「奏音!!奏音!!!!」

「レンレン!!!ちょっと姿隠して!!!!」

「大丈夫だよ〜どうせ誰も見えてないんだから〜」

「本当にもぉー!!!!」

私の頭の周りを飛び回るレンレン。
少し前まではおとなしかったのに、最近になって何故か暴れ始めた。

ちょっとじっとしてくれないかな…

「レンレン!!!!ほら!!!」

私は言いながら学校指定のバックのチャックを開けて、レンレンに見せつけながら開く。

「入って!!!!!」

「ええ〜…やだよぉ…せっかく自由になったってのにぃ…」

「でも…レンレンって意外と有名なんでしょ!?」

「え?まぁ…最上級の魔法のステッキの精霊だから…確かに有名っちゃ有名だけど…別にこの学校だったらVしか僕のこと認知できないって!!!」

「なんでわかるのよ!!!」

「理由は特にないね!!!!」

はぁ、と私は息を吐き切ると1-Cの教室の扉に手を掛ける。
「それじゃあ、これから黙っててね!!!!」

「え〜!!!!!」

「文句言わない!!!!!」
私は曹怒鳴りつけると、教室の扉を開いた。
教室の扉の向こうには、霧矢くんの居ない席。

やっぱり寂しいな…
そう思ってしまうが、その感情は一旦飲み込んで、朝の準備をする。

視界の中に時々レンレンが入ってウザったい。

「よ!奏音!」

「お、おはよ〜奏音ちゃ〜ん」

すると先に来ていた隆一くんとアズりんが私に気づいて私の席へと来た。

「最近登校するの遅いな?なんかあったのか?」

そ…それは霧矢くんが居る病院から来ている…からなんて言えない!!!!

「え…えっとねぇ…最近少し眠くて…お寝坊しちゃうんだ!!!」

「本当のこと言わないの?ほんとは毎朝霧矢くんとラブラブで〜って」
すると頭の周りを飛び回っていたレンレンが横槍を刺してきた

ラブラブじゃないし!!!!!!!!
ま…まだ別に…ラブラブじゃないし…

「奏音?なんか凄い顔赤くなってるけど…大丈夫か?」

「え!?あ、いや!!!大丈夫!!!!」
私は慌てて時計を見ると、もう少しで先生が来る時間だと言うことに気づき、
「あ!!ほら時間!!!見て見て!!!先生来ちゃうよ!!!!!!!」

「あ、ほんとだ。じゃあな!!」
そういうと隆一くんは自分の席に戻った。

しかし、アズりんだけが残っていた。

「あ、アズりん?帰らない…の?」

「奏音ちゃん…そのちょっと相談…があるんだけどさ…?」
少し弱気なアズりん。
久しぶりにこんなアズりんを目にしたな…
可愛い…

「え?あ…相談?ど、どんなの!?」

「そのさ…わ、私魔法少女…になっちゃったんだけどさ…」

え?魔法少女…?

「え?まほ…うぐっ!!!!!」

私が叫びそうになったのをアズりんが無理矢理口を押さえて言わないようにする。
「しー!!!!身バレしたら死んじゃうかもだから…!!!!」

「あ…ごめんね…」

「魔法少女ってことは、じゃあ僕のこと見えるんだ…!?」
するとレンレンが空中を舞ってアズりんと私の間に割り入ってくる。

するとアズりんは何も言わないでコクリと頷く。

「え?それってもしかして…レンレンが言っていたラブラブ…って所聞こえてた?」

再びコクリとアズりんは静かに頷く。

「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
顔を両手で隠してその場に蹲る。

「別に違うから!!!!!まだだから!!!!!!!!」

「え?奏音ちゃん…まだってことはこれからあるの?」

「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
蹲って床を叩く。

死んだ…絶対に死んだ…

「だ…大丈夫だよ奏音ちゃん!!!!わ、私も付き合ってるから!!!!!!」

つ、付き合っている????

「え?それって…誰と?」

アズりんは隆一くんの方をチラリと見た。

「え?」

隆一くんの方を指さす。

コクリと頷くアズりん

声を出さないで口を両手で押さえる私。

少しニマニマしてしまった。

今更になって顔の赤くなるアズりん。

ああ…アズりんはもう既に人の手に渡ってしまったわけか…

そう考えると、とても嬉しいようで、合法的に可愛いと言える手段が無くなって悲しい気持ちもある。

「そ、それでさ…その…先輩魔法少女として…少し教えてもらいたい…ていうか…」

アズりんがモジモジと体を捻らせつつ言葉を続ける。

「その…色々教えてもらいたいことがあるんだけど…良いかな?奏音ちゃん…」

私はすると、にっこりと笑顔で、
「いいよ!!!ドンと任せなさい!!!!」
と胸を叩きながら言った。

まあ、あんまり教えてることもないような気がするんだけど…

まあいっか!!!

「ありがとう!!それじゃあ、また後でね!!!」

するとアズりんはその言葉を残して自分の席へと戻った。

てか…隆一くんとアズりん付き合ってたんだ…

私もいつか、霧矢くんと…

プシュウと頭が音を立てて爆発しそうになる。

私は自分で考えたことが思いの外恥ずかしく、顔を机に伏せた。
「奏音どうしたの?」
と聞いてくるレンレンを無視して。