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 考えても考えても答えにたどりつきそうになかった俺は、考えることを諦めた。

 そのかわりに。

「……ねぇ、好きって何だと思う?」

 ある日の昼食中、友達に尋ねる。

「……は?」

 お箸で掴んでいた卵焼きはポロッと抜けて、お弁当の中に逆戻り。鳥羽は、思考停止したように俺を見つめたまま固まった。

 鳩に豆鉄砲食らったような顔してる。

 そうなるよなぁ……。

「やっぱりいいや」

 何もなかったように目を伏せそうとするが、

「──ちょっと待って」

 わざとらしく手を突き出すと、俺の言葉を遮るように声を荒げた鳥羽。

 俺はびっくりして、目をまん丸にしていると、少し顔を寄せた鳥羽が、

「その話、詳しく話して」

 俺の話に興味を持ったらしい。

「え、詳しく……? いや、やっぱりいい」
「なんで。矢野から言いかけたんじゃん」
「そうなんだけど、ちょっと言いにくいっていうか……」

 なんて言い訳をすればいいか分からずに口ごもっていると、

「分かったから、とにかく早く」

 さらにズイッと顔を寄せるから、これ以上は逃げられないと悟った俺は、仕方なく観念した。

 せめて〝好き〟の確認だけ。誰に言われたとか、そういうことは伏せておこう。鳥羽に言ったらややこしくなりそうだし。

「……す、好きってどういうことなんだろうなぁと思ってさ」

 男同士でこんな話題を話すことになるとは思っていなかった。

「好き?」

 一瞬鳥羽は困惑したあと、

「好きってラブ? ライクじゃなくて?」
「う、うん、ラブの方」
「それなら、好意を抱くってことじゃないの。もっと相手に近づきたいとか仲良くなりたいとか」

 気を取り直したように説明し始める鳥羽。

「あ、ああ、うん……」

 俺もそのくらいは知識にある。人を好きになったことはないけれど。

「あー、あとは精神的なつながりはもちろん、肉体的な関わりを持ちたいとか。一緒にいるだけでドキドキするとか」

 思い出したように淡々としゃべりだすが、ある言葉に反応した俺は、

「えっ、ちょっ……はぁ?!」

 分かりやすく動揺してしまう。

「顔、赤いけど」

 俺の顔は熱すぎる。

「……そうやって指摘するのやめて」

 自分でも顔が赤いのなんて把握済みだ。

 うあー、もうっ最悪。鳥羽に聞かなきゃよかった。ていうか、俺の想像以上の回答が現れるものだから、びっくりして。