* * *
持ってきた一通の手紙をある人の机の上に置き、もう一通はまだスカートのポケットに忍ばせて、私は屋上にやって来た。
全てを終わらせるなら、やはり、全てが始まったここがいいと思ったから。
『許すけど、でもその代わり、一つだけお願いを聞いてほしいの』
あの日した約束を、私はちゃんと覚えている。
『そう、お願い。いつかこの先、私がレイにお願いしたら、そのお願いを聞いてくれるって、約束してくれない?』
あの日の約束の意味を、私はちゃんとわかっている。
『──約束、守ってね』
それが呪いと言われようが、エゴと言われようが、構わない。私は私のためだけに、この約束をしたのだ。
「レイ、待ってるよ」
まだ暗い夜の中で、私はまだ来ない夜明けを待つ。