誰かの鳴き声が響いた。

「ライリーちゃん!?早く、行かないと!!!!!」

すると、私を地面に貼り付けていた拘束具が一気に力を失った。

やった!!!今だ!!!!!!

私はその力の弱まった拘束具を振り払うと、立ち上がって、魔法のステッキを持った。

「た、助けにいかなくちゃ!!!!」

私がそう思い、壁に空いた穴から4階の高さを飛び降りようとした時、空に一本の光の線が引かれた。

その光は、私の方へと向かってくる。
そして、その光の正体が分かった。

それは…
「しゃ、シャイニー!!!」

それはシャイニーだった…
アメリカのトップヒーロー。そいつは、ライリーちゃんを壁に叩きつけて、そして吹っ飛ばし、なんの躊躇もなく、小さい女の子を殴った人。

私は最低な人だと思う。
でも、ライリーちゃんと戦ってたんじゃないの!?

そして、シャイニーがショッピングモールの天井を突き破って、着陸した。

「やあ…拘束具、解除できたのかい?」

「そ、そんなことよりも…シャイニー…ら、ライリーちゃんはどうしたんですか!?」

「ライリー?ああ。もしかしてあの怪人のことか?」

「怪人って決めつけないでください!!!!!!あの子は人間として暮らしたがってたんです!!!!!!それができない世の中を変えるために…戦っていたのに…」

「はいはい。そいつなら俺が殺したよ?いやーなかなか手強かったよ…」

こ、殺した…?
え…そんな……

「ほ、本当に殺しちゃったんですか…本当に……」

「殺したっていうか、駆除かな。害獣は駆除駆除~♪」
ニヤリと薄気味悪い笑顔を浮かべると、まるで私を嘲笑するように「はは!」と声を漏らした。

「な、なんで…!!!!!」

「ああ~ごめんね~君、もしかして、あの子の味方気取りしてた感じ~?あんな怪人の言う事なんて聞いちゃダメだよ~」

「で…でも!!!実際怪人の言うことなんて誰も聞いてくれないんでしょ!?」

「聞く必要がないんだよ。ただでさえ、今の世の中、悪いことする怪人とか、超能力者がいっぱい居るってのにそれに加えて怪人と仲良くしたいとか、ダルすぎないか?」

「そ…そんな!!!!全ての人を救ってこそ、ヒーローじゃないんですか!?」

私は訴えかけるが、シャイニーは「チッチ」と人差し指を左右に振りながら、私に近付く。

そして、私の耳元で呟いた。

「ヒーローなんて肩書きに過ぎないんだよォ…結局は世間が決めつけている悪を殺してこそ、真のヒーロー…世間様に従えば良いだけ…俺は世間の悪を殺せてラッキー…まさにWIN WINだ。」

「あ…あなたが本当にアメリカのトップヒーローなんて…信じられません!!!!」

「知るかよぉ!!アメリカ合衆国様が勝手に俺の事トップヒーローとか言ってるだけだ!!!」

「そ…そんな…!!!!」

怒りが沸き上げてきた…
人の心も無いような…正義を語っている子の男に!!!!!

欲望のままに正義を振りかざし、理不尽に悪と謳われている人を殺す…

なんでこんなのが正義で…自由を奪われた子が悪なのか…
私にはわからない…

「私…あなたが嫌いです!!!!!」

「へー…そうかい。そんなこと言ったら、お前もいつか怪人に分類されちゃったりするかもな!!!!なんせ、魔女だしな!!!」

「な…何を!!!!」

「じゃ、今日は子供を虐められたし、そろそろ帰るとするわ…じゃー…」

「待ってください…」

不意に出た言葉…
自分の感情に任せて振り上げる魔法のステッキ…
握りしめるこの両手には怒りと悲しみが詰まっている。

この人を生かしてはいけない気がする!!!!!!

こんな人の所為で、理不尽に正義を振りかざされる人が居てはいけない!!!!!!

