「今日…奏音来なかったな…」
俺、最上霧矢は学校の帰り道、とぼとぼと一人だけで帰り道を歩く。
住宅街の家々のコンクリの道を通り帰る。
道のりを通るのは一人で、行き先はなんの変哲もない、ただの自宅。

最近、怪獣被害とかひどいらしいし、何もないと良いんだけど…
と、ここでふと、空を見た。

空には細い雲がいくつも通っており、そこに太陽の光が反射して、良い塩梅に綺麗な景色を作っていた。
俺はポケットからiphonを取り出し、その空の景色をカメラの中に収めた。

すると、細い雲に混じって、白い光の様なものが流れてくる。
「ん?隕石?」
隕石の様なものは、こちらの方へ、地面へと向かって降ってくる様に見える。

「ん?あれ大丈夫か!?!?」
次の瞬間、光は数キロ離れた先の地面へと堕ち、ともに激しい爆発と光を放出する。

俺は襲いかかる爆風によろけながらも、顔をガードするように両腕をクロスする。
「な、なんだあれ!?!?」

光の放出が止まると、住宅街の家の向こうに居たのは赤い皮膚を纏い、口を大きく広げるまるで恐竜の様な見た目をした怪獣だった。

「あれは!?」

「グアアアアアアああああああああ!!!!!!!」

大きな雄叫びを吐き、鼓膜が破れそうになる。
そして、その赤い怪獣は、何やら口から赤い光の様なものを漏らすと、ボォウ!と赤い大きな火柱が怪獣の口の中から広がり、あたりを一気に真っ赤な火で埋め尽くす。
「え…えぐ…」
住宅街が一気に火によって燃やされ、全て焼き尽くされると、怪獣は少し移動する。
「そこの君!!早く逃げてください!!ここは被害範囲内です!」
後ろから声がしたので、踵を返すと、そこに居たのは、ファンシーなドレスに身を包んだ少女…って、え?
「ん?もしかして…霧矢くんですか?」

「Vさん!?」

そこの居たのは、ヒーローの魔法少女の格好をした、部活の先輩、Vさんの姿があった。

「参りましたね…まさか知り合いがいたとは…」

Vさんは住宅街の屋根に乗り、右手には魔法のステッキ、左手には魔法のホウキの様なものを持っていた。

「あまりこのことは誰にも言わないでくださいね!!!特に部活の後輩とかには!!!」

そう言うとVさんはホウキに乗って、怪獣のところへと向かって行った。

「ま…まじか…V先輩が…魔法少女…」


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目を開けると、光は無くなっていて、いつもの風景、起眞市に戻っていた。
でも、一つだけ違ったことがあった。

それは赤い鳥型の怪獣が起眞市の住宅街を火の海にしていたことだ。

「そ…そんな…!!あれを倒さないとなの!?」

「そうだね…難しいかもだけど…きっといけるよ!!!!奏音なら!!!」

私なら…行ける?そんなことあるのかな…
前回よりもレベルの高い怪獣。

そんなのを相手にできるかはわからない。
でも、魔法少女として、仕事を遂行しなければ、私は死んじゃうし、それにこれからもっと死者が出てしまうかもしれない。

私がやらないとなんだ!!!

