七月二十一日。深夜零時。
「……でーきた、っと」
 私は書き上げた三枚の手紙を手に取った。
 一枚はこの部屋の机の上に、残り二枚はスカートのポケットに入れて、玄関へと向かう。
「──バイバイ、お父さん、お母さん」
 少し感傷的な気分になったけれど、それを振り払って私はドアを開けた。
 夜の街を歩く。真っ暗な空の下、途中で見覚えのある家を見つけて、立ち止まる。
「……君枝さん、元気にしてるかな?」
 君枝さん──少し前に出逢ったお婆さんのことを、私は思い出していた。