「気に入らないのか、一成」

 笑いを含んだ榮の言葉が耳の中に入り込む。

「不満があるのなら、言いなさい。私に抱かれているその身体で」
「俺は……不満なんてないです」

 一成は酔ったような口調になる。

「……ただ、眩暈がしているだけです……貴方に抱かれて……」

 ――そうだ、俺は酔っているんだ。一成は冷ややかな自分に言い訳をした。自分でもどうしようもない気持ちが眩暈するほどに。貴方に、酔っている――

「そうか」

 榮は優雅に目を細めた。

「泊まっていきなさい……今夜はもう帰れないだろう」

 榮は一成の首筋に顔を寄せて唇を這わせる。

 一成はかすかに頭を振った。自分の肉体が何を欲しているのか、自身が一番わかっていた。