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俺の青春は、全てバレーに埋め尽くされていた。
バレー部キャプテンとして、エースアタッカーとして、バレーに打ち込み、バレー最優先で生きていたと言っても過言ではない。
仲間が繋いでくれたボールを打つ。点が決まったら一緒に喜ぶ。練習が辛い時や、思うように動けない自分が不甲斐なくて悔し涙を流すこともあった。だけど、チームメイトとバレーをする時間が、何よりも好きだった。
そして迎えた、高校最後の大会。
県大会優勝して、全国に行こうと皆と誓った翌日。
乗り込んだバスがガードレールに突っ込んで、崖から落ちていく映像だけを憶えている。
そして、大会の会場にも辿り着けないまま。
──燃え盛るバスの中で、俺たちは死んだのだ。
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その後の記憶は朧気だ。気が付いたら高校の体育館にいて、自分が死んだということをわかっていながらも、認めることができずにいた。そんな中で無為な日々を過ごすうちに、段々自分が死んだ理由を忘れていった。忘れないと、壊れてしまいそうだったのだ。だって、どんなに願ったって、もう俺は生き返れない。大切だった仲間とコートに立つことも、二度とできないのだから。
そんな風に、騙し騙しこの世にしがみついていたが、小松怜香と西村茜に出会い、球技大会を見ることで俺は過去をゆっくりと思い出した。……そして、思い出すと同時に、堪らなくなったのだ。
どうして、俺はあそこに立てないのだろう。
どうして、俺はバレーができないのだろう。
どうして、俺は死んでしまったのだろう。
どうして、あいつらはのうのうとバレーができているのだろう。
どうして、どうして、どうして。
羨ましかった。憎たらしかった。妬ましかった。生きているあいつらが、バレーをできる奴らのことが。
ズルい、そう思った瞬間、身体に黒い何かが満ちていった。まるで醜い感情に呑み込まれるように、俺は理性を手放して、そして──。
倒れて動かなくなった男子生徒を目にして、俺は我に返った。
自分がやったのだと、認識した瞬間に手が震えだした。
「違う、俺、こんなことするつもりじゃ……。こんなことを、望んでいたんじゃ、ないのに──」
後悔の言葉は、誰にも届かずに。
俺は、自分の犯した罪に踞った。