れる行動と、その行動力に惹かれ、胸が熱くなりました。そして僕は、神楽くんのことが男として好きだと思えたのです。

 放課後に訪れる2人だけの時間と空間。僕らはここで互いの仲を深めていきました。寮内では決してできない話もしたし、自分たちの過去の話(僕が父子家庭で育った理由とか、神楽くんの腕になる傷痕の話)とか、あとは男好きで困ると思うことなど、とにかく、自分たち意外誰も部屋に居ない現実を良いことに、自由気ままに過ごしていたのです。そうした時間を過ごす中で、僕は次第に、神楽くんのことを、こう見るようになったのです。男として憧れの人でもあるし、恋愛対象として接することができる、と。このことは、僕にとって大きな進歩でした。

思い返してみれば、僕は幼少期から男子の更衣に興味があったり、好きな女子のタイプを訊かれて困り果て、結局は好きな男子のタイプを答えていたり、同じ年齢ぐらいの男性と行為を持ちたいと思っていたりしたので、すんなりと自分がゲイであることを受け入れられたし、納得することができました。そして、僕がゲイであることを、8月に学校近くで開かれる夏祭りに、神楽くんと行った際に直接伝えようと決めたのです。