**無職60日目(10月30日)**

心太朗は、今日は澄麗と一緒にお宮参りの準備をすることにした。赤ちゃんが産まれてからは、心太朗はバタバタする日々が続くことを察していたので、ある程度は決めておかないといけない。いや、正直言うと、どれだけ準備しても、赤ちゃんのペースには勝てないだろうなと思いつつも。

まずはお宮参りの日の食事をどこでするかという話になった。チェーン店での食事という案もあったが、澄麗の両親がわざわざ隣の県から来てくれるのだから、どうせならその土地の美味しいものを味わってもらいたい。心太朗は、ご当地を選ぶことで、「おもてなし」を強調する作戦に出た。「おもてなし」という言葉に内心ニヤニヤしている心太朗だが、実際は「いいとこ連れて行ったら、良い父親と思われるかな」とも思っていた。

そこで近くにある有名な神社を思い出す。澄麗と共に、実際にそのお店で食事をすることにする。お店に着いてメニューを見ていると、よもぎそば、おでん、ちらし寿司がセットになったサービスセットが登場した。心太朗は「うまっ!」と声を上げてしまったが、「庶民的」な味だと感じた。お店は堅苦しい印象もなく、何より生後1か月の赤ちゃんを連れて行くことを考えると、座敷があるのは大変ありがたい。心太朗は、赤ちゃんが泣き出したり、授乳したりとバタバタする姿を想像しながらも、「ここで家族みんなで楽しく食べる姿を思い浮かべるだけで幸せだ」と心の中でニヤニヤしていた。
食事が終わった後、賑わった参道を歩きながら、心太朗は澄麗の両親が楽しんでくれる姿を思い描いていた。もうここに決めた、と心太朗は胸を張った。

次は、お宮参りの写真撮影の下見のため、神社の近くにある写真館へ向かうことにした。心太朗は赤ちゃんの衣装を見て、思わず声を上げた。「これはかっこいいな!」と目を輝かせ、澄麗も「これも可愛いね!」と同調する。二人は、色とりどりの祝着や小物を見ながら、まるで子供のようにはしゃいでいた。

カッコよく可愛らしいデザインが並ぶ中で、心太朗は特に一着の衣装に目を奪われた。それは、鮮やかな朱色の着物で、金色の刺繍が施されていた。澄麗もその姿を見て、「この色は健一に似合いそう!」と嬉しそうに言った。健一の姿はまだわからないが、彼女の中ではイメージができているらしい。
二人は、写真館での撮影の日を想像しながら、楽しいひとときを過ごした。お店のお姉さんも、その楽しそうな姿に微笑んでいた。

その後、恒例の別行動となり、心太朗は「チョコザップ」に行くことに決めた。一方、澄麗はショッピングに行くことに。お互いの趣味や好みを楽しみつつ、約束の時間にまた集合することにした。

「じゃあ、後でね!」と元気に手を振りながら、心太朗はチョコザップへ向かう。一方、澄麗は買い物の楽しさに心を躍らせながら、街の中へと消えていった。

お互いの時間を潰した後、家に帰って澄麗と話す時間がやってきた。赤ちゃんとの対面が楽しみで仕方がない心太朗は、「お宮参りだけでなく、100日祝い、ハーフバースデー、初節句、お七夜なんてのもあるらしいぞ!」と、さも自分が知識人かのように語った。しかし、澄麗はもう既に調べ済みで、恥をかいた。

さらに、七五三や運動会のことを考え、心太朗は「これからが楽しみだ」と笑顔を見せた。働いている時には、こういった行事に参加できなかったであろう激務の日々を振り返りながら、家族を優先して良かったと心底思った。「夢が広がって、いや、広がりすぎて目が回るな!」と思いつつも、心太朗は心の中で「この幸せな日々がずっと続くといいな」と願っていた。

その瞬間、心太朗は赤ちゃんのために奮闘する父親の未来像を描き、笑いながらも心温まる思いで一杯になったのだった。