「そんじゃあ!行こうぜ!!あいつの顔をしっかりと拝まないとな!!」
少しウキウキしながら、病院へと踏み込んだ隆一くんは、そんな呑気な言葉を吐きながら、病院のカウンターのお姉さんへと声をかける。
私はアズりんの隣で地面に敷かれているタイルを見ながら少しだけ歩いた。
起眞市総合病院の3階に霧矢くんはいるらしく、私たちはそのことを病院のお姉さんから教えてもらい、そして、霧矢くんの病室へ行くと、そこには、健気にいびきを立てて寝ている霧矢くんの姿があった。
「あ。こいつ寝てやがる…」
隆一くんが、せっかくお見舞いのメロン持ってきたのに…と言葉をこぼすと、私は、眠っている霧矢くんの顔を見る。
「なんか、全然元気そうだね〜」
「そうだな…特に何もなさそうだ。ま、元気ってことがわかってよかったよ。」
本当に元気なんだろうか…本当は強がってたりしないのか…
今の寝顔からは想像もできないけど、もしかしたらそう言うことがあるのかもしれない…
私はネガティブな時はとことんネガティブだ。
不幸なことだったらなんでも思い付いてしまう。
こんな想像、現実になってほしくないし、想像したくもない…
嫌な思考だけが頭の中を覆い尽くすと、私は不意に、涙が溢れそうだった。
「どうする〜?霧矢くん寝てるし、このメロンだけ置いて帰らない?バイトもあるしさ〜」
「え?ああ…そうだな…バイトがあるしな。森崎さんだけじゃ心配だからな。」
森崎さんとは私たちが通っているバイト先の店長だ。
「奏音ちゃんはどうする?残る?」
アズりんは私に気遣ってくれたのか、2択の質問をする。
涙がすぐにでも溢れ出そうなのを、グッと我慢して私は、「いや、残るよ!霧矢くんが起きるかもしれないしね!それにお見舞いに来たよって言ってあげた方が、安心するだろうしね!」
できるだけ、隆一くんには悟られないように元気な声で、後ろを向かずに、言った。
ただ、霧矢くんの方向だけを見て言った。
「うん、そうだね〜奏音ちゃんはここにいた方が良いかもね〜それじゃ、隆一くん!行こ!」
そう言いながらアズりんは、隆一くんの背中を無理やり押して、病室から出た。
「じゃ、また明日〜」
アズりんの声のあと、誰の声も響かない病室に引き戸式の扉が閉じられる音が響いた。
アズりんには本当には感謝の言葉しかない…
「ううっ…」
だってこうやって、誰にも気にせず泣けるんだから。
「ううっ…ああっ……あああああああぁぁっ……!!!!!!」
ねんねんころりよ おころりよ
奏音 はよい子だ
ねんねしな
優しいメロディーがどこからか聞こえた。
ねんねのお守りは どこへ行った
あの山こえて 里へ行った
里のみやげに なにもろた
でんでん太鼓に 笙しょうの笛
この声は懐かしいお母さんの声だ。
もう、聞くことのできないお母さんの声。
起きゃがり小法師こぼしに 振り鼓
起きゃがり小法師こぼしに 振り鼓
あんなことになるんだったら…喧嘩なんてするんじゃなかった…
「んん…」
目を開けると、すぐさま瞳の中には優しい温もりのこもった光が差し込んだ。
頭の一番上から後頭部にかけて少しだけ暖かい感触もする。
「あ、起きたか。」
「んん…」
薄暗い病室の窓の向こう。
霧矢くんは本を開いて、片手に本を持って、もう片方の手で、私の頭を撫でながら、読書をしていた。
「ふぇ!?」
私は霧矢くんの手が頭に乗っかっていたという事実と、うっかりと寝てしまったことに驚きを隠せず変な声を出してしまい、挙句果てには、霧矢くんから「なんだその声」と少し笑われてしまい、顔が赤くなってしまった。
「大丈夫か?俺が起きた時、すっごいうなされてたっていうか、本当、すごかったぞ…めちゃくちゃ泣いてたし」
「え?ほ…本当…?は…恥ずかしい…」
私は顔を霧矢くんの布団に反射的に埋めると、何か違和感を感じた。
「え?」
布団はとてもフカフカしていて、特に何もない。
