「ん?そのベルト…まさか!!!!」
俺はベルトの横についていた爆弾のボタンのような細長いスイッチを掴み取ると、赤色で塗装されたスイッチを押し、ベルトの前につけられている装置に、爆弾のようなスイッチを押し、そして、キーワードの言葉を放った。
「変身!!!!!」
ベルトの機械部分から光が放たれ、赤い光とともに俺の体を包むアーマーを形作っていく…
そして、3秒後には、俺は軽く、そして頑丈な装甲を見にまとい、赤色を基調としたフォームのヒーローへと変身する。
「俺の名前はマグプル9…秩序保安委員会の広報担当…正義を甘く見るのは…やめておいた方がいいぜ?行くぞ!!!!」
俺は、怪人に向かって一気に走り出す。
「マグプル9!?フランスのトップヒーローだと!?ば、馬鹿な!!!くそが!!!戦うしかねぇのかよ!!!!!」
怪人の振り上げたカマよりも早く、そして素早く打ち出した拳は、カマキリ怪人の振り上げた腕、右腕にヒット!!5ポイント!!!
「ぐわっ!!!!」
よろけたカマキリ怪人は、腕を押さえながら、俺より少しだけ距離を取る。
「俺の戦闘スタイルは、ヒットポイント形式だ。殴ったら5ポイント、蹴ったら10ポイント。ポイントが100まで溜まったら死だ。」
「んなことわかってるつうの!!!!」
「そうだったか。」
カマキリ怪人は、頭の側面を狙ってカマを平行向きに裂くが、そんな鈍い攻撃が当たるわけがなく、俺の頭の横の空気だけを切り裂く。
そして、カマを真上から振り下ろす。
んなもんが当たるわけなど無い。
ことごとく避けられていくカマキリ怪人の攻撃は見ていてとても飽きる。
本来の目的は怪人を倒すことではあるのだが、これでは怪人を倒すだけでは、恐ろしさや凶悪さが伝わらない…
広報の宣伝素材としても微妙だ…
さて…どうしたものか…
「オラァァァァ!!!!!」
そうだ!
俺は一度、カマキリ怪人の攻撃を喰らってみる…
そして、派手に後ろ方向へと吹っ飛んだ。
明らかに演技と分かっていても、遠くから見ればわからなくもない…
上にはヘリコプターが一機、飛んでいるだけ。
「くそ!!!俺が…負ける訳には…行かない…!!!」
やっぱりまだ劇団をやっていた頃の感覚は残っているようだ…
衰えてない様子で何より…
「へ?あ、あははははは!!!!どうだぁ!!!この野郎!!!!恐れ入ったかぁ!!!!」
こいつは馬鹿なもんだな…これが演技だと知らずに…
「だが…パリのため…そして、俺が愛するフランスの為!!!!俺が負ける訳にはいかないんだ!!!!!」
「んだ?」
俺は一度、横にスライドするようにして、ベルトに取り付けられていた赤いスイッチを外し、そして、高速で4回スイッチを押す。
バキュウウウン!!!!!という激しい音が響いた後、俺はベルトの機械にもう一度差し込むと、腕を広げながら「ごおおおお!!!!」と声を出す。
そして、両腕に青い火を纏うエフェクトが追加。
ちなみに演出だけで特にこのエフェクトに何かの意味があるわけでもない。
「それじゃあ、行くぜ?」
「ふん!!!来てみろよ!!!!」
カマキリ怪人に向かって再び走り始める。
今度は全速力の半分くらいのスピードで。
そして、当のカマキリ怪人の反応はというと…
「は、早い!?」
ばーか、こんなんで早いって言ってたらシャイニーに0コンマ秒で殺されるぞ?
俺は地面から一気に離れ、拳を重力の勢いと共にぶつける。
カマキリ怪人は、力を相殺しようとしたのかわからんが、俺の拳に己のカマをぶつけた。
もちろん。そんなヘナチョコパンチカマキリの攻撃でヘタれるような拳は生憎持ち合わせては居ない。
そのため、カマキリ怪人は、少し後ろへと飛ぶ。
5ポイント!!!
そして、俺はカマキリ怪人の一瞬の隙を見逃さず、そこに4発の拳を入れる。
「ぐははははぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
カマキリ怪人は、拳によって距離を無理矢理取らされると、体制をとりなおそうと、片膝で立ち上がろうとする。
「な…なかなかやるじゃねぇか…!!!それでこそ戦いは…」
バゴォォォン!!!!
油断しているカマキリ怪人のガラ空きの顔面。
俺はそこに1発目の蹴りを入れ、怯んだ所に拳のアッパーを喰らわせ、空中へと放り投げる。
そして、落ちてきたところを、垂直に殴り、浮遊状態を続かせながらパリの道路の上を30mほど空中で移動させる。
「が、がは!!!!」
「残るヒットポイントは50…そんじゃ、そろそろ必殺技…使わせてもらうぜ?」
腰に掛けてあるスイッチの中から、青色のスイッチを出す。
俺は青色のスイッチを4回連続で押すと、スイッチから、「フィニッシュキッキングモード!!!」と声が流れた。
「そ、それは!!!」
怪人も何かに気づいたようで、「ま、待て!!!わ、悪かった!!!俺は確かに罪を犯した!!!これから自首するから!!!!どうにか今回はそれだけで許してくれないか…?」
申し訳なさそうに両手を合わせて、平謝りする怪人。
うーん…
「だめだ。」
「は!?」
「もともと、お前…死刑囚なんだろ?そいつが怪人になって人を襲うってんなら、死刑までの時間を縮めたっていいだろ?と言うことで…」
俺は赤いスイッチを取り出し、そして、青いスイッチを代わりに入れる。
「く、くそ!!!こうなったら戦うしかねぇ!!!!!」
馬鹿な奴だぜ…
俺は青い蝋燭のような揺らぎを見せる火を足に纏うと、その馬で、素早く足踏みをする。
ちょっとした準備体操だ。
「あの世で犯してしまった罪について、深く考えておくんだな!!!!」
俺は、空中へと10mほど飛び出すと、足に力を入れ、そしてカマキリ怪人に向かって足を伸ばす。
「じゃあな!!!」
背中からジェットブーストが一気に展開し、カマキリ怪人に向かって弾丸の如くスピードで飛び蹴りが炸裂。
弾丸のように火を包んだ足から放たれるキックは怪人を貫き、50ポイント!!!!
すぐさま「くそが…」と言う言葉を残して、怪人は膝から崩れ落ち、そして倒れる。
ヒットポイントが100溜まった怪人は自身から爆発を吹き上げ、体を粉々に砕け散らす。
大きく燃え上がる火は、俺の背中を照らし、俺の勝利に大きな祝杯をあげた。
まあ、これは序の口って訳だ。
俺はバイクに乗ると、フルスロットで、パリの街を駆け抜け、ヘリコプターが離れたタイミングで変身を解除する。
「ふう…戦った後も、一杯行くか…」