その瞬間、私たちの踏んでいる地面に魔法陣の様なものが刻まれると、その魔法陣から光が放たれ、私とレンレンは光の中に包まれる。

「こ、これは!?」

「これは転移魔法だよ!これで魔法少女連合の本部、イギリスに一瞬で行けるんだ!!!」

「魔法少女連合の本部ってイギリスなの!?」

「そう!!イギリスに魔法少女連合の本部があって、そこから世界の魔法少女を管理しているんだ!!もう少しで着くよ!!」

その言葉から1秒ほど経った瞬間、光が一気に周りへと散らばった。
強い光の中から解き放たれた私は、目の前の景色に唖然とする。

「ようこそ!!ここが魔法少女連合本部、魔法聖域(マジックサンクチュアリ)へ!!」

目の前に広がった大空間。
ショッピングモールの様に、真ん中は筒抜けになり、100mほど真上に太陽の様に照らす、一つの大きな電球の光。
直径100mほどはありそうな電球の光柱を囲むように、建てられた石像の通路が100階以上は並ぶ、大きな塔の様な場所。

「な…何ここ!?」

すると、入場口の様な壁に立っていた自分に一人の女性が近寄る。

「HELLO。こっちの言語で大丈夫でしょうか…?」

私は明らかに目の堀の深い女の人に少しだけ不安を覚えていたが、日本語で言葉を話され少しだけ安堵する。

「え…えっと…私…」

「やっほ〜エリス!ちょっとジェーニンに会いたいんだけど良いかな?」

「れ、レンレン様!?し、失礼しました!!!今すぐジェーニン様をお呼びいたしますので、もうしばらくお待ちください!!!!ほら、あなたたち…あの方を客室へ…」

エリスと言われた人物は、部下の人たちを私たちに付かせると、部下の人たちは迷うことなく、隣のエレベーターの様なものに私たちを案内する。

数百万円は使われていそう、装飾に目を奪われながらも、私は最上階のエレベーターが表示する最上階の100階へと到達した。

エレベーターの扉が開くと、真っ暗な闇だけが現れる。
「え…こ、これ…」

「さあ、お進みください。それと、これを首に付けてください。よろしくお願いします。」

そう言われると、一つの金属の輪っかの様なものを渡される。

「は、はぁ…」
私はその金属の輪っかを首につける。
喉あたりをひんやりとした鉄の温度を感じる。

「これは…」

「これは魔法少女の証。この本部に存在するためにはこの首輪が必要となります。」

「ま、魔法少女の証!?」

「そうだよ!奏音!あの坂間絵里(さかまえり)もつけてたんだから!」

「そ、そんなの困るよ!!私…まだ魔法少女になったつもりじゃないのに…!!!」

「え?魔法少女ではないのですか?」

「わ…私は、魔法少女にはなりたくなくて…」

「ですが、レンレン様が既に憑いているみたいですが…」

「魔法少女を辞めたいだってぇ?」

大きな怒号が暗闇の中から響いた。
低い重量のある怒り混じりの声は私のことを戦慄させる。

「あ!ジェーニン!」
レンレンが自身の尻尾を振り、にっこりと笑った。

今の登場でなんでそんなに余裕なの!?

「魔法少女如きが主導権を握るとは、なんと愚かだ!!!!」

暗闇の中から現れたのは、身長が3mほどのスーツを纏い、指にはいくつもの指輪をはめ、そして、何よりも、皺を寄せて血管の浮き出た男だった。

怖い…足が震え、呼吸困難になりそうになる。

でも…ここで言わなきゃ…何も進まない…

「もう一回言ってみろ!!!!お前は先ほど、何を言った!?」

「わ、私…魔法少女を辞めたいです!!!!!」

「なぜ!!!!!」

今度は、怒号…と言うよりも静寂にしかし、圧をかけて言う。
私は圧に負けて頭から押し潰されそうだけど、その圧に耐えながらも、
「私は!!!!命を救えないかもしれないからです!!!!!」

「命を救えない?それはつまり、自分が弱いと言いたいのか?」

「はい!!!!私は心が弱いです!!!だから、命を救うとか、ヒーローになるとか…私には…到底できません!!!!!!」

「ほう。だが、残念だったな。貴様が魔法少女を辞めることは不可能だ!!!!」

「え…ど、どうして…?」
不可能という言葉が信じられなかった。
いや、まだ方法があるかもしれない…
信じていればきっと!!!

