六月十四日。昼休み、屋上。
青い空が眩しい。
もう日常になってしまったこの光景。梅雨の時期はまだ続いているが、雨の降っていない日にはこうして屋上を訪れる。幸い今年は梅雨もすぐに明ける予報だから、きっと屋上に入り浸る頻度も増すだろう。なかなかに風通しもいいし、誰も来ないから気が楽だ。
「レイはちっとも他の子と仲良くなろうとしないんだから。もう、私以外にも話しかけなきゃダメだよ?」
……口煩いお節介がいること以外は、本当に文句の付け所がないのだが。
硬いコンクリートに座り込んだ私を、仁王立ちした茜が見下ろしている。私は顔を上げて太陽を背に立つ茜を視界に映した。
「私は生きてる人間には興味ないっていつも言ってるでしょ? 他の子と仲良くするとか、どうでもいい」
「そんなこと言わずにさあ。あ、ほら、小久保君とか、仲いいんじゃないの?」
「何でここであいつの名前が出てくるんだよ。何を勘違いしてるのか知らないけどさ、あいつはただの腐れ縁。仲良くなんかないっつーの」
というか、本当にどうでもいい。誰かと、ましてや霊を見ることもできない人間なんかと仲良くする気なんて、私にはこれっぽっちもないんだから。
すると、茜は「えー」と口を尖らせた。
「そんなぁ……。あ、でも、私とは仲良くなったじゃん! だったら他の子とも仲良くなれるでしょ?」
「あんたと仲が良い? 何の冗談? 私はあんたと仲良くなった覚えなんてさらさらないんだけど」
「ひいっ、この、レイの薄情者ぉ~。私たち、どう考えても友達でしょー‼」
大袈裟な泣き真似をかます茜は無視し、私は屋上のフェンスに背中を預けた。そして、目を閉じる。
「ちょっと寝る。時間来たら起こして」
「はいはい、わかったよぉ」
まだ少し拗ねた声色で茜がそう答えたのを最後に、私の意識は閉ざされた。