ネット通販は優秀で、翌日にはもう商品が届く。そして甲斐も放課後やってくる。

 甲斐は漫画の続きだけでなく、他のものも勝手にポチっていた。
「なんだよこのでかい箱は……!」
「いーもの」
 詰め寄ると、甲斐は口の端ににやっと不適な笑みを浮かべる。
 いいもの? こういう奴らのいう「いいもの」ってなんだ? まさかもっと過激にえっちな漫画か!?
 密かに心臓を高鳴らせながら段ボールを開ける。中から出てきたのは、段ボールを縛る紐と、ラグと、でかいビーズクッションだった。
 甲斐は昨日潰して部屋の片隅に積み上げてあった段ボールをビニール紐でさっと縛り、廊下に出す。
 なるほど。
 いいものだ。
 久しぶりに対面した床にラグを敷く。クッションに並んで背を預けて漫画を読んだ。クッションは段ボールの五十六億七千倍くらいは快適で、漫画は今日も面白かった。
「……まさかここで泣かしてくる……?」
「続き、続き!」
 甲斐はまた続きをポチった。くどいようだが俺のスマホで。


 甲斐はいつも漫画と一緒になにかしらを頼む。最初のラグとビーズクッションに始まって、着心地のいいスウェットの部屋着とか、もこもこのスリッパとか、でかいダイオウグソクムシのぬいぐるみとかだ。
「勝手にもの増やすなよ!」
 それもグソクを。
 俺が食ってかかっても、甲斐は愉快そうに笑うだけだ。
「だってさびしーじゃん、この家」