「おっと………まさか戦おうってのか…?」

「私ならあなたに勝てます…私の魔法はホーミング付きで…確実にこの距離なら当てられる…」

確かに…もしかしたらここで撃ってしまったら爆発に巻き込まれて私もタダでは済まないかもしれない…

でも…それでも良い!!!!!!

コイツを!!!!!!

小さな女の子を救えるのなら…!!!!!

「でもさ…俺思うんだよな…お前…殺人した事あるの?」

「え…?」

「お前…人間を殺せる覚悟…あるの?」

そう言いながら、シャイニーはジェット噴射も使わずに近寄ってくる…
鉄のブーツの音を鳴らして、近付いて来る…

「ち、近寄らないでください!!!!!本当に撃ちますよ!!!!!」

「殺しってのは…覚悟を持った奴だけの特権だ…お前にその覚悟があるのかな?」

カツンカツンと、鉄のブーツの音が響く…

「ッ!!!!!!ち、近寄らないで!!!!!!」

そして、手を伸ばせば届く距離で、シャイニーは止まった。

シャイニーはその手を伸ばすと、私の顎を掴み、そして、私の顔を無理やり、自身の方へ向けた。

強制的に顔の角度を操作される不自由な不快感。

「触んないで!!!!!気持ち悪い!!!!!」
私はそう言いつつ手を振り払う。

「はは!!お前には覚悟が足りないな!!!残念だ!!!」

シャイニーはそう言い残すと、背中のジェットパックを蒸して、助走を付けて、ショッピングモールの壁の穴へと飛び込んで行った…

「気持ち悪い…!!!!」

私は顎を手で拭った。


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ユミー宅…………

「そ…そんな…ライリーが…」

「クソッ!!!!!」
俺はちゃぶ台に拳をぶつけた。

あの元気で常に笑顔を保ち、そしてRIの癒し役だったライリー。
そんなライリーが死んだ…

「やっぱり…俺が一緒に行くべきだった…」

ライリーの亡骸をベットに倒し、ベリアルがその手を握りながら呟く。

負けないと思っていた…
なぜなら、シャイニーの公表されているレベルは20

そしてライリーのレベルは22。

勝てると思っていたが、ステータスを偽っていると言う可能性を入れてなかったのは大きな誤算だった…

「すまない…ライリーの性格と、シャイニーがレベルを偽っていた可能性も考慮すべきだった…」

俺がその言葉を呟くように言った瞬間、部屋の中に鳴き声が響き始めた。

「う…ぐぁぁ」

俺は何も言えないし、言う権利すら無い…

一斉ショッピングモール占拠作戦を考案したのは俺だ…
やはり固まって戦いに挑むべきだった…

もう…負けてしまったかもしれない…





「……俺行ってくる…」
そっとベリアルがライリーの亡骸を抱き抱えながら立ち上がった。

「ど、どこへ…?」

カントウが問うと、その答えはすぐに帰ってきた。
「シャイニーの所へ………」

ベリアルはその言葉を残して、俺の部屋のドアノブを捻った。

「ユミー…追わなくて良いの…?」

「………」

「このままじゃ、ベリアルが!!!!」

「ああ…そうだな……これ以上…仲間を失うのは懲り懲りだ…!!!!」


「よ…よかった…」
俺は一度、頬を叩いて、「よし!!!」と言った後、ベリアルを追うように、扉を開けた…


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「ライリー…」
俺の腕の中には、冷たくなったライリーが《《居た》》

大丈夫…心臓は止まっているが…まだ生きている…
俺が取り込めば…良いだけ…

俺は、ライリーを抱き寄せると、俺自身の肉体を液状にさせて、ライリーのホフを段々と包む…

そして俺は、ライリーを取り込んだ…
俺が強くなって来られたのは…母星の仲間と地球の仲間のおかげだ…

こうやって仲間を取り込んで…段々と強くなる…

別にその人の能力が反映されるる訳では無いけど…
俺は一層強くなれる…

「大丈夫…これからは二人で一緒だから…」

俺が呟くと
『これからずっと、いっしょ!』というライリーの声が頭の中に響いた気がした…

「ずっとだから…ずっと一緒だから…絶対に離れないから…安心して…俺たちは…」


二人で一人だから…

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病院の中…
私は霧矢くんのベットで眠っていた…

「あれ…?なんで……」

「あ…おはよう。泣き止んだみたいだな。」

「え?」
目を擦ると、涙の跡が目元に残っていた。
泣き疲れたのか、私はどうやら寝てしまっていたようだ。

「これでようやく話ができるな…」

記憶は無いが、私はどうやらライリーちゃんのことについて泣き喚いていたらしい…

「悪を救いたいって…俺もそれは良いと思うよ……」

「え?」

悪を救うなんて言ったのだろうか…

でも…実際に守れなかった…
本当の正義がなんなのかわからなくなっていた…
自分が今までしてきたことは果たして正義なのかも…疑うようになってしまった…

「だってその…RIって人たちは悪い人じゃないんだろ?」

「た…多分………でも…もしかしたらその人たちは!!!人殺しをしてるかもしれないし…!!!!」

「でも…悪とか…勝手に決めつけられてるだけで…本当はいい奴かもしれないんだろ?それに…奏音はさ、守りたかったんだろ?ライリーの事…」

「…………」

「守りたいって思うんだったら…それを守るのが一番だと思うよ。」

「そうなのかな…やっぱり…」

「そう。だから俺は、守りたいものを守る…」

そういうと、霧矢くんはベットの毛布を自分の上から退かした…
霧矢くんの金属で作られた右足が姿を露わにした。

そして、不安定な足取りでその場に立つ。

「き、霧矢くん!?だ、大丈夫なの!?」

「大丈夫…ってか…これくらいで大丈夫じゃないと、守りたいものを守れないよ…」

「守りたいもの…?」

霧矢くんはコクンと頷く。

「ああ…俺にとって命よりも大事なものだ。」
そう言いながら、私の事を抱きしめた。
どう言う事なのか…一瞬理解できなかった…

「奏音が魔法少女になって…元気がなくなってることくらい…俺は知ってるよ…不安なんでしょ?まだ、魔法少女になって守りたいものが守れなくて…それで、責められたらどうしようとかって。」

「え…?」

「無理に全てを守ろうとは思わなくてもいいんじゃないかな…」

「どう言うこと…」

「奏音は…全世界の人を守ろう!って思いながら魔法少女やってるでしょ?大切な物だけ守ってれば…俺は良いと思うよ…俺はただの人間だから…何もできないけど…奏音だけ守っていれば…俺は満足だしね。」

そういうと、霧矢くんは、私の事を見つめる。
すると…少し霧矢くんは頬を照した。
赤く染まった頬は、夕日によるものなのか…それとも、霧矢くんの顔が赤く染まっているのか…
どっちなのかは分からない…
そして、継ぎ接ぎの言葉を霧矢くんは言った。

「お、俺はさ…その…どうやら奏音のことが…好きみたいで…さ…俺は…奏音を守りたいな…だから…今…言いたいこと、不安なこと…全部言ってくれ…力になるからさ。」

好き、という霧矢くんから放たれた言葉。
「私も…霧矢くんの事…好き……だから…私の全てを話すね…す…少し泣いちゃうかもしれないけれど………」

好き同士の私たち。
本気で愛し合えるんだったら…
私は恥ずかしくても…霧矢くんになら…全てを言えそう……

抱き合ってたら胸がざわめき始めた…
これが…恋って奴なのは知ってるけど…

やっぱりどうも落ち着かない…
でも、今は…

「どうしたの?そんなに笑って…」
そう言う霧矢くんも笑ってるじゃん…

「いや…私…今幸せだなって……」

ごめん。
この時間だけは悪とか…正義とか…忘れてても良いかな…?
ライリーちゃん…

許してくれるかな…?

まあ…いっか…

私は霧矢くんの顔を見上げると、その唇に向かって、私の唇を重ねた…
柔らかい感触が体の中に響く。

その日は寝るときでさえ、とろけてしまいそうだった、甘い1日だった。