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 二学期終業式が終わり、体育館からぞろぞろと生徒が教室へ戻って行く。そのあとは掃除やHRがあって、お昼頃に学校は終わった。

「俺に会えないからって寂しがるなよ、矢野」

 どこまでも鳥羽は鳥羽らくて、

「じゃあまた三学期になー!」

 柳木は最後まで元気だった。

 そして、俺は生徒会室に立ち寄る。今日は作業はないけれど、最後のあいさつがあると言っていたからだ。

「じゃーみんな、次に会うのは年が明けてからだから風邪引かないようにね」

 会長からのあいさつで締め括られる。

 ──はずだったのに。

「ちょっと待て! これではいさよならーってか?」

 横槍を入れたのは、もちろん武田先輩。

「うん、そうだけど」
「はぁ? まじで忘れてるとかありえねー……」

 不満たっぷりに不貞腐れる武田先輩に、「忘れてるってなにを」と会長が首を傾げる。

「なにって今日は待ちに待ったクリスマスじゃん! そんなことも忘れたのかよっ!」
「いや、知ってるけど。それと今日はイブだから」
「じゃーなんでそんな冷静なんだよっ!」
「じゃあ逆になんで武田はそんなに激おこなの?」

 会長の口からひょんに現れた言葉によって気が抜けたのか、「げ、激おこ……?」と急激にクールダウンする武田先輩。その姿を見てみんなで顔を見合わせて笑った。

「そう、武田。さっきからすごい激おこじゃん。クリスマスに苦い思い出でもあるの?」
「いや、べつにそういうわけじゃねーけど……」

 口籠る武田先輩を見て、「あー分かった」と会長はわずかに笑みを漏らした。

「武田、クリスマスに一人で過ごさなきゃいけないのが寂しいんでしょ」
「……はあぁぁ?」
「寂しいなら寂しいって言えばいいのに。武田ってば素直じゃないね。夏樹もそう思わない?」

 クスッと笑った会長が、ふいに夏樹先輩に話を振るから先輩は一瞬困惑したけれど、

「ああ、そーだな。タケ、寂しいくせに素直になれない天邪鬼だもんな」

 夏樹先輩までもが武田先輩をからかいだす。

「えー、武田先輩寂しいんですか?」
「そうなんですか?」

 だから、一年までもがこうやってニヤニヤしだす。

 それを聞いた武田先輩は顔が赤くなる。

「ちっげーよ! べつに寂しくなんかねーし!」

 やっぱり素直にはなれないようで。

 天邪鬼な武田先輩。