けど…なぜか…違和感を感じた…
「どうした?」
なんだろう…
私はそっと布団を持ち上げる…
すると、掛け布団の下。
そこにはベットしかなかった。
「奏音、どうしたんだ?」
「え?いや…なんでも…………あれ?」
私は掛け布団にかかって見えていない、霧矢くんの、足のモモあたりの掛け布団を退かす。
出てきたのは、右足…のモモから先がない、不気味な足だった。
「へ…?」
「あー…バレちまったか…」
私は《《普通》》は足が存在している場所の布団を触ってみる。
布の感触だ…
これが示してるのは…
「実はさ…その…怪獣に襲われて体育館に来た時…上から降ってくるコンクリートが足に当たっちゃってさ…切断手術したんだよ…バレないかなーって思ってたんだけど…バレちまったか…」
「だ…大丈夫なの…?痛くないの…?」
「え?まあ、今は全然痛くないからな…大丈夫だ」
霧矢くんは表情一つ変えずに言ってみせた。
私にはそれが余計…我慢しているようにも見えた。
私は霧矢くんの大事な可能性を…奪ってしまった…
「ううぐっ…うあぁ…………」
「って…どうして奏音が泣くんだ!?」
「ああっ…………」
「あ…ちょちょちょちょい!!」
大切な人の可能性を…奪ってしまった…
「あああぁぁあぁあああぁっ………………」
すると頭に優しい感触が広がった。
暖かいし…何より優しい。
霧矢くんの手だ。
「え…えっと…少し前にアズリアがさ、奏音は撫でてあげると落ち着くって言ってたからな。落ち着くか?」
この人は一体どこまで優しいのだろうか…
「うあああぁああぁああああぁぁぁああああっっっ!!!!!!!!!!」
「落ち着いたか?」
「ぐすっ…ぐすっ…うん…」
「そりゃあ良かった…」
そういうと、霧矢くんは、ほっとしたように、ベットの背もたれに力を抜いて腰を全体重を預けた。
「…………霧矢くんはさ……ヒーローとか…憎んでないの?」
「え?憎むわけないじゃん。」
「え?」
霧矢くんはまるで、なぜそんなことを聞くの?と困惑した表情を見せる。
「俺の命を救ったヒーローを憎むわけないだろ?」
「そうなの…?でも足のこととかさ…」
「下手したら、足だけじゃなくて命も失ってたよ。ていうかさ!!死刑執行人って魔法少女の人!!!俺あの人かっこいいと思うんだよな〜!!!新人の癖して、1発で敵仕留める魔法を使うんだぜ?ロマンありすぎだろ!!!!」
なんだか…そう言われると少しむず痒い気がする…
そっか…
私は…大切な人の可能性は奪ってしまったのかもしれないけど…
大切な人の命…大切な人の未来は守れたんだ!!!!
「そういえばさー、なんか死刑執行人がすごい奏音の後ろ姿にめっちゃ似てたような気がしたんだけど…もしかして、エグゼキューショナーズだったり__」
「ちちちちち!!!!!違うよ!!!私全然そんな人知らないもん!!!!」
「え?でも…」
「っっっっっっ絶対に違うよ!!!!!!」
「お、おう…こんな否定されたの初めてだな…」
危なかった…霧矢くんに身バレするところだった…
でも…霧矢くんになら…私の秘密…
「まあ、流石に無いか…」
ぐふっ!!!!!!!!!!!!
奏音ちゃんの心に2000ダメージ!!!!!
心が砕けそう!!!!!!!!!!
「でも…どこか似てたんだよな…」
「えっと…どこが?」
「立ち方?」
え?立ち方?それだけ?
「死刑執行人…なんか、振り返った時があったんだけど、なんか、他の人のことを心配してるみたいで…その時の立ち方がすごい奏音だったなーって思ってさ…え?本当に奏音じゃない?」
霧矢くんは私に疑いの目を向けた。
これ…言った方が良いのかな…
でも…身バレするのは死に関係するかもしれないし…
だけど…霧矢くんになら…
「え…えっと、私は__」
ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!