「その首輪が、魔法少女の証であり、呪いだからだ。」

「の、呪い…!?」

「ああ。その首輪、外そうとしたら魔法で主を殺し、魔法少女として活動しないと、その首輪は主を殺す。そして、私の指に掛けられている指輪にちょっとした操作をするだけでも、魔法少女を殺せる。つまり、魔法少女に逃げ道はないということだ!!!!」

「え…うそ…」

「嘘じゃないよー?ジェーニンが許さない限り、魔法少女はやめられないんだよ〜」

「それって…」

ジェーニンとレンレンの声が一致する。
「「逃げられないということ」」

「そ…そんな…」
私は足の力が抜け、膝が地面に着く。

「どうして…なんで…」

「ごめんね…今、魔法少女連合や、秩序保安委員会は新たな高レベルのヒーローを求めている。だから、奏音みたいなレベルの高い人材を安安とは見逃せないんだよ…」

私のレベルを測定器にかけたところ、どうやらレベルは18らしい。
レベル18。
それは世界に9人いると言われているトップレベルのヒーローと同じくらいのレベルに位置すると言う。
世界のトップヒーローは20レベルのシャイニーと言うヒーロー。
TVで見ていた存在と肩を並べるように、まで私は来てしまったらしい…

だからって…だからって…

「ならば、こうしよう。君がこの世を平和にしてくれたなら魔法少女を辞めても良い。」

「それって…」

「現在の全世界の平均指定特殊駆除対象の出現率は年間、500万程度。それを1000程度まで引き下げられたら魔法少女を辞めても良いものとしようじゃないか。」

「ジェーニン…流石にそれは無理があると思うけど…」

「無理を超えてることができるのが魔法だ。魔法少女とはそう言うものだ。」

「ほ、本当ですか!?」

「ああ。本当だ。約束しよう。ついでに契約書でも書こうじゃないか。」

そういうと、ジェーニンさんは、手のひらからマジックの様に急に契約書の様なものを取り出した。

「ここにサインしてくれれば約束しよう。」

でも、よく考えてみるけど…トップヒーローでもできないことを私ができるだろうか?

「まあ、奏音なら、伸び代がまだあるかもね。」

「え?それって…」

レンレンが宙を舞いながら、「まあ、もしかしたら、できるかもって話。犯罪=確実に逮捕ってな感じだったら確実に行けるね。秩序を保つ、その柱になれば良いんだよ!!」

「私が秩序の柱…」

腰にぶら下げていた魔法のステッキを見る。

私なら…いけるのかな…

でも…私なんかが人の命を背負うなんて…やっぱり到底無理かも…

「さあ。サインをするんだ。」
ジェーニンにペンを握らされると、手が震えてきた。

「奏音…怖いの…?」

「だってやっぱり__」

私が言いかけた瞬間、
「ジェーニン様!!!!大変です!!!!」
と大きな声が暗躍の部屋の中に響いた。

「こんな時に…どうした!!!!」

「日本の起眞市にレベル18相当の怪獣が出現しました!!!!!」

「レベル18だと?」

「秩序保安委員会より直ちに坂間絵里を出撃させろとのことです!!!!」

日本のトップヒーローは坂間絵里。彼女の最高レベルは16。

「やむを得ん!!!!魔法少女、奏音!!!今すぐ起眞市に行き、指定特殊駆除対象を討伐してこい!!!!」

「え!?わ、私ですか!?」

「もはや、レベル18と互角に戦えるのはお前しかいない!!!早く行くんだ!!!!」

「で、でも私じゃ…」
私じゃ…できないかもしれない…
他のヒーローたちに任せた方が賢明なのかもしれない…

「お前しかいないんだ!!!!!!史上最高の坂間絵里の代わりとなり、坂間絵里を超える存在はお前しか居ない!!!!!」

「そうだよ!!奏音!!!早く行かないと!!!救える命も救えないよ!!!!!」

私じゃ何もできないかもしれない…
でも…
もしかしたら…何かできるのかもしれない…!!!

「わかった!!!協力を要請しておく!!!!起眞市在住の魔法少女を派遣しろ!!!!」

「りょ、了解です!!!!」

「お前と共同で行動する様に言っておく!!!!さあ!!行くんだ!!!!!」

「んんんんんんんんん!!!!!!!!あああああああああもう!!!!!わかったよ!!!!!!!行くしかないんでしょ!!!!!!」
私は髪をぐしゃぐしゃに掻きながら言った。

「そうこなくっちゃ!!」

すると、レンレンは私を光の柱の中に呑み込ませる。