思う存分眠った朔は高い陽の光で目が覚める。
「おはようございます、姫様。昨夜はよく眠れましたか?」
「おはよう、薫子。おかげでよく眠れた。ありがとう。」
「それは良かったです!今、朝餉を準備いたしますね。」
 身体を起こすだけで少し気怠い。無理して動きすぎたかもしれない。
 布団の横に一通の文が置いてあった。宛名は朔、差出人は書いてない。
「これは……?」
「?、あぁ、先程届いたのですよ。初めは澄桜様かと思いましたが、差出人が書いてなくて。」
 朔は躊躇なく開けていく。中には紙が一枚。

 朧姫様へ  
初めまして、僕は澄桜様より代筆を頼まれた兵士です。 
現在、隊は花街を抜け野営しています。
澄桜様から定期的に出すよう命じられています故、
またお会いしましょう。
今夜も星が綺麗ですね

 至って普通の文だが、朔は少し落ち込んだ。丸みを帯びた荒い文字、長い文、違う結びの言葉。いかにも澄桜の文では無い。
「男は皆、こんな結びをするのか?」
「教養がある方はするかもしれませんね。さ、朝餉ですよ。」
「ありがとう……」
 どこか引っかかるような、違和感を朔は感じていた。