次の瞬間、大きな地響きが夜空に響き渡った。
そして、ビル群を抜けた向こう側。
そこには大きな怪獣…この前に襲ってきたブラックモンスターのような怪獣が直立していた。
しかし、ブラックモンスターとは一味違う、赤いラインを皮膚の上に走らせて、真っ赤に染まった瞳をギラつかせている。
「奏音!!奏音!!!怪獣だよ!!!!怪獣!!!」
「うぉ!!!だ…誰だ?お前…」
バットタイミングで出てきたレンレンを私は、つかみ病室の外へと連れ出そうとしたが、レンレンは、私の手をひょいと避けると、私の腕を伝って頭の上にちょこんと乗った。
空気かと思うくらいに軽かったレンレンはニッコリと笑顔になりながら、「僕はレンレン!!!魔法少女の相棒なんだ!!!!」と言った。
「ま…魔法少女って…やっぱり奏音は死刑執行人なのか!?」
「わ…私は別に違くて…」
「え?そうだよ〜!!!最近、めちゃくちゃ奏音頑張ってるんだよ〜!!!!」
身バレは避けた方が良いって言ったレンレンは何処に行ったの!?!?
するとすぐに、私は、ベットの上にいる霧矢くんの両手が私の背中の後ろに回った。
「ふぇ!?!?」
暖かい感触と、心の温もり。
それを体全体で感じる。
「あわあわあわあわ……」
窓に映る私はとても赤くなっていてりんごのように顔が染まっている。
「かカカカカカカカカカカカカカカカカカカかかかか…かいじゅうううう…………」
「え?あ、そうか…奏音…行くのか?」
霧矢くんのように…守れる命…があるかもしれない…し…
「や…やっぱり行かないと…!!」
「そうか…そんじゃ、行ってらっしゃい。」
そういうと、霧矢くんは私のことを、もう一度抱きしめてから私を離して、笑顔になって、私のことを見送る…
引き攣った表情のまま、病室を出た私は、病院の廊下を走りながら、暑くなった頬を両手で押さえて…必死に悶えた…
霧矢くんに…霧矢くんにぃぃ………!!!!!
ひゃぁぁぁぁぁぁぁ……………!!!!!!!
しっかり乙女な少女の私は走っているからか、それとも霧矢くんの余波がまだあるのか…
どっちかわからないが、とても鼓動が早い。
そして、胸の中がむず痒い。
掻いても掻いても取れないようなむず痒さ。
それがとても、心地良い。
どうやら私は…恋というのが始まったのかも…
明日も来よう。
ここに。
霧矢くんに会いに。
私は病院の外へと出ると、魔法のステッキを取り出し、魔法少女のドレスへと変身した。
「よし!!頑張っちゃおうかな!!!!」
少しウキウキしながら、病院へと踏み込んだ隆一くんは、そんな呑気な言葉を吐きながら、病院のカウンターのお姉さんへと声をかける。
私はアズりんの隣で地面に敷かれているタイルを見ながら少しだけ歩いた。
起眞市総合病院の3階に霧矢くんはいるらしく、私たちはそのことを病院のお姉さんから教えてもらい、そして、霧矢くんの病室へ行くと、そこには、健気にいびきを立てて寝ている霧矢くんの姿があった。
「あ。こいつ寝てやがる…」
隆一くんが、せっかくお見舞いのメロン持ってきたのに…と言葉をこぼすと、私は、眠っている霧矢くんの顔を見る。
「なんか、全然元気そうだね〜」
「そうだな…特に何もなさそうだ。ま、元気ってことがわかってよかったよ。」
本当に元気なんだろうか…本当は強がってたりしないのか…
今の寝顔からは想像もできないけど、もしかしたらそう言うことがあるのかもしれない…
私はネガティブな時はとことんネガティブだ。
不幸なことだったらなんでも思い付いてしまう。
こんな想像、現実になってほしくないし、想像したくもない…
嫌な思考だけが頭の中を覆い尽くすと、私は不意に、涙が溢れそうだった。
「どうする〜?霧矢くん寝てるし、このメロンだけ置いて帰らない?バイトもあるしさ〜」
「え?ああ…そうだな…バイトがあるしな。森崎さんだけじゃ心配だからな。」
森崎さんとは私たちが通っているバイト先の店長だ。
「奏音ちゃんはどうする?残る?」
アズりんは私に気遣ってくれたのか、2択の質問をする。
涙がすぐにでも溢れ出そうなのを、グッと我慢して私は、「いや、残るよ!霧矢くんが起きるかもしれないしね!それにお見舞いに来たよって言ってあげた方が、安心するだろうしね!」
できるだけ、隆一くんには悟られないように元気な声で、後ろを向かずに、言った。
ただ、霧矢くんの方向だけを見て言った。
「うん、そうだね〜奏音ちゃんはここにいた方が良いかもね〜それじゃ、隆一くん!行こ!」