「わかった…行こう!!!」
私は覚悟を決め、魔法のステッキを握る。

「奏音、その意気だよ!!」

魔法のステッキを頭上に掲げ、「変身!!」
魔法のステッキが光を放つと、魔法少女の衣装へと一瞬で変身する。

まるでどこかのお姫様の様な衣装を身に纏うと、レンレンが、「あ!」と空を指さした。

「あれが先輩の魔法少女って人?」

私が言いながら空を見上げると、真上に、魔法のホウキを乗りこなしながら地面へと近づいてくる人影があった。

そして、地面へ着地すると、その人は慌てた声で、「私は魔法少女連合、所属のヒーロー、Vです!援護に向かいましたって…奏音ちゃん?」

なんと、そこにいたのは、美術部の先輩。Vさんだったのだ。

「ぶぶぶぶ、V先輩!?な、なんでここに!?」

私は驚きのあまり、空いた口が塞がらない。

「か、奏音ちゃんこそ!!何故ここにいるんですか!?早く避難を…」

「待って待って!!この奏音がレベル18の魔法少女だよ!!!坂間恵留の代わり!!」

「れ、レンレンさん!?何故、奏音ちゃんに!?」

「わ、私…その…魔法少女になったの…ついさっき…」

「そう!!奏音は魔法少女になったんだよ!!!それより早く!!!」

レンレンは自分の頭も掻けなさそうなの小さな手で赤い皮膚の鳥型の怪獣の方向を指さすと、早く早く!と私たちを急かす。

「ううううん!!!!!この話はまた今度!!!早く怪獣を仕留めましょう!!!!私のホウキに乗ってください!!!!」

「え!?あ、はい!!!」

Vさんはホウキを横に浮かして、バイクに跨ぐようにして乗る。
Vさんはホウキの先端を握り、私はVさんを後ろから抱いて固定し、乗った。

自転車で二人乗りをするようにして二人が乗ると、Vさんは「しっかり捕まっててください!!!!」と言うと、とんでもない勢いで、まるで打ち上げ花火のように真上へと急上昇する。

「ぐあああああぁぁぁあぁあぁぁぁああぁ!?!?!?!?!?」

ああああ…目がぁ…目がぁ…

「奏音ちゃん!!気をしっかり!!!!」

「う…うぅ…って…うわあああああああああ!!!!!!」

気づくと私は、100m程だろうか。
足がすくむくらいに上空へと飛び立っていた。

ビル群と並びながら空中を飛び回る。
「さらに高度をあげます!!!捕まってください!!!!!」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいよー!!!!!!!」

ぐん!!とまたもや重力が襲いかかりながら、ビルの屋上よりも高い位置で飛んでいた。

「無理無理無理無理無理ですよ!!!!!!!!!!!」

「もう来ちゃったんです!!!!!行きますよ!!!!!!!!」

さらに速度を上げて、飛行機に乗っているかと錯覚させるくらいに圧力が掛かる。

「アババババババババ!!!!!!!!!!!!!」

目の前から来る風が口の中に勢いよく突撃し、口が閉じれなくなった。

「居ました!!!!!特定怪獣!!!!秩序保安委員会の名付けた名前では、黄昏の不死鳥(トワライトフェニックス)だとか!!!!」

そんなふざけた名前つけてないで他のヒーローとか派遣してよ!!!!!!!

見ちゃいけないものだと思うけど、下を見ると、高さを感じて足がすくむ。
でもそれよりも、赤い怪獣の周りの地面から火が巻き上がる方に驚きを隠せなかった。

黒く染まった地面が1キロ程広がる、焼け野原となった住宅街は、怪獣が居る所為で消防車も近寄れず、逃げ遅れた人がいたら多分やばい。

「ひ、酷い…」

「これは1000人ほどは被害が出ていそうですね…」

「そ、そんな!?」

「ですが…私たちが来なければ、もっと…下手すれば1万は死んでいたかもしれません…早く駆除しましょう!」

「で…でも私…」

住宅街を踏み躙りながら、トワライトフェニックスは移動しながら火を吐く。
Vさんはその怪獣の頭上を回りながら、蜂のように飛び回る。

「うわあああああああ……………た、高い……」

怖い…呼吸が…息が…できなくなりそうだ…

圧に耐えられない…そのことを考えてしまえばしまうほど…

怖くなる…

「奏音ちゃん。手が震えてますよ。」

「え?」

Vさんは私の、Vさんに抱きついている手を握りしめる。
その手は優しく暖かかった。

「大丈夫です。私がついてますから。例え奏音ちゃんが落ちたとしても、私がいる限り、死なせはさせません。」

「でも…」

「大丈夫…大丈夫です。息を整えて…」

はぁはぁはぁはぁ…はぁ…はぁ…はぁ…
すぅー…はぁー

「お、落ち着いてきました…ありがとうございます…」

「私に捕まっていてください!!!振り落とされないように気をつけて!!!」

すると、Vさんは一気にホウキを角度をつけて、右へと曲がる。
空中バイクに乗っているような感覚を味わいながら怪獣の頭の横を通り過ぎると、怪獣、トワライトフェニックスは、「グアアアアアアアア!!!!!!!」
と雄叫びを上げて、翼を広げる。

威嚇するように翼を広げたトワライトフェニックスは、辺りに爆風を広げて飛び立った。

「まずいです!!!!!トワライトフェニックスが飛び立ちました!!!!」

「え!?」

「グアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

「さらに速度を上げます!!!!!前傾姿勢になってください!!!!!」

Vさんの言葉を合図に私はまるでスポーツ選手が空気抵抗を減らすようにして前傾姿勢になる。
後ろを振り返ると、そこには30mほど後にトワライトフェニックスの姿があった。

「奏音さん!!!今です!!!!撃ち落としてください!!!!!!」

「で…でも…!」

「奏音さん!!!あなたならできます!!!自分を信じて!!!!」

自分を…信じて……

「わかりました!!!やってみます!!!!」

「ガアアアアアアア!!!!!!!」

狙いを付けて…今だ!!!!!

