夕空が、夜を連れて来るのが早くなった。
 耳を塞ぎたくなるほどにうるさかった蝉の鳴く聲が、今はもう、しない。

 みんな、死んでしまったのだろうか?

 蝉の命は短い。長い間土の中で過ごして、ようやく表の世界へと飛び出して来たのに、たったの七日しか生きることができないんだ。
 なのに、ただ毎日、ひたすらに鳴いて、鳴いて。
 楽しいことはあるのか?
 悔しい思いはするのか?
 嬉しい、悲しい。そんな気持ちを持てるようなエピソードを、この七日間のうちに体験出来るのだろうか?

 人生をギュッと凝縮されて、何に感動していいのかもわからないまま、尽きる命。

 可哀想だ。そう思っていた。

 だけど、その限られた時間を、誰よりも一生懸命生き抜くことが大事なんだと、君は教えてくれた気がする。