そう言いながらアズりんは、隆一くんの背中を無理やり押して、病室から出た。
「じゃ、また明日〜」
アズりんの声のあと、誰の声も響かない病室に引き戸式の扉が閉じられる音が響いた。
アズりんには本当には感謝の言葉しかない…
「ううっ…」
だってこうやって、誰にも気にせず泣けるんだから。
「ううっ…ああっ……あああああああぁぁっ……!!!!!!」
ねんねんころりよ おころりよ
奏音 はよい子だ
ねんねしな
優しいメロディーがどこからか聞こえた。
ねんねのお守りは どこへ行った
あの山こえて 里へ行った
里のみやげに なにもろた
でんでん太鼓に 笙しょうの笛
この声は懐かしいお母さんの声だ。
もう、聞くことのできないお母さんの声。
起きゃがり小法師こぼしに 振り鼓
起きゃがり小法師こぼしに 振り鼓
あんなことになるんだったら…喧嘩なんてするんじゃなかった…
「んん…」
目を開けると、すぐさま瞳の中には優しい温もりのこもった光が差し込んだ。
頭の一番上から後頭部にかけて少しだけ暖かい感触もする。
「あ、起きたか。」
「んん…」
薄暗い病室の窓の向こう。
霧矢くんは本を開いて、片手に本を持って、もう片方の手で、私の頭を撫でながら、読書をしていた。
「ふぇ!?」
私は霧矢くんの手が頭に乗っかっていたという事実と、うっかりと寝てしまったことに驚きを隠せず変な声を出してしまい、挙句果てには、霧矢くんから「なんだその声」と少し笑われてしまい、顔が赤くなってしまった。
「大丈夫か?俺が起きた時、すっごいうなされてたっていうか、本当、すごかったぞ…めちゃくちゃ泣いてたし」
「え?ほ…本当…?は…恥ずかしい…」
私は顔を霧矢くんの布団に反射的に埋めると、何か違和感を感じた。
「え?」
布団はとてもフカフカしていて、特に何もない。
けど…なぜか…違和感を感じた…
「どうした?」
なんだろう…
私はそっと布団を持ち上げる…
すると、掛け布団の下。
そこにはベットしかなかった。
「奏音、どうしたんだ?」
「え?いや…なんでも…………あれ?」
私は掛け布団にかかって見えていない、霧矢くんの、足のモモあたりの掛け布団を退かす。
出てきたのは、右足…のモモから先がない、不気味な足だった。
「へ…?」
「あー…バレちまったか…」
私は《《普通》》は足が存在している場所の布団を触ってみる。
布の感触だ…
これが示してるのは…
「実はさ…その…怪獣に襲われて体育館に来た時…上から降ってくるコンクリートが足に当たっちゃってさ…切断手術したんだよ…バレないかなーって思ってたんだけど…バレちまったか…」
「だ…大丈夫なの…?痛くないの…?」
「え?まあ、今は全然痛くないからな…大丈夫だ」
霧矢くんは表情一つ変えずに言ってみせた。
私にはそれが余計…我慢しているようにも見えた。
私は霧矢くんの大事な可能性を…奪ってしまった…
「ううぐっ…うあぁ…………」
「って…どうして奏音が泣くんだ!?」
「ああっ…………」
「あ…ちょちょちょちょい!!」
大切な人の可能性を…奪ってしまった…
「あああぁぁあぁあああぁっ………………」
すると頭に優しい感触が広がった。
暖かいし…何より優しい。
霧矢くんの手だ。
「え…えっと…少し前にアズリアがさ、奏音は撫でてあげると落ち着くって言ってたからな。落ち着くか?」
この人は一体どこまで優しいのだろうか…
「うあああぁああぁああああぁぁぁああああっっっ!!!!!!!!!!」
「落ち着いたか?」
「ぐすっ…ぐすっ…うん…」
「そりゃあ良かった…」
そういうと、霧矢くんは、ほっとしたように、ベットの背もたれに力を抜いて腰を全体重を預けた。
「…………霧矢くんはさ……ヒーローとか…憎んでないの?」
「え?憎むわけないじゃん。」
「え?」
霧矢くんはまるで、なぜそんなことを聞くの?と困惑した表情を見せる。
「俺の命を救ったヒーローを憎むわけないだろ?」
「そうなの…?でも足のこととかさ…」
「下手したら、足だけじゃなくて命も失ってたよ。ていうかさ!!死刑執行人って魔法少女の人!!!俺あの人かっこいいと思うんだよな〜!!!新人の癖して、1発で敵仕留める魔法を使うんだぜ?ロマンありすぎだろ!!!!」
なんだか…そう言われると少しむず痒い気がする…
そっか…
私は…大切な人の可能性は奪ってしまったのかもしれないけど…
大切な人の命…大切な人の未来は守れたんだ!!!!
