同窓会への誘いの連絡があったのは、一週間前の水曜日だった。
 連絡してきたのは亜紀子あきこだった。亜紀子は中学時代に一番仲の良かった友人だ。
 現在は私が上京してしまったせいもあり、会える機会は少なくなってしまった。
 それでも、年賀状のやり取りは、中学校を卒業してからも、毎年続いている。
 亜紀子はいまだに年賀状をパソコンで作成せずに、すべて手書きの年賀状を送ってくれる。
 その年賀状は、私の部屋の大切な物をしまっている木製の箱の中に、年代順に重ねて、輪ゴムでまとめて保管してある。
「久しぶりね。元気にしてるよね。来月の中旬頃に中学二年のときの同窓会をしようと思ってるんだけど、紗也さやは参加できるよね?」
 亜紀子はいつもそうだった。聞かれている側には、こちらが承諾する事を前提で聞いてくる。
「来月の中旬か……。多分、大丈夫だとは思うけど、今すぐには返事はできないよ。少し考えさせてもらえる?」
「そうなのー。来たくない理由でもあるの?」
「そんなんじゃないけど……。私は地元から離れて、誰とも会ってないし……。今さら、みんなには会いにくいよ……」
「久し振りだからこそ、みんなに会うべきだと思うよ。みんな変わったようで、変わってないよ。紗也は変わったでしょ? 東京に住んでるんだもんね。みんなに変わった姿、見せてあげなよ。それに、里村さとむらも来るみたいだよ」
 私の心臓はその名前を聞いて飛び跳ねた。
「里村君も来るのか……」
 電話越しでは聞こえないぐらいの声で言った。
 里村君は中学時代に一番仲の良かった異性だ。よく二人で一緒にいた。そのせいで、周りからはずいぶん疑われもした。
「今すぐには返事できないよ。なるべく早く返事するから。もう少し待っててもらえる?」
「わかった! いい返事期待してるからねー」
 そう言って、亜紀子は自分の用件だけを伝えて、あっさりと電話を切ってしまった。