オレはメルナと話をしながら街路を歩き冒険者ギルドに向かっている。……って云うかメルナは女だ。このオレが女と話をしている。
 二十ニ年……生きて来て母親以外こんなに話したことがなかった。
 それに彼女がオレのことを嫌っている様子はないんだよな。これって脈ありってことなのか? いや……分からないか。
 できるだけメルナに嫌われないようにしないと……。

 そう思いオレはメルナをみた。

 「どうしたのです……私の顔に何かついているの?」
 「あっ、いや……何もついていない。ただよく喋るなと思ってな」

 ハッ! まずい……オレは何を言ってるんだ。

 「ごめんなさい。そうね……少し話し過ぎましたわ。ですが、こうやって誰かと話をするのって……久しぶりでしたの」
 「そうなのか。別に話すなって言った訳じゃないんだ。どちらかと云えば喋っていてくれた方がいい。オレは余り話すのが得意な訳じゃないからな」
 「そうなのですね……分かりましたわ」

 そう言いメルナは満面の笑顔で微笑む。

 やっぱり可愛い……いや女神のように綺麗だ。
 さっき街路でメルナをガラの悪い男たちから助けたあとぐらいからか……好きになったかもしれない。
 でも告白なんて無理だ。それに逢ったばかりで何も分かっていないしな。それだけじゃない……メルナに嫌われたくない。
 そばに居られるだけでいいんだけど、どうなんだ? 冒険者ギルドを紹介したあとも一緒に行動できるのか?

 そう自問自答しているとオレの目の前にメルナの顔があった。

 「ヒャック!?」

 オレは驚き、しゃっくりのような奇妙な裏声を発生してしまう。

 「本当に、どうしたのです? 先程から何か考えごとをしているようですが」
 「色々考えてたのは確かだ。冒険者ギルドを紹介したらメルナと、さよならなのかと思ってな」
 「なぜですの? 冒険者ギルドを強く勧めてくれたのはグランよね?」

 ん? メルナは何が言いたいんだ。

 そう思いオレは首を傾げる。

 「そうだが……仕事は一人で、やるんだよな」
 「それは、嫌ですわ。それに冒険者ギルドに一人で行くのも怖いですし……ですのでグラン、一緒に毎回ついて来て下さいね」
 「あ、ああ……そういう事か。そうだな……慣れるまで付き合ってやる」

 そう言いオレは、ニコッと笑った。……笑えてるかは不安だが。

 「よかったですわ……これで、いつでもグランに逢えますわね」

 そう言われオレは、もしかして両思いなのかと頭をよぎる。

 メルナもオレのことを好きなのか? いや、ただ利用したいだけなのかもしれない。
 だが……それでも、メルナと一緒にいれるならアリかもな。

 「グラン……そういえば、どこに住んでいるのです?」
 「この町の西側にある住宅街にある貸家だ」
 「まあ……そうなのですね。そういえば先程、旅をしているって言ってましたものね」

 そう言われオレは頷いた。

 「ずっとこの町に居る訳じゃないからな」
 「……ですが、すぐではないのですよね?」
 「ああ、この町には一ヶ月前に来たばかりだからな。それに、やりたいこともある」

 そうオレが言うとメルナは優しく微笑んだ。……可愛い。
 メルナと話をしながらオレは、その後も変な妄想を膨らませる。そして冒険者ギルドに向かい街路を歩いていた。