ラクリウスは返す言葉を失い黙っている。
 二人の話にオレは、どう割って入ればいいんだと思っていた。

 「ラクリウス様、態度に出ていますわよ」
 「……そもそも証拠があるのか?」

 そういえばメルナは、どうやって知ったんだ?

 「ラクリウス様の屋敷に初めて来た日、挙動不審でしたので気になり侍女に調べさせたのです」

 なるほど……それだけ態度に出てたんだろうな。

 「なぜそんなことをする必要がある?」
 「好きだったからですわ」
 「……」

 その言葉にオレは、ショックを受けた。

 好きだったという言葉は過去形かもしれない。だけど、その言葉を聞きたくなかった。つらい……悔しい。
 メルナがラクリウスを好きだったと云うだけでも胸を締め付けられる。

 「意味が理解できん。好きならば、トコトン相手を信じきるものではないのか?」
 「……ラクリウス様、ロマンス小説の読み過ぎでは? いえ、まさか……そのような乙女的発言をラクリウス様から聞くとは思いもよりませんでしたわ」
 「俺を馬鹿にしているのか? あー……もーいい加減にしろ!! メルナセリア、お前がなんと言おうと屋敷に連れて行く!」

 そう言いラクリウスは立ち上がりメルナの手を掴もうとしている。
 それをみたオレは咄嗟に体が動きメルナを掴もうとするラクリウスの手を取り思いっきり捻った。

 「ツウ……グッ!?」

 苦痛の表情を浮かべたと同時にラクリウスはオレを蹴ろうとする。
 即座にオレは反応しラクリウスの足を掴んだ。
 その拍子にラクリウスは、ひっくり返り頭を床に強打する。

 「……弱い」

 気絶しているラクリウスの顔を覗き込みオレは、ハァーっと溜息をついた。

 頭を打って気絶しているだけだ。これで死んだなんてことになったら後々面倒だからな。

 「グラン、ありがとうございます」
 「いや……問題ない。とりあえず……ベッドに運ぶ、か」

 言葉が上手く出てこない。言いたいことは、そんなことじゃないはずだ。やっぱり……駄目だな、オレ。

 「私も手伝いますわ」
 「あ、いや……オレ一人で大丈夫だ」

 差し出すメルナの手を払い除けオレはラクリウスを抱きかかえる。

 「……!?」

 思ったよりも重い(汗)!

 そう思うもオレはラクリウスを寝室へと運んだ。

 ★♡★♡★

 なんでしょう。急にグランの態度が変わったようにみえます。もしかして私が貴族と分かったため。
 いえ……あり得るとすれば、ラクリウスと私の関係。それを知り、グランは……。ハァー……私のことを嫌いになりましたわよね。

 そう考えてしまい涙が流れ出てきた。

 もう……グランと一緒にいられない。それにグランが戻って来て『嫌いだ』なんて言われたら……つらすぎて……生きていけなくなるわ。

 ここにいたら余計つらくなると思い私は部屋を出ようと扉へと向かい歩き出した。

 ――ガチャッ!!――

 扉を開けると目の前にグランが居て私は、ビックリして尻餅をついてしまう。

 「メルナ……どうしたんだ目が赤いぞ。もしかして泣いていたのか?」
 「……」

 そう問われ私は返す言葉がみつからず黙ってしまった。