* * *
ガタン、と扉が閉められる。瞬間、俺は壁に背中を預けた。顔を片手で覆い、天を仰ぐ。
「──どうすりゃ、良かったんだ」
絞り出した声は、思ったよりもずっと弱々しく、情けなく聞こえた。
彼女の親友が亡くなってから、どんどん顔色が悪くなっていく怜香のことが、ずっと心配だった。ここ最近はさらに、その顔色の悪さに拍車がかかっていた。だから、心配で、少しでも力になりたくて、無理やり引き留めてまで話をしたのに。……何事も、上手くいかないものだ。
どうするのが正解だったのか、それはわからない。
ただ、一つだけ、はっきりとわかるのは。
──自分の不用意な発言が、怜香を傷付けたということだけ。
「……どうすれば、お前にまた笑ってもらえるんだろうな」
俺は、顰めっ面しか見せなくなった幼馴染に思いを馳せた。