◇

 テストが終わり、いつもの日常に戻る。
 そのため生徒会の活動は忙しさを増してきた。今日は朝からも少しやることがあるからと昨日の夜、会長から連絡が入った。

 俺はいつもより一本早い電車に乗った。車内は暖かくて、そして揺れが心地よくて、目を瞑っていたら危うく寝過ごしてしまうところだった。

「おはようございま──…ってあれ、まだ会長だけですか?」

 生徒会室に入ると、まだ会長以外の人は来ていなかった。

「おはよう。矢野くん早かったね。他のみんなはまだだよ」

 呆れたように肩をすくめて笑う会長。

 机の上には、プリントがいくつも広げられていた。

 すでになにかしてたのかな……。

 朝もそうだけれど、放課後も、生徒会室に行けば必ず会長はいる。

 いつ見ても山崎先輩は、完璧な人だ。完璧を絵に描いたような人だ。

「会長は、いつも何時に来てるんですか?」

 だから会長の日常がすごく気になったりもする。

「んー、活動にもよるけど基本は七時頃にはついてるかな」
「早いですね」
「まぁ、生徒会長やってるとなにかとすることあるからね」

 スポーツ万能で成績優秀で、教師からの信頼も厚く生徒からも頼りにされて、先輩が人よりも遅く生徒会室に来ることなんてまずない。誰よりも先にいて、誰よりも遅く帰る。

「大変じゃないですか?」
「んー、初めの頃は大変だったけどみんながいるからね。それに同い年の夏樹や武田もいるし」

 やっぱり大変だったんだ。

 それなのにその雰囲気さえ感じさせないのは、きっと会長の人柄の良さがあるからで。

「まあ、武田は面倒くさがりなところがあるからねぇ。でも場の雰囲気を和ませてくれるから助かってるところもあるけど」

 と、クスッと笑った会長。

 そこから仲の良さが滲み出ているようで。

「俺、会長のことすごく尊敬してます。山崎先輩が会長でよかったなってほんとに思ってます」
「あはは、矢野くんありがとう」

 笑い声も笑い方も、品があるようで。やっぱり山崎先輩は、次元が違う人みたいだ。

「俺も矢野くんがいてくれてよかったよ」

 と、優しい表情で微笑むから、嬉しくなった。

 きっと女子にモテるんだろうなぁ。

「そういえば矢野くん、夏樹と路線が一緒なんだったよね?」

 夏樹先輩のことを聞かれて、不覚にもドキッとしてしまう。

 ──矢野くんのことが好きだ。

 テスト終わりに公園で言われた。それも女装姿のときに。

「矢野くん?」

 会長の声にハッとする。