「そういえばさー、なんか死刑執行人がすごい奏音の後ろ姿にめっちゃ似てたような気がしたんだけど…もしかして、エグゼキューショナーズだったり__」
「ちちちちち!!!!!違うよ!!!私全然そんな人知らないもん!!!!」
「え?でも…」
「っっっっっっ絶対に違うよ!!!!!!」
「お、おう…こんな否定されたの初めてだな…」
危なかった…霧矢くんに身バレするところだった…
でも…霧矢くんになら…私の秘密…
「まあ、流石に無いか…」
ぐふっ!!!!!!!!!!!!
奏音ちゃんの心に2000ダメージ!!!!!
心が砕けそう!!!!!!!!!!
「でも…どこか似てたんだよな…」
「えっと…どこが?」
「立ち方?」
え?立ち方?それだけ?
「死刑執行人…なんか、振り返った時があったんだけど、なんか、他の人のことを心配してるみたいで…その時の立ち方がすごい奏音だったなーって思ってさ…え?本当に奏音じゃない?」
霧矢くんは私に疑いの目を向けた。
これ…言った方が良いのかな…
でも…身バレするのは死に関係するかもしれないし…
だけど…霧矢くんになら…
「え…えっと、私は__」
ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!
次の瞬間、大きな地響きが夜空に響き渡った。
そして、ビル群を抜けた向こう側。
そこには大きな怪獣…この前に襲ってきたブラックモンスターのような怪獣が直立していた。
しかし、ブラックモンスターとは一味違う、赤いラインを皮膚の上に走らせて、真っ赤に染まった瞳をギラつかせている。
「奏音!!奏音!!!怪獣だよ!!!!怪獣!!!」
「うぉ!!!だ…誰だ?お前…」
バットタイミングで出てきたレンレンを私は、つかみ病室の外へと連れ出そうとしたが、レンレンは、私の手をひょいと避けると、私の腕を伝って頭の上にちょこんと乗った。
空気かと思うくらいに軽かったレンレンはニッコリと笑顔になりながら、「僕はレンレン!!!魔法少女の相棒なんだ!!!!」と言った。
「ま…魔法少女って…やっぱり奏音は死刑執行人なのか!?」
「わ…私は別に違くて…」
「え?そうだよ〜!!!最近、めちゃくちゃ奏音頑張ってるんだよ〜!!!!」
身バレは避けた方が良いって言ったレンレンは何処に行ったの!?!?
するとすぐに、私は、ベットの上にいる霧矢くんの両手が私の背中の後ろに回った。
「ふぇ!?!?」
暖かい感触と、心の温もり。
それを体全体で感じる。
「あわあわあわあわ……」
窓に映る私はとても赤くなっていてりんごのように顔が染まっている。
「かカカカカカカカカカカカカカカカカカカかかかか…かいじゅうううう…………」
「え?あ、そうか…奏音…行くのか?」
霧矢くんのように…守れる命…があるかもしれない…し…
「や…やっぱり行かないと…!!」
「そうか…そんじゃ、行ってらっしゃい。」
そういうと、霧矢くんは私のことを、もう一度抱きしめてから私を離して、笑顔になって、私のことを見送る…
引き攣った表情のまま、病室を出た私は、病院の廊下を走りながら、暑くなった頬を両手で押さえて…必死に悶えた…
霧矢くんに…霧矢くんにぃぃ………!!!!!
ひゃぁぁぁぁぁぁぁ……………!!!!!!!
しっかり乙女な少女の私は走っているからか、それとも霧矢くんの余波がまだあるのか…
どっちかわからないが、とても鼓動が早い。
そして、胸の中がむず痒い。
掻いても掻いても取れないようなむず痒さ。
それがとても、心地良い。
どうやら私は…恋というのが始まったのかも…
明日も来よう。
ここに。
霧矢くんに会いに。
私は病院の外へと出ると、魔法のステッキを取り出し、魔法少女のドレスへと変身した。
「よし!!頑張っちゃおうかな!!!!」