「メルトシンギュラリティ!!!!!!!」
私が、魔法のステッキを後ろから迫り来るトワライトフェニックスに向かって放った。

呪文後詠唱後、即座に魔法のステッキから光と共に灼熱の熱線が放たれる。
灼熱の熱線、メルトシンギュラリティは一直線に魔法の魔法のステッキの向く方向へと放たれたが、少しずれた所為で、トワライトフェニックスには掠りもしなかった。

「駄目!!!!できない!!!!」

「諦めず、もう一度!!!!」

そうだ…まだ…まだできる!!!!

まだ死んでいない…!!!!!私が生きてる限りまだ!!!!

「メルトシンギュラリティ!!!!!」
放たれた熱線、しかしトワライトフェニックスが危険と感じたのか、いきなり、トワライトフェニックスは高度を急に下げ、そして熱線を回避した。

「ん!!!!!知能がある!!!!」

すると、トワライトフェニックスの口の中が徐々に赤く光始める。

まずい。攻撃が来る!!!!!!!

「メルトシンギュラリティ!!!!!メルトシンギュラリティ!!!!!!」

私は何度も唯一の攻撃、メルトシンギュラリティを放ったが、空中戦ということもあって、1発も掠らない

当たれ!!!当たれ!!!

「メルトシンギュラリティ!!!!!!」

駄目だ…当たらない…

「もう駄目かもしれないです…」
私が涙ながらに言うと、すぐにVさんは「タイミングです!!!」と言った。

「奏音ちゃん!!!!!何事も、大事なことがあります!!!!!!今の場合、それはタイミング!!!!!今から私のホウキは高度を上げていきます!!!!なので、トワライトフェニックスは必ず、首の向きの関係から上へ向かおうとするはずです!!!!その高度を挙げている時に撃つんです!!!!翼でも胴体でもどこでも良い!!!撃つんです!!!当たればきっと、確実にトワライトフェニックスは墜ちます!!!!!!!!」

た、タイミング!!!!!

「今から高度をあげます!!!!奏音ちゃんは確実に落とせるように狙ってください!!!!!」

「は、はい!!!!!」

私は自分の脇から視線を通し、トワライトフェニックスの胴体を狙う。

ちょっとずつ高度が上がっていく。そして、それに釣られてトワライトフェニックスの高度も。

どうやらトワライトフェニックスはもう準備万端のようで、口から少しだけ火を漏らした。

「もう少し…もう少し…」

「グアアアアアア!!!!!!!!!」

もう少し…もう少し…
バサリバサリとトワライトフェニックスの翼を空気が持ち上げる。

そして、一瞬だけ、トワライトフェニックスの翼がピタリと止まった。
滑空の瞬間。

やるなら…今!!!!!!!
「メルトシンギュラリティ!!!!!!!!」

強力な光を放ちながら、熱に包まれた灼熱の熱線が魔法のステッキから放たれると、その熱戦は、トワライトフェニックスの翼に向かって一直線に向かい、そして、トワライトフェニックスの翼を貫通。
追加で、トワライトフェニックスの貫通した場所からクラスター爆発が起き、トワライトフェニックスは「ギャアアアアアアアア!!!!!!!!!」と泣き叫びながら雲の下へと消えた。

「や、やった!!!!!!!やりましたよ!!!Vさん!!!!!私やりました!!!!!!」
私が喜んでいると、トワライトフェニックスの最後を見ていたVさんが少し苦い顔をする。
そして、その顔は段々と焦りの顔へと…

「まずいです!!!!!もしかしたらまた、生きたまま街に墜落してしまうかも!!!!!追いましょう!!!!!!!」

「はい!!!」

魔法のホウキに乗った私たちは急下降し、トワライトフェニックスを追うといつの間にか起眞市に戻ってきた。

それも、燃やされた住宅街の周りへと。

「まずいですね!!!!!もしかしたら逃げ遅れた人たちのところに行ったのかもしれません!!!!!」

「そ、そんな!!!!!!!!」

「最高速度で行きます!!!!!!!しっかり捕まって!!!!!」

「へ、へぇ!?!?」