「それはそうと……グランディオ。冒険者って楽しいのか?」

 ラクリウス……ええ……っと……何を急に言いだすの?

 「いや……楽しいからやっている訳じゃない。仕事をしないと食べていけないからな」
 「ウーム……冒険者以外でも仕事はあるはず。定職に就いた方が何かと良いのではないのか?」
 「確かに、その方がいい。だが、それができないんだ」

 できない? そういえば旅をしているって言ってましたわ。何か訳ありなのでしょうか……。

 「誰かに追われているのか?」
 「…………あーいや違う。オレには、やるべきことがある……だから冒険者として旅を続けているんだ」
 「まるで物語に登場する勇者、英雄のようだな」

 珍しいこと言うのね。何時もは滅多に文学的なことを口に出さないのに……。

 「……………………そ、そんなんじゃない。それよりも、まだ聞いてないぞ。メルナとは、どういう関係か?」

 ああ……グラン。なぜ忘れていてくれなかったの。いよいよ知られてしまうのね。

 私の素性が知られてしまい、もうグランと一緒には行動できなくなると考え悲しくなり俯いた。
 胸の鼓動が速くなる。もうここから逃げ出したい。だけどグランの傍を離れたくないと思うのがまさっている。
 覚悟を決めるしかない……そう思うも、つらくて両耳を手で塞いだ。

 「そうだった。だがお前とメルナセリア嬢との関係も、ちゃんと聞いていない」
 「オレとメルナとは…………」
 「グランとは逢ったばかりです。悪い人たちから助けて頂きました。ですので私にとっては恩人であり大切な友人なのです」

 友人……恩人。恋人とは流石に言えません。ですが嫌っていない……それを伝えられれば良いのです。

 「なるほど……では俺からも礼を言わなければな。婚約者のメルナセリア嬢を助けて頂きありがとう。それだけでなく話し相手まで……」
 「……………………」

 あー……グランに知られてしまいました。

 知られてしまい私はグランの顔を真面にみれなくなる。

 ★♡★♡★

 そうなんじゃないかと……なんとなく思っていた。でも、いざ言われると……つらい。
 でも……まてよ。メルナが、このラクリウスと婚約していて……なんで一人暮らしをしようとしていたんだ?

 「……待ってください。確かに昨日までは、そうだったかもしれません。ですがラクリウス様、私との婚約を破棄したのですよね?」
 「……!?」

 婚約破棄!? それが本当なら、まだオレにもチャンスがある。いや、それよりも……そもそも、なんでメルナは婚約破棄されたんだ?

 「確かに昨日、婚約破棄と皆の前で言ってしまった。だが、それは正式に受理されたものじゃない」
 「いえ、あの場に居たみんなが証人。ですので受理されたも同然ですわ!」
 「グッ……だが、それを間違いだったと撤回すればいいだけだ。いや、そもそも前から……なぜ俺を怒らせるようなことをしてきた?」

 メルナがラクリウスを怒らせるようなことをしてきた?
 どういう事だ。それが本当なら、わざと怒らせて婚約破棄をさせたってことか。でも、なんでそんなことをする必要がある。

 そう思いオレはメルナへ視線を向けた。と同時に顔が青ざめ後退りする。
 そうメルナは、かなり怒っていた。実際はみえないがメルナの全身から、メラメラと炎が噴き出しているように感じたのだ。

 ……怒らせないようにしよう。

 そう思い心に刻み暫く二人の会話を聞いていることにした。