あのあと私とグランはフェルミゴの町に戻ってきた。その後、仕事を終えギルドに報告する。
 それが済むと私が泊まっている宿屋に向かった。

 そして現在、私とグランは話をしながら街路を歩いている。

 「グラン、今日は本当にごめんなさい」
 「なんで謝る?」
 「なぜって……私のせいで怪我をしたり迷惑をかけてしまいましたわ」

 そう言い私は俯いた。

 「そんなことか……気にしていない。それよりもメルナが怪我をしなくてよかった」
 「……ありがとうございます。本当にグランは優しいのですね」
 「そ……そうか。そう思ってもらえたならよかった」

 グランはそう言ったあと優しく微笑んだ。

 ああ……素敵ですわ。こんな最高のご褒美は他にありませんよね。

 そう思い胸の鼓動が高鳴る。

 「そろそろ宿屋に着いてしまいますわ」
 「そうだな。そうだった……話してくれるって言ってたが今は無理か?」
 「どうしましょう……誰にも聞かれない場所がいいのですけれど」

 そうは言いましたけれど、なんて説明すれば……。

 「メルナセリア! ここに居たのか」

 その声を聞き私は、まさかと思い振り返った。そこにはラクリウスがいる。

 「なぜ……こんな所に貴方がいるのです? それに平民のような格好までして……」
 「決まってるだろ……お前を連れ戻すためだ」
 「それは変ですわ……あ、えっと……」

 私は【婚約破棄】と言いかけやめた。その後グランの方へ視線を向ける。

 どうしましょう……なぜこんな時にラクリウスが現れるの? それにグランがラクリウスを睨んでいるわ。あー最悪です。

 「メルナ、誰なんだ……こいつは?」
 「呼び捨て……お前こそ何者だ?」

 そう言いお互い睨み合っている。

 ちょっと待って……これって凄くまずい状況なんじゃ。

 私はどうしたらいいか分からず困惑してしまった。

 ★♡★♡★

 なんなんだ……この男は? 気に入らない。上から目線……いけ好かない態度で、まるで貴族のようだ。
 そもそもメルナと、どんな関係なんだ? 連れ戻すって言っていたが。
 まさか……婚約者ってことはないよな。でもそうだったとしたら……メルナは、この男から逃げて来たってことになる。

 そう思いオレは、メルナの方をみた。

 「……なんでお前に名乗らなきゃいけない。それにメルナは、お前のことを嫌がっているようにみえるぞ」

 そう言いながらオレは再び男の方へ視線を向ける。

 「礼儀がなっていないようだな」
 「それは、お前だって同じだろ」

 オレは苛立ってきた。

 多分……コイツとは絶対に気が合わない。恐らく真面に人の話を聞かないタイプだな。

 「あーえっと……こんな所で言い合いをしたら目立ちますし迷惑だと思うのですが」
 「メルナの言う通りだ」
 「それもそうだな。どこかで話をしようじゃないか」

 なんだ? コイツは……メンチをきってきたぞ。やっぱりヤバいヤツなんじゃないのか。

 「それがよさそうだな……オレの家にするか?」

 一瞬オレは、メルナの部屋と言いそうになる。だけど、それだとメルナが嫌がるんじゃないかと思った。

 「私は、それで構いませんわ」
 「そうだな……それがいいだろう」

 そう言いこの男はオレを睨んでいる。

 「じゃあ行くか……コッチだ」

 オレはそう言い歩きだした。そのあとを二人は追いかけてくる。
 そしてその後オレは二人と話さず無言のまま自分の住まいに向かった。