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 テスト期間中。一日目。

「なぁなぁ、さっきの数学どうだった?」

 柳木が俺の隣に座っている鳥羽の席へとやって来る。柳木賢太郎(やなぎけんたろう)。クラスメイトだ。

「もちろん完璧!」

 鳥羽は、余裕の笑みを浮かべて見せた。

「うっわ、まじで? ずりー」

 余裕の鳥羽に焦ったのか柳木は、不満を漏らした。

 鳥羽、頭良いもんなぁ。

 この前あった期末テストでは、全教科八十点以上だったし。

「矢野は?!」

 すると突然、柳木の顔がこちらへ向いた。

「矢野は数学どーだった?」
「え、俺は、まぁ……」

 あまり自信がなかったためゴニョゴニョと言葉を濁しながら目を逸らす。

 数学は苦手だ。特に公式を覚えるのが難しい。

 そんな俺を見て、ニヤニヤと柳木が笑うと、

「矢野、あんま良くなかったんだろ」
「なっ、べつにそういうわけじゃ……ただちょっと応用問題が難しかっただけで」

 俺が言い訳をしている間、うんうんと首を縦に振った柳木は、

「矢野が仲間でよかった」

 と勝手に決めつけると俺の肩に手をついて、まるで同士だとでも言いたげな表情を浮かべる。

「ちょっと、勝手に仲間にしないでよ! 柳木よりは頭良い方だから」
「えー、多分そんな変わんないって」
「いや、変わるから!」

 柳木と二人でくだらない言い合いをしていると、

「あのさ、そんなどんぐりの背比べみたいなことして虚しくならない?」

 横槍を入れた鳥羽の言葉に、「うぐっ……」と二人して言葉に詰まらせる。

 どんぐりの背比べ……

 たしかに、そんな感じかも。

「じゃあここは公平に記すために同レベルってことで!」

 気を取り直した柳木がそんなことを言うから、

「……いや、どの口が言ってるの」

 呆れたけれど、それ以上突っ込むことはしなかった。

 鳥羽の言う通り、どんぐりの背比べをしているみたいだったから。

「それより次、なんだっけ?」
「次は英語」
「うわー…! もっとやばいやつじゃん!」

 頭を抱えて絶望顔をする柳木は、

「なぁ鳥羽、教えて!」

 頭の良い鳥羽に秒で泣きついた。

「えー、どうしようかなぁ」
「頼むよ! 友達だろ!」

 切羽詰まったような柳木に、それを見てからかっておもしろがる鳥羽。

 俺の周りにいる友達は、少し個性的な人ばかりだ。

「次、英語かぁ……」

 数学よりはできるけど、得意ってわけでもない。でも最初の基本問題で点は取れるはず。