*
「あ、神楽くん、僕です。那月です」
「ハハッ、分かってるよ。で、どうした? 何かあった?」
「あの、ご報告したいことが2つあって」
「報告? 2つも?」
「はい!」
「声からすると、嬉しい報告とみてとれそうだな」
「はい! エヘヘ、2つともハッピーなことをお届けできるかと」
「おう、じゃあ、1つずつ教えてくれるか?」
「まずですね、このたび、僕、柿田那月は、無事に高校を卒業することができました」
「おめでとう! よかったな」
「ありがとうございます!」
「2つ目も、早く教えろよ~」
「はい、2つ目はですね、僕、柿田那月、神楽くんと同じ大学、同じ学部に無事合格することができました!」
「おおっ、それはお祝いしなきゃだな」
「えっ、お祝いしてくれるんですか!?」
「当たり前だろ?」
「えっ、どんなことしてくれるんですか?」
「それは・・・、会ってからのお楽しみだな」
「え~」
「でも、ほんと、合格おめでとう。俺も嬉しいよ」
「僕もです! 合格もできたし、卒業もできたので、これでようやく神楽くんと一緒に大都会、東京で暮らせますね!」
「へへへっ、だな。んで、いつこっちに来るんだっけ?」
「3日後の土曜日、11時過ぎの便で行きます」
「そうか。じゃあ駅まで迎えに行こうか? 道分からないだろ?」
「でも神楽くん、その日バイトがあるんじゃないですか?」
「平気平気。仮病使って休むからよ」
「そんな・・・、そこまでしなくても」
「いいのいいの。この世に、柿田那月よりも大切なものはないんだから」
「えっ」
「俺がどれだけ那月のことを待っていたことか」
「それは、僕もです。1秒でも早く神楽くんに会いたいです」
「俺も。あ、じゃあさ、今から行ってもいいか?」
「えっ、こっちに来るんですか? え、バイトは?」
「えへへへ」
後ろから聞こえてくる軽やかな足音。軽快な足取り、まさか・・・・・・、
もふっと抱きしめられた。スパイシーな香りがふんわりと鼻を掠める。
「那月!」
「神楽くん!」
「待ちきれなくて、来ちゃった」
「神楽くんっ!」
「会いたかった、ずっとずっと。俺1人で寂しかったんだからな!」
「僕だって、ずっとずっと寂しかったですよ!」
「はははは」
「えっ、まさか、これがさっき言ってた、お祝いじゃない・・・ですよね?」
「そうだって言ったらどうする?」
「え~、それはちょっと困るって言うか・・・・・・、嫌です、フフッ」
「はははっ、そんな、会いに来たことがお祝いなわけないだろ?」
「ですよね。じゃあ、一体何を――」
不意にぎゅっと強く抱き寄せられた体。青々とした空の下、2人は強く強く抱きしめ合い、そして唇を重ね合う。小脇に咲く沈丁花の煌めくような甘い香りに包まれる中で―――
*
少年だった那月が、神楽を追いかけて男子寮ワンダーランドに入寮し、おしゃべりな先輩や、女子からモテモテな先輩、ちょっと狂気じみた先輩など、様々なキャラクターの青年たちと出会いながら、高校3年間を過ごしてきた。再び神楽を追いかけて。そんな那月の物語は、続いて行く。不思議の国のアリスみたいに。
「あ、神楽くん、僕です。那月です」
「ハハッ、分かってるよ。で、どうした? 何かあった?」
「あの、ご報告したいことが2つあって」
「報告? 2つも?」
「はい!」
「声からすると、嬉しい報告とみてとれそうだな」
「はい! エヘヘ、2つともハッピーなことをお届けできるかと」
「おう、じゃあ、1つずつ教えてくれるか?」
「まずですね、このたび、僕、柿田那月は、無事に高校を卒業することができました」
「おめでとう! よかったな」
「ありがとうございます!」
「2つ目も、早く教えろよ~」
「はい、2つ目はですね、僕、柿田那月、神楽くんと同じ大学、同じ学部に無事合格することができました!」
「おおっ、それはお祝いしなきゃだな」
「えっ、お祝いしてくれるんですか!?」
「当たり前だろ?」
「えっ、どんなことしてくれるんですか?」
「それは・・・、会ってからのお楽しみだな」
「え~」
「でも、ほんと、合格おめでとう。俺も嬉しいよ」
「僕もです! 合格もできたし、卒業もできたので、これでようやく神楽くんと一緒に大都会、東京で暮らせますね!」
「へへへっ、だな。んで、いつこっちに来るんだっけ?」
「3日後の土曜日、11時過ぎの便で行きます」
「そうか。じゃあ駅まで迎えに行こうか? 道分からないだろ?」
「でも神楽くん、その日バイトがあるんじゃないですか?」
「平気平気。仮病使って休むからよ」
「そんな・・・、そこまでしなくても」
「いいのいいの。この世に、柿田那月よりも大切なものはないんだから」
「えっ」
「俺がどれだけ那月のことを待っていたことか」
「それは、僕もです。1秒でも早く神楽くんに会いたいです」
「俺も。あ、じゃあさ、今から行ってもいいか?」
「えっ、こっちに来るんですか? え、バイトは?」
「えへへへ」
後ろから聞こえてくる軽やかな足音。軽快な足取り、まさか・・・・・・、
もふっと抱きしめられた。スパイシーな香りがふんわりと鼻を掠める。
「那月!」
「神楽くん!」
「待ちきれなくて、来ちゃった」
「神楽くんっ!」
「会いたかった、ずっとずっと。俺1人で寂しかったんだからな!」
「僕だって、ずっとずっと寂しかったですよ!」
「はははは」
「えっ、まさか、これがさっき言ってた、お祝いじゃない・・・ですよね?」
「そうだって言ったらどうする?」
「え~、それはちょっと困るって言うか・・・・・・、嫌です、フフッ」
「はははっ、そんな、会いに来たことがお祝いなわけないだろ?」
「ですよね。じゃあ、一体何を――」
不意にぎゅっと強く抱き寄せられた体。青々とした空の下、2人は強く強く抱きしめ合い、そして唇を重ね合う。小脇に咲く沈丁花の煌めくような甘い香りに包まれる中で―――
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少年だった那月が、神楽を追いかけて男子寮ワンダーランドに入寮し、おしゃべりな先輩や、女子からモテモテな先輩、ちょっと狂気じみた先輩など、様々なキャラクターの青年たちと出会いながら、高校3年間を過ごしてきた。再び神楽を追いかけて。そんな那月の物語は、続いて行く。不思議の国のアリスみたいに。



