うわあぁぁ~……ここがグランの借りている家ですのね。
 こじんまりとしていてシックな造りですが一人で住むには丁度いいかもしれません。
 それにしても男性にしては綺麗に片付いてますわね。グランは綺麗ずきなのかしら?

 そう思いながら私は部屋を見渡していた。

 あれから私はグランとラクリウスと、ここにくる。
 グランの住まいにくるなり部屋で二人は無言のまま睨み合いテーブルを挟み座った。

 現在、私は二人に挟まれ気まずいのです。

 「フゥー……このまま睨み合ってても仕方ない。さて、説明してもらおうじゃないか!」

 眉間にシワを寄せラクリウスはグランを見据える。

 ああ……いよいよだわ。グランに素性を知られてしまいます。

 私の胸の鼓動が速くなる。ここから逃げだしたい。
 色々なことが頭をよぎり泣きたくなってきた。

 「ああ、そうだな。だが、その前に礼儀ってものがある。まだ互いに名乗っていない」
 「……確かにそうだ」

 二人は自己紹介を始める。
 私は聞いていて、もう駄目だと頭を抱えた。

 ★♡★♡★

 名前を聞きオレは驚き目の前の男をみる。

 「ラクリウス・カゼム……もしかして、カゼム公爵家?」
 「ああ、そうだ。それで、お前は?」
 「そうだったな。オレの名は、グランディオ・リアガット……ただの冒険者だ」

 ラクリウスは鼻で笑った。

 やっぱりオレは、コイツが嫌いだ。
 そもそもオレは……貴族なんか嫌いなんだよ。

 「フンッ、ただの冒険者か。その冒険者が、なぜメルナセリア嬢と一緒に行動している?」
 「あーラクリウス様。それなのですが……」
 「メルナセリア嬢は黙っていてくれ……俺は、この男に聞いている」

 そう言われメルナは俯き悲しい表情をしている。

 「なぜメルナに意見を述べさせない?」
 「女が男同士の話に割って入ってくるなどあり得ん」
 「なるほど……それが貴族の考えか」

 オレは怒りがこみ上げて来ていた。だが必死で堪えている。
 ここで怒りのままにラクリウスを殴ったらメルナに迷惑をかけかねない。いや、そもそもメルナに嫌われたくないだけだ。

 「貴族だから……いや、それが一般的な考えじゃないのか」

 なんでコイツは喧嘩腰なんだろう?

 「一般的か。じゃあ、オレの考えは普通じゃないってことだな」
 「ああ、そういう事だ。まあ……平民などに常識が分かる訳なかったな」

 いい加減にしろっ! なんでそこまで言われなきゃいけないんだ。

 必死でオレは堪えている。

 「それが常識ならオレは分かりたくもない。誰でも意見は持っている。それが正しいかは別だがな」
 「ほう、お前は面白いヤツのようだ。ここまで俺に意見を言ったヤツはいない。いや……特に平民は媚びてくる者ばかりだったからな」

 なんだ? 急に態度が変わったぞ。意味が分からない……。

 オレは何がなんだか分からなくなり困惑した。
 ふとメルナの方をみる。メルナは呆れた表情をしていた。
 もしかして、これっていつものことなのかと思い再びラクリウスへ視線を向ける。

 「まさか、オレを試したのか?」
 「いや、それはない。ただ自分の意見を曲げない男は嫌いじゃないだけだ」
 「オレは男に好かれたくない」

 ムッとしオレはそう言い放ちラクリウスをみた。

 「フッ、それは俺も同じだ。気を遣わずに話せる相手が欲しいと思っていた。お前が平民なのは気になるとこだ。まあ、そこは我慢すればいい」
 「……」

 いや、オレは迷惑だ。そもそも、なんで……お前に気に入られなければならないっ!

 そう思いオレは頭を抱える。
 その後も意味不明なことをラクリウスが話していて、オレとメルナは呆れながら